3年ぐらい前のこと、当時父がお世話になっていた施設からの帰り道のことでした。
バス停で待っていると車椅子に乗った30代ぐらいの男性が来ました。
その地域では一家に車2台所有も珍しくないのか、車椅子どころかベビーカーでバスに乗る方もほとんど見かけたことがありませんでした。
雨が降り出したので、傘を差し出してその方が濡れないように待ちながら、少し世間話をしました。
バスが来て、運転士さんがその方をバスに載せるために降りて来ました。
私と話している時には穏やかだったその男性が、豹変しました。「そんなこともできないのか。早くしろ」と運転士さんを怒鳴っています。
私の方が先に乗ったので何が理由だったのかはわかりませんでした。もしかしたら、スロープの出し入れに少し手間取ったのかもしれませんが、都内のバスで時々経験する車椅子の乗車の対応時間とほとんど差がないくらいだったと私には感じました。
観光客を始め満員の状態のバス内に、なんともいえない沈黙が漂いました。
運転士さんは穏やかに発車する旨を伝えバスは動き始めましたが、衆目の中で罵倒された運転士さんのお気持ちにはいかばかりだったことでしょうか。
*運転士が全てをこなす*
先日の車椅子の乗客の乗車を「拒否」したというニュースに、この日のことを思い出しました。
私が子どもの頃にはまだ路線バスには車掌さんが乗っていて、運賃支払い、車内アナウンスや発車時の安全確認などは車掌さんがされていた記憶があります。
いつの頃からか、ワンマン運転になりました。
運賃ボックスが機械化されたり、アナウンスも録音されたもので自動化されたり、当時であれば人員削減の十分な理由だったことでしょう。
ところが時代の流れとともに、路線バスの乗客の状況も変化しました。
あるいは、運賃も現金だけでなく回数券やICカードなど複数の支払い方法で、清算の対応も運転士さんの業務になっていると、見ていて大変そうだなと思います。
時々利用する高速バスではさらにネット予約のスマホでの確認や、外国人旅行客のさまざまなチケットの確認など全て運転士さんがされています。
路線バスだけでなく、在来線のワンマン運転の列車でも、降車客の支払い対応を運転士さんがされています。
半世紀前のこうした公共交通機関の運転士さんは、運転席から離れることはありませんでした。
運転士さんが運転に専念できない現状は、事故やトラブルの要因になっているのではないかと思えるのです。
雨の中、運転士さんが濡れながら車椅子の方の乗車対応をされている姿を見て、どんな方にも対応するためには圧倒的に人員が足りないのではないかと思います。
安全のためには人手は大事。
どの業界でも同じだと思いながら、そのニュースを読み直しました。
もう少し続きます。
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