事実とは何か 67 「手を消毒してつくった」

中学生が手作りマスクを高齢者施設と児童養護施設へ贈ったというニュースを、ちょうどテレビをつけていたときに観ました。

とても違和感が残るニュースで、何に私はひっかかっているのだろうと考えていました。

 

こういう時には「当時の社会の雰囲気」や反応の記録とも言えるtwitterが参考になるかもしれないと、ちょっと見てみました。twitterも、社会の反応の一部でしかない部分もあるのですが。

やはり違和感を感じられた方もいたようですが、良いニュースだと受け止めている方々もいるようでした。

批判としては、「美談にしてはいけない」というあたりが主流のようでした。

 

*衛生用品は手作りや再利用の時代ではない*

 

もういちどNHK NEWS WEBで内容を確認してみましたが、テレビとは違う内容でした。

私が一番ひっかかったのは、「〇〇さんは手を消毒してからマスクを作りました」とテレビで伝えられていた部分です。

 

「手を消毒した」というのはどういう意味だろう、「手を洗った」という意味で使ったのかな。NHKはどういう意図があってその一文をニュースに入れたのだろう。

「つくった人の手はきれいでした」ということが、その製品が衛生的に「清潔である」という保証になると思っているのであれば、これまでの新型コロナウイルスに対しての感染対策の基本が報道機関として理解できていなかったことになるのではないか、そのあたりでもやもやしました。

 

使い捨てマスクがどうしても手に入らない場合、各家庭で手作りマスクを再利用する状況が出てくることは仕方がないかもしれません。

ところが、医療機関介護施設などでは清潔・不潔の境界線が大きく変化しました。

「血液や体液など感染性のあるもの」ととらえるようになりました。血液、尿、便、汗、唾液、その他ヒトの体から出るものはそのまま廃棄することが原則です。

ガーゼもオムツも、さまざまな医療用品も使い捨てが原則です。

そして、その製品は製造過程がチェックされ、ヒトの手が直接触れない状態で出荷され、現場に届きます。

 

「手をよく洗った、アルコールで『消毒』した」というレベルの手作業で作られたものは、信頼できないものになります。たとえ心を込めてつくってくださったとしても。

 

紙おむつがこれだけ浸透したのも、「手間がはぶける」という利便性や、反対に「手をかけたほうが愛情がある」「もったいない」といった感情のレベルではなく、「血液・体液は感染性物質になり得るので、それらがついた可能性があるものは再利用しない」ことが浸透したことも大きいのではないでしょうか。

そのあたりの基本を理解できていないと、こうした新たな感染症が出現するたびに、正確なニュースを伝えることが難しいのではないか。

 

ただこうした考え方が整理されて医療機関に広がったのもたかだか30年ほどですし、徹底されているかといえば、コストの問題や施設ごとにいろいろなグレーゾーンもあって混沌としているので、社会にこうした基本的なことが浸透するのはまだまだ時間がかかることでしょうね。

 

どこからが出どころで、なぜこの話がニュースになっていったのだろう、そして放送の前になぜ止められなかったのだろう。NHKの中で検証していただければと思った内容でした。

 

 

 

 

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