境界線のあれこれ 92 松江と米子

一畑電車宍道湖の北岸沿いに走ると終点は松江しんじ湖温泉駅で、JR松江駅とは離れています。

どうせならJRの近くまで線路を伸ばせば便利そうなのですが、何か歴史とか地形とかの理由があるのでしょうか。

駅名に温泉とついていますが、宍道湖湖畔の平坦な場所です。

 

ここから10分ほど歩くと松江城址があります。地図をながめて計画をたてていた時に、松江城の堀とその周囲にある運河のような水色の部分を歩いてみたいと思いました。

そして、宍道湖と中海をつなぐ大橋川、剣先川、朝酌川とその間を網の目のようにつなぐ複雑な水路と中洲のような場所を見て、JRで米子駅まで戻るという計画でした。

計画段階では気が大きくなりますから、地図を見ているだけでいくらでも歩けてしまいそうになります。

 

実際に松江城址まで歩いてみると、まっすぐJR松江駅まで向かう体力ぐらいしか残っていなさそうでしたし、日も暮れ始めていました。

 

松江城の周囲は、水路が残されている場所や、以前は水路だったのだろうなと思う場所が美しく街をつくっていました。帰宅途中の元気な小学生とすれ違いましたが、水路を見ているだけで一世紀とか二世紀ぐらいの歴史を想像できそうな街で育つのはうらやましいかぎりです。

 

松江城はそれほど高いつくりではなかったのですが、天守閣まで行くのはあきらめ、そのまま大橋川を渡って、松江駅に向かいました。

大橋川を渡ると宍道湖畔に沿って白潟公園があり、夕陽が出雲大社のある方向へ向かって落ちて行くのをしばらく眺めました。方向感覚がまたおかしくなりながら。

 

しだいに薄暗くなる街の中を、帰宅する人の姿や車も増えてきました。

私の生活では、人を押しのけるように電車に乗って帰宅する気ぜわしい時間です。こうして湖のそばの夕景を見ながらだと、心の持ちようが違いそうですね。

 

松江駅から米子行きのJRの列車に乗る頃にはあたりは真っ暗で、帰宅する人でいっぱいになりました。36分ほどで、今夜の宿がある米子に到着しました。

 

*松江と米子、島根と鳥取の境界線*

 

米子のホテルでテレビをつけたら、あれ?私は今どちらの県にいるのだろうと少し混乱しました。

というのも、島根県鳥取県の2県分の天気予報やニュースを伝えているだけでなく、どちらかというと松江の話題がたまたまかもしれないのですが多く放送されていました。

たしか米子鳥取県のはずともう一度、地図を見直しました。

米子駅の2kmほどのところが島根県との県境で、その県境はそのまま中海の中を境港市まで続き、境水道では対岸の半島部分は島根県という県境そのものの場所です。

実際に行こうと決めてから地図をじっくりと見ていたので、いまでは島根県鳥取県の県境をかなりはっきりと頭の中に思い描くことができるようになりました。

 

松江と米子はJRだと28.9kmで、東京駅と横浜駅間ぐらいの距離のようです。

松江市では「鳥取県米子市とともに中海・宍道湖経済圏の中核を担う」と書かれています。

「中海・宍道湖経済圏」という境界線もあるのですね。

 

むしろ、明治時代にここに県境が決まったのはどういう経緯なのか、そちらの方が気になりますね。

 

 

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