落ち着いた街 5 旅人を受け入れる

2週間ほど前でしたか、たまたまつけた NHKスペシャル新型コロナウイルス感染がヴェネツィアでどのように広がっていったかを放送していました。

今もまだ何が原因だったとかはわからないほど各地域の感染拡大の全体像もよくわかっていないのだと思いますが、その番組はカーニバルの人の集まりが関係していたかのような伏線がある印象でした。

 

観光客も地元の人もいないヴェネツィアの様子は、ニュースでも伝えられていました。イタリアにいったことがない私でも、水の都で有名な観光地として地名は知っていますし、昨年大きな水害があったことは記憶にありました。

その復興をかけてのカーニバルだったとのことで、地元の方々の落胆されている様子に、見ている側も気持ちが揺さぶられそうでした。

 

ナレーションのあるひと言で、はっと我に返りました。

ヴェネツィアのカーニバルは「1979年に始まった」というひと言でした。1770年代の間違いかと思ったら、ヴェネツィア・カーニバルを読むとたしかに1979年のようです。

長い空白期間を経て、1979年にヴェネツィア・カーニバルは再開された。イタリア政府がベネツィアの歴史と文化を復活させ、自らの成果の目玉として伝統的な祭典を利用しようと試みたためである。現在、ベネツィア・カーニバルには約300万人の人々が来訪している。最も重要なイベントのうちの一つとして、カーニバル最後の週末に行われる仮面コンテストがある。

 

こちらの記事の「1980年代、海外へ」に書いたように、1980年代初頭の日本では海外旅行は「一生に一度か二度ぐらいの贅沢」だった頃、旅行会社の店頭に並べられたはるか遠いヨーロッパの風景を眺めるくらいでした。

 

それまでのヴェネツィアを訪れていた旅人は、きっと静かに街を歩いて、静かに街に溶け込むことを求めていたのではないか。

復活したカーニバルに世界中から約300万人が訪れるのですから、街の雰囲気もカーニバル復活を境にだいぶ変わったのではないかと想像しています。

 

観光とはなんだろう。

海外旅行あるいは大きなイベントと一体になった人の大移動のような観光が始まったのもたかだか40年ほどで、今回の感染症の広がりを重ねながら、観光ってなんなのだろうと行きつ戻りつ考えています。

 

ああ、もう旅人という言葉は古いですかね。

 

 

「落ち着いた街」まとめはこちら

新型コロナウイルス関連の記事のまとめはこちら