東京都が軽症や無症状の感染者をホテルなどに移動させることを決定したことは、勇断だと思いました。
「自宅で待機」といっても、自宅がどのような間取りか、同居者は何人でどのような人かによっても自宅に戻ることを躊躇する人もいることでしょう。
これまで一人で住むことを想定して建てられていた集合住宅で、家族が増えながら生活している若い世代の方々が身近で増えました。
「自宅」で本当に十分な感染症対策になるのか、そのあたりも慎重さが必要だと漠然と感じています。
私の世代はちょうど、子どもに個室を与える時代に大きく変化した時代を過ごしました。
具体的な統計はわからないので感覚的な話ですが、これも住環境の驚異的に変化する時代だったといえるかもしれません。
当時住んでいた官舎も次第に部屋数が増え、3DKに住んだ時には、両親は私と兄弟にそれぞれ一つずつ部屋を与えてくれて、残った一部屋が家族の居間であり、両親の寝室ともなりました。その後、一戸建てを建てた時に、ようやく念願の「父親の書斎」ができました。
その世代が成人になれば、当然、一人で住む居住空間が基本になっていきますから、こちらの記事に書いたように、80年代終わり頃から90年代にはワンルームマンションが広がりました。
トイレ・シャワー・キッチンを誰かと共有することがないわけですから、今考えればすごい変化ですね。
*個室は贅沢ではない*
その頃から病院でも、自己負担で個室を選択できる時代になりました。それまでは、大部屋が基本で、個室はVIPか重症や急変した患者さん、感染症とか終末期の患者さんが優先で、個人の希望で個室という選択はありませんでした。
そして今では公立の特別養護老人ホームでも個室が基本になってきているようです。
母の居室も個室で、トイレは2部屋で共用ですが各部屋に洗面台がついています。
毎年のインフルエンザの流行期の管理を考えると、施設内での感染拡大を防ぐためにも、これからは病院や介護施設でも個室が基本になる時代なのだろうと改めて思います。
*一般家庭の居住空間は感染症に対応できるか*
数千万から億単位のマンションに入居している人が増えたのも現実で、周囲にも次々とこうしたマンションが建てられています。
反面、私が住んでいる集合住宅の、以前なら一人暮らしの人だけが入居していた少しゆったりした1LDKの部屋だと、ここ数年で、そこから赤ちゃんの声が聞こえてくることが増えてきました。他の階でも同様のようです。
「住宅すごろく」の次の段階のために、節約しているのかもしれません。若い世代の方々には、経済的に厳しい時代ですからね。
でも、こんな「外出するな」「家にいろ」という状況では、隔離できる部屋もない場合、かえって危険だろうなと、お節介ですけれど心配をしています。
感染症時にも強い居住空間とは、何が必要でしょうか。
個室が基本、家族が複数なら部屋数やトイレ、洗面所も複数必要になるのではと思えてきました。
特に、感染が広がりやすい人口の多い場所と、家賃の高さをどうするかが課題でしょうか。
豊かな社会とは何か、平時よりもこうした非常時に問われるのかもしれませんね。
今回、宿泊施設を転用させることに尽力した方々に感謝ですね。
そういえば、2000年代に入って有料老人ホームができ始めましたが、バストイレ付きの単身者向けの社宅を転用した施設もありましたね。
「個室」のメリットは、集団が生活する場でけっこうありそうです。
「10年ひとむかし」まとめはこちら。