散歩をする 149 天竜川とダム

梅雨明けの晴天の日でしたから、内陸部は暑いことは想像できました。事前に見た岡谷あたりの天気予報でも33℃ぐらいありましたが、さすがに川のそばは涼しいだろうとたかをくくっていました。

結果、天竜峡のそばを木陰を選んで20分ほど歩いただけで着替えたくなるような汗の量でした。

 

旅半ばで熱中症で倒れることは避けたいと、駅前のお店に入って涼むことにしました。

天竜川を見たくて諏訪湖から豊橋まで行くことを話すと、お店の方が「ここからはトンネルの合間に少しだけ川が見えるぐらいだけど、風景がどんどんと変化しますよ」と教えてくれました。

 

私よりひと世代ぐらい上の方でしょうか。

この天竜川とともに暮らしてこられたお話を伺いたかったのですが、初対面でいきなり災害の記憶を呼び起こすことになってもと躊躇して、お店を出たのでした。

 

 

*人が近づくのを許さないような渓谷*

 

特急「伊那路」が入ってきました。夏休みなので混んでいるかと思い、川が見える側の指定席を予約しておいたのですが、乗客は十数人ぐらいでした。

 

出発すると、ほんとうに少しだけ天竜川が見えては、またトンネルです。

 

飯田線の「三遠南信地区(本長篠駅天竜峡駅間)」に「宇連川天竜川沿いの小町村・小集落を縫って走る急峻な山岳路線である」とあります。

南紀秋田から新潟沿岸部を列車で通った時にも、海岸沿いや大きな川、山の中と「こんな場所に鉄道を敷いた」ことにあらためて驚くことが多かったのですが、天竜峡からの風景はまた少し違いました。

 

時々、車窓から集落が見え、そしてまた人が全くいそうにないような山々が続く風景は似ています。

何が違うのだろうと思って見ているうちに、線路に沿った道路がほとんどないことではないかと思えました。

天竜川ぎりぎりの山肌に線路が敷かれています。

こちら側にも道路がなく、そして対岸にも道路がない場所がけっこうありました。

 

人を寄せ付けないような渓谷に、列車だけが走っているのでした。

 

*流れがゆっくりだった*

 

渓谷の川というのは大きな岩に水がぶつかって激流のイメージですが、天竜峡付近は水面が穏やかでした。

ただ、水量は多く流れは速いことが、表面にできる水紋から想像できました。

これだけの流れが、これからさらに狭い渓谷を流れ下るのですから、白い水しぶきをあげて流れる川をイメージしていました。

 

ところがトンネルの合間に見える天竜川は、まるで流れていないかのような水面を湛えています。

行けども行けども、ほとんどがまるで湖のような水面です。

 

天竜峡を出て3つほど駅をすぎた頃だったでしょうか、「泰阜(やすおか)ダム」という看板がありました。

小学生か中学生の頃に耳にしたダムです。

湖のような流れはダム湖の上流だったからだとわかりました。

 

佐久間ダム飯田線

 

門島のあたりで見えた天竜川は、川の流れがわかりましたが、しばらくするとまた湖のようです。

次の平岡ダム付近まではまだ4駅もあります。

そしてまた少し川の流れが見えた後、また湖のような風景になり、いよいよ佐久間ダムの上流に入り、そこからは大きく線路が静岡側へと曲がります。

 

Wikipediaの「飯田線」を読んで、なぜ線路が曲がっているかがわかりました。「佐久間ダム建設に伴う路線変更」の箇所に理由が書かれています。

佐久間ダムにより水没する部分は佐久間駅・大嵐(おおぞれ)駅間の約18kmであり、この区間には豊根口駅、天龍山窪駅、白神駅の3つがあったが、これらは線路共々廃止となった。

 

一方、「水窪線」は、佐久間からトンネルで水窪川水系に出た後、秋葉街道沿いに水窪町まで北上、そこからトンネルで再び天竜川水系に戻り大嵐に至るという現在のルートである。

 

大嵐駅からじきに長いトンネルに入りました。

長い長いトンネルを抜けると水窪駅ですが、冷房が効いた列車がトンネルを出た直後に、車窓の外側の結露でしばらくはモヤがかかったような風景になりました。

 

結露が落ち着いて再び車窓の風景が見えるようになりましたが、ここからは水窪川に沿って列車は走ります。

天竜川の支流なのですが、私がイメージしていた水量と水しぶきをあげて流れる渓谷の川です。

 

この流れで「支流」なのですから、本流の天竜川はダムができるまではどんな川だったのでしょうか。

 

佐久間駅を抜けるとすぐに、佐久間発電所が見えました。

佐久間ダムからの天竜川の流れは、残念ながらまたすぐにトンネルに入ってしまい見ることができませんでした。

 

ここからは天竜川の別の支流沿いを走り、分水嶺を超えて、今度は豊川の源流である宇連川沿いに豊橋まで、車窓の風景が変化していきました。

 

 

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