茨城から福島、山形、そして新潟の川と海を眺める散歩の話はまだ続くのですが、ちょっと小休止。
少し前に、コアラの赤ちゃんがお母さんコアラの背中に乗っている動画がありました。
「かわい〜い!」という感想より先に、「コアラも振戦があるのだ」とちょっと驚いたのでした。
お母さんの背中にしがみつきながら、体が小刻みにブルブルしていました。
今日の呪文のようなタイトルは、そう、「振戦」です。
生まれたばかりのヒトの赤ちゃんも、時々、手足がブルブルとなります。
気づいたご家族が「大丈夫ですか?」と質問されるのですが、大丈夫ですと答えています。
というのも、30年以上前の学生時代に「新生児の振戦は痙攣とは違うので大丈夫」と習ったからです。
*新生児の振戦とは何か*
大丈夫ですよと答えながら、内心、「本当に大丈夫だろうか。痙攣を見落としていないだろうか」「何が違うのだろうか」と心配だったので、いつも新しい新生児関係の医学書が出るとその説明を探していましたが、書かれているのは痙攣についてがほとんどで、ますますこちらも不安になるのでした。
10年前に出版された「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル」(『周産期医学』編集委員会編、2009年、東京医学社)に、少し詳しい内容があるくらいです。
「233 手足がときどき震えます。痙攣ですか?」の回答ポイントは以下のように書かれています。
1)新生児期に見られる 手足の震えは、そのほとんどは痙攣ではない。
2)一般的に数ヶ月で消失し、その後の精神運動発達は正常である。
3) 痙攣との鑑別点は、自律神経系の変化がないこと、眼球の異常運動がないこと、周囲の刺激で誘発されること、運動が振戦であること、他動的に抑制できることなどである。
「実際の回答モデル」には以下のように書かれています。
新生児期に痙攣を起こすことは、お産が正常であった場合はほとんどありません。手足が震えたりすることはありますが、そのほとんどは痙攣ではありません。
痙攣は一般的に目が上下左右に寄ったりする目つきの異常や、目を異常に見開いたりすることが多く、周囲の音や泣いたりする刺激で引き起こされることはありません。目つきがいつもと変わらずミルクの飲みも良好で、手足が震えることだけであれば、これは神経が少し過敏になっている状態であり、特別な心配はありません。普通は数ヶ月で徐々に消えていきます。
う〜ん、「お産が正常であった」場合でも、出生後の低血糖による痙攣も気をつける必要がありますし、「そのほとんどは」と言われるとやはり痙攣の場合もあるのかと不安になります。
新生児の目つきというのは焦点が合わないので少し変に見えることもあるし、「目を見開いている」のもウンチを待っている時にはしばしばあるので、本当に正常と異常の境界線がわかりにくいものですね。
「振戦」について、30年前からあまり説明が変化していないなとあらためて思うこの頃です。
でも慌てて答えにしようとするよりは、これくらいわからないことに耐えながら表現されるのを待つ方が良いのかもしれませんね。
コアラの赤ちゃんのぶるぶるを見て「振戦だ」と感じたのは、ヒトの新生児を観察し続けていたからだと思うことにしましょう。
「新生児のあれこれ」まとめはこちら。
正常と異常に関する記事のまとめはこちら。