記録のあれこれ 63 「新コロナ感染拡大スピード抑制下 水泳プール開館/休館の差と課題」

3月1日には2月29日の記事の続きがありました。

 公共の室内プールをはじめ、水泳プールは日頃から感染症予防対策を徹底しています。

 新型コロナウイルス感染拡大スピードを抑制するため、安倍晋三首相は「換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触する恐れが高い場所などでの活動も、当面控えて」と要請しました

 こうした中、水泳プールの感染症予防対策は具体的にどう担保されているのか。そして2月29日現在の3月の全国の営業(予定)と課題について調べました。 

 

感染拡大スピードを抑制するために 

 安倍晋三首相は2月29日夕、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルス感染拡大スピードを抑制するために「換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触する恐れが高い場所などでの活動も、当面控えていただくとともに、事業者の方々には、感染防止のための十分な措置を求めたいと思います」と述べました。(出典:2/29 19:13配信 産経新聞

 

確実性が担保されているプールの感染症予防対策

 水泳プールは、国の衛生基準に基づき、室内換気、プール水の循環を確保し、そして水質検査を常時行うようにしています。さらに日頃から保健所の厳しいチェックと指導の下にあります。

 室内換気では、人の呼気に含まれる二酸化炭素、それを室内の含有量を0.1%以下に維持できるように常に換気がされています。いっぺんに多くの遊泳者が運動するため、相当量の換気を常に行っています。

 プールの循環では、1時間あたり5分の1のプール水が循環していて、消毒などの処理をするようにしています。

 保健所によるチェックとして、月1回採水を検水として保健所に持参、あるいは専門業者による検査にかけます。年1回の立ち入り検査では自主検査表や設備状態が検査され、不備がある場合には営業停止命令につながることもあります。また、遊泳者から保健所に直接苦情が出されれば、即座に立入検査が入るようになっています。

 ここで採水検査では、遊離残留塩素濃度をはじめ、大腸菌や一般細菌の有無が専門機関で調べられます。また自主検査では例えば始業から終業まで1時間ごとに水温、気温、湿度、残留塩素濃度、pHなどが検査され、検査票に細かく記載されます。もちろん、プール水循環や換気にかかる設備稼働状況もチェックされます。

 こういった作業は全てプール水を媒介とする各種感染症の予防として古くからおこなわれており、スポーツ施設の中でも特に進んだ衛生管理を行っているのが水泳プールだと言えます。

【参考】新型コロナウイルス渦中のプール営業状況

 

プール営業状況 

 全国にある公共プールと国内主要スイミングスクールの水泳プールの開館状況を調べました。公共プールでは、長水路(50m)プールに限定しました。大きいプールですから、人の密集が避けられるのと、利用者がある程度限定されるという特徴があります。また主要スイミングスクールの動きは、周囲の動きに多少の影響を与えます。

 なお、刻々と状況が変化します。最新の営業状況につきましては、ご自分でお調べいただくことをお勧めします。

 長水路公共プールの3月の営業状況(予定)は次の通りです。開館+限定開館38箇所、休館41箇所。冬季はスケートリンクになる施設や改修中の施設は対象にしていません。なお、この情報は29日夕方現在の各機関のホームページ記載内容で確認しています。特に休館のお知らせがなければ開館としました。旧館は主に3月中旬までです。限定開館は年齢により制限があります。教室中止は主に子供教室の中止を意味します。

(施設の一覧表は引用者により省略)

 

 国内主要スイミングスクールの対応については2月29日夕方現在の状況をホームページで確認しました。

 コナミスポーツクラブでは、「新型コロナウイルス感染防止を目的とした一部サービス休止について」として休止するサービスにプールサービスが含まれています。

 セントラルスポーツでは、「新型コロナウイルスに対する弊社キッズスクールの対応にういて」として、「新型コロナウイルスの対応につきましては、行政機関等の情報を収集した上で、その指導があった際に速やかに対策をとることとしております」と案内しています。

 スポーツクラブルネッサンスでは、「ジュニアスクール臨時休講のお知らせ」として、「全国の小中学校と高校の休校要請を受け、ジュニアが対象の全てのスクールを臨時休講とさせていただきます」と休講期間が案内されています。

 JSSではメインページにて2月26日の岩見沢校を筆頭にして、傘下の各校ごとに臨時休講のお知らせを出しています。

 イトマンスイミングスクールでは、全国一斉休講措置を取り、「小中学校と高等学校への休校要請に伴う対応につきまして」で周知しています。

 フィットネスクラブ・スポーツクラブ テイップネスでは、「小中学校臨時休校時のキッズスクール営業について」にて、「小・中学校の臨時休校の状況を踏まえ、店舗の所在する自治体の決定に準じてキッズスクールを臨時休校とする」としています。

 

 浮き彫りになる課題

 感染拡大スピードを抑えるため「換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触する恐れ」という観点では、長水路はそれなりに空間的にもコース的にお余裕があり該当しない可能性が高いのに対し、短水路(25mプール)では特に教室において該当するかもしれません。どこかで線引きできないからすべてのプールが休止となると、「体づくりが先か、感染しないように引きこもるのが先が」(スイミングプール関係者)という矛盾に近々突き当たります。

 多くのスイミングスクールでは、教室が非正規雇用の人たちによって支えられています。国内大手のスクールだけでも児童生徒がそれぞれ10万人規模。これだけの子供を指導するインストラクターは数万人にもおよぶと想像できます。スイミングスクールが休校になれば、その人たちの雇用はその期間なされなくなる可能性が高くなります。

 

さいごに 

 今は「感染拡大スピードを抑える」ために、国民全員が協力しなければならない期間。ただ、それをいつまで続けるのか、感染症予防対策をしっかりしている施設までをもいつまで含めるのか、「これをできるだけ早く明示してほしい」(スイミングスクール関係者)というのが関係者やスイミングスクールに通う子供たちの願いではないでしょうか。

 

 

30年ほど前からプールに通いはじめて、スタッフが時間ごとに水質チェックをしているのは見ていましたがあれが自主検査で、さらに月に一回の保健所による検査など、プールという環境の衛生保持のための流れをこの記事ではじめて知りました。

 

30年ほど前といえば、80年代に入ってエイズウイルスなどウイルス感染がぼちぼちと解明されはじめ、90年代に入ると胎児や新生児など周産期の感染症が次々とわかるようになった頃です。

医療だけでなく、こうしたプールなどの感染症対策も驚異的に変化する時代に私は泳ぎ続けていたのだと、この記事を読んで感慨深いものがありました。

 

まだまだ未知の感染症との闘いは繰り返されると思いますので、感染症に対しては慎重に対応することは本当に大事だと思いますし、まだ対応に対して何かを言える時期でもないかもしれません。

ただ、市中感染が確認された2月初めではなく、なぜ今なのかという疑問が残ってしまいました。

 

そして小中高校は休みなのに保育園や学童は休みにならなず、なのにプールは休館というあたり、ちょっとつじつまが合わないなあと、子どもたちで激混みの数少ない開館中のプールで河童は考えたのでした。

 

ただ、たくさんの人の生活に制限をかける判断というのはほんとうに大変そうで、まあ落ち着いてこの状況を過ごしながら、教訓になることは何か自分なりに考えていくしかなさそうですね。 

 

 

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