水のあれこれ 115 境川遊水池

暇さえあれば地図を眺めています。

けっこうあちこち歩いたので、地図を見ていても「あ、この辺りは知っている」と思ってしまうのですが、拡大したり縮小したりしていると、やはり見落としている場所がたくさんあり、また散歩の計画ノートに追加されていくのでした。

 

そのひとつが、境川遊水池公園でした。

 

川が緩やかに蛇行しながら相模湾へ流れているのですが、その途中に二つの貯水池のような水色の部分があります。

川の右岸側にはまっすぐ小田急江ノ島線が走っています。

これだけでも、江ノ島線河岸段丘の高台を通っていて、その下に川が流れている低地があることが想像できますが、この目で見て見たいと思いました。

 

江ノ島線湘南台駅から歩いて行けそうです。9月下旬に訪ねてみました。

 

境川

 

境川の上流はどこだろうと地図をたどると、なんと町田駅の横を流れているあの水路のような川でした。

境川(さかいがわ)は、東京都および神奈川を流れ相模湾に注ぐ河川。二級水系の本流である。川の名称はかつて武蔵国相模国の国境とされたことに 由来し、現在でも上流部(町田市最南部まで)は概ね東京都と神奈川県となっている。(Wikipedia)

 

 町田あたりでよく話題にされる、東京都か神奈川県かの地域に流れている川なのですね。

かつては激しく蛇行しており、たびたび洪水を引き起こしたために河川改修が行われ、相模原市緑区橋本付近よりも下流では拡幅とともに流路の直線化が行われた。ところが、左岸の町田市と右岸の相模原市では旧流路に合わせて指定された市境(都県境)の調整作業がほとんど進まず、お互いに「川向こうの飛び地」を多く抱えている。(Wikipedia)

洪水そのものだけでなく、水が流れる場所はいろいろな意味で袂を分かつ歴史があるようです。

 

境川遊水池を歩く*

 

湘南台駅を降りるとすぐ公園がありますが、この途中から境川に向かって急な下り坂になっています。

さらに歩くと、地図では行き止まりの道の先に鯖神社が書かれていますが、実際に歩くと行き止まりの道の先に神社の屋根だけが見えます。

氷川神社のような水の神様できっと河岸段丘の高い場所にあるという予想がはずれました。

ぐるりと迂回して、むしろ境川のそばの低地に立つ神社で、なぜこの場所に「鯖」なのだろうと思いましたが理由がわかりませんでした。

 

神社のそばには栗の無人販売があり、一袋20個ぐらい入っていてなんと300円です。3袋あったので買い占めてしまいたい衝動に駆られましたが、まだ散歩の序盤ですから一袋だけ購入しました。

 

ここから境川遊水池公園のまだ建設途中の今田遊水池のそばを歩きました。

境川の右岸側の広い遊水池にはビオトープが作られているようです。

しばらくすると今飯(いまい)橋があり、緩やかに境川が蛇行して、ここからは左岸に遊水池があり、やはりビオトープになっています。

 

境川ビオトープの間には、昔の境川の堤防と思われるものがずっと残っていて、今の堤防よりはだいぶ低い印象でした。

 

しばらく歩くと、境川遊水池情報センターがあり、休憩所とともに境川の歴史や現在の神奈川県の統合治水についての展示がありました。

それによれば、現在、神奈川県内にはほかにも「大庭遊水池(引地川)」「栗原遊水池(目久尻川)」「恩回(おんまわし)公園調整池(鶴見川)」があるようです。

 

昭和40年代頃までの、まだ住宅が密集していない時代に、境川の洪水で下流の都市部が浸水したときの写真が展示されていました。

境川はいくつかの支流を合わせながら、藤沢を通って、あの江ノ島へ渡る弁天橋のそばへと流れています。

 

*遊水池の変化*

 

遊水池といえば渡良瀬遊水地をすぐに思い出していた80年代から90年代は、まだどちらかというと洪水調整よりは公害問題の認識でした。

 

いつの間にか、あちこちに遊水池ができて、災害時以外は楽しめる場所にもなってきたこの30年ほどの変化です。

遊水池(ゆうすいち)とは、洪水時の河川の流水を一時的に氾濫させる土地のことである。(中略)下流の水害を軽減する目的で設置される。

 

1990年代から進んだ「遊水池設置に向けた動き」ではこんなことが書かれています。

1990年代以降、有識者により提唱された緑のダム構想をうけて、従来のコンクリートダムに代わるものとして森林整備と遊水池を組み合わせた治水計画が各地で模索された。しかし、用地買収に掛かる補償費用が莫大な額となること、住居移転を余儀なくされること、平坦な平野部に計画されることが多く面積の割に有効な水深を大きく得られない(無動力で流出入させる方がポンプが不要な分メンテナンスが低減されるが、河川水位よりも高く貯めることはできず、しかし深くすると排水できなくなる)ことなどのため、地元関係者からの反対などから事業の停滞もしくは白紙撤回を余儀無なくされることもある。

 

折り合いをつけるには試行錯誤や失敗も許容する必要があり、本当に時間がかかることですね。

 

境川遊水池公園も、平日にも関わらずいろいろな年代の人が散歩をしたりサイクリングをしたり、身近な施設として利用されているようでした。

そして、ここがどうして遊水池になったのかということも学べる施設でもありました。

 

 

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