散歩をする 215 玉島地区と干拓地

2月下旬の岡山・広島の散歩の記録の続きです。

笠岡から山陽本線で倉敷に到着しました。何度来ても、子どもの頃の楽しい気分が蘇ってくる、祖父母の街です。

 

まだ日没まで時間があったので、母の記憶を歩くことにしました。

倉敷駅から数分のところ、倉敷美観地区へ向かう左手に少し小高い場所があります。それが鶴形山です。子どもの頃からそのそばを通って祖父母の家に行っていたはずなのに、地形が頭に入っていなかったのか、私にはあまり記憶にないのです。

「あの鶴形山の上は見晴らしも良くて、美しい場所だった」とのことで、今回は訪ねてみようと思いました。

急な坂道を登っていくと阿智神社があり、境内の案内にこの周辺が安土桃山時代からの干拓によることが書かれていました。

 

倉敷のホテルから朝、いつものように暗いうちから街を眺めていました。

窓からは北側の山が見えたのですが、倉敷というのはこんなに山に近いところだったのだとちょっと不思議な感覚に陥りました。

あ、もしかして「岡山」というのはほとんど海岸沿いの岡や山しかなかったからではないかと、まるで鶴形山から海に浮かぶたくさんの小島を見たような気がしましたが、どうなのでしょう。

 

*玉島地域の干拓

 

最終日3日目は山陽本線で倉敷から新倉敷駅へ向かい、そこから玉島地区を歩きます。

計画の段階で、あの山陽新幹線の車窓から見えた水田地帯の四方から水が流れ込む玉島中央町に目が釘付けになりました。

干拓の歴史がわかりそうなここを歩いてみたい、そう思ってさらに地図で見ていくと、倉敷玉島歴史民族海洋資料館を見つけました。大まかな計画ができました。

 

新倉敷駅からバスに乗り、玉商グランド前で降りると、それまでは干拓地だったのだろうと思われる平地でしたが、目の前に水路がありその向こうは小高い場所で「玉島柏島」という地名です。その水路を上流へと向かうと、水田地帯からの何本もの用水路が合流した場所がありました。

 

そこから玉島中央町を東へと向かって歩くと、地図では大きな溜池のような場所があります。その近くにある玉島市民交流センターの中に、歴史民族海洋資料館がありました。

2月下旬で施設の休館や催し物が中止になりはじめていた時期でしたが、資料館には入ることができました。

Wikipedia玉島地域の年表を見ると、最初に見た「柏島」は「1183年(寿永2年)-乙島・柏島源平合戦・水島の戦い」があった場所のようなので、やはり海だったのでしょうか。

 

1624年(寛永元年)-  岡山藩により、七島や道越の新田開発が始まる。

1642年(寛永19年)-  水谷氏が備中松山藩藩主になり玉島東南部を支配に収め、長尾・船穂・玉島などの新田開発を始める。

1670年(寛文10年)-  阿賀崎新田が完成、その後、港の整備と街の形成が進み北前船の寄港地になる。 

 

いくつもの水路が合流していた場所の西側が「阿賀崎」で、その合流した水路の先が玉島港だということがつながりました。

そして現在は、玉島乙島の先に水島工業地帯があります。

 

資料室から大きな溜池沿いに歩いてみました。高速道路やショッピングセンター、住宅街が広がっていましたが、おそらく半世紀前には広大な水田地帯だったのだろうと思われる平坦な道を歩いて、駅の方へと戻りました。

 

高梁川河口近くをみる*

 

地図を見ていたら、玉島から高梁川を渡って対岸へ行くバスがありました。倉敷芸術科学大学行きのバスに乗ると、高梁川を渡ることができました。上流・中流にもまして水量の多い河口付近です。

昔はこのあたりは干潟が広がっていて、母は祖父や叔父と潮干狩りにきたことがあるそうです。ただ、本当はとってはいけない場所だったらしいと反省していましたが。

今は河口ぎりぎりまで水が流れていて、ちょっと想像がつかないものでした。

 

倉敷芸術科学大学は、歩くのは大変そうな小高い場所の上にありましたが、ここが「連島(つらしま)」です。やはり子どもの頃から時々耳にしていた地名で、ようやくつながりました。

 

このあたりでバスを乗り換えて、今度は水島工業地帯の近くを通って、倉敷駅へと戻りました。

子どもの頃の公害の記憶とは違って空もきれいで、街中をバスで走っていてもたまに大きな煙突が遠くに見えるくらいでした。

 

とここで、突然あの方向感覚を失う感じになりました。

たしか、子どもの頃に児島の親戚の家から見た水島工業地帯は、海に対して左側にあるように見えました。ということは新倉敷の方向ではなく岡山よりにあるように見えたことになります。

ところが、実際には正反対の方向に工業地帯があることに混乱したのです。

 

その謎が、最後の目的地の牛窓へ行ったときにわかったのでした。

 

 

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