COVID-19感染は、個別にどう対応したらよいのか、院内感染をどう予防したらよいか、搬送システムはどうなるのか、スタッフ自身あるいは家族が感染者・濃厚感染者になった場合の診療はどうなるのか、外出や移動の自粛で周産期医療の場合、里帰り分娩はどうなるのかなど、今まで考えたこともないことが一斉に現実問題になりました。
そして子どもさんがいるスタッフは、休校で子どもさんをどうするかという非常事態もありました。
同じ周産期施設でも、感染者を受け入れている施設の大変さは察するに余るのですが、今回はどの施設もまたそれぞれの困難を抱えていた状況でした。
こんな未曾有の事態にはどのように情報を得るかによって、見えてくる風景がまったく違うものになる可能性があります。
東日本大震災の時には原発事故後に出された周産期関係の見解として次々と基本的な考え方をまとめて公開してくださったことで、臨床の末端で働く看護職でも知識を整理することができました。
2020年6月10日付で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応(第四版)」が更新されました。
その前書きと要点を記録しておこうと思います。
昨年末に発生した新興感染症であるCOVID-19は、全世界に拡散し、3月11日WHOはパンデミックを宣言しました。我が国でも3月末から4月にかけて都市部を中心に感染者の急激な増加が見られましたが、幸いなことに欧米のような感染爆発に至らず、6月10日現在、終息に向かいつつあります。感染者増加に対し、日本国政府は4月7日に新型コロナウイルス緊急事態宣言を発出しましたが、5月26日には全面解除に至りました。本疾患の診察には全ての診療科が関わりますが、妊婦に対する感染制御と周産期管理は産婦人科医にとっての喫緊の課題です。新型コロナウイルス感染症に関しては3月5日、3月20日、4月7日付で日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会、日本産婦人科感染症学会による合同ガイドラインを策定しました。基本的には内容は関連学会である日本感染症学会、およびACOG、CDCガイドラインに準拠していますが、貴施設における分娩取り扱い状況や医師、医療スタッフを含む医療資源から弾力的に運用されるようにお願いいたします。
要点
- 6月10日現在、新規感染者は減少し終息に向かっていますが、局地的なクラスターの発生や感染ルートが不明の感染者が一定数見られるので、今後も厳重な注意が必要です。
- わが国では幸いなことに欧州各国のような感染爆発に至りませんでしたが、緊急事態宣言の解除後、行動の自由化に伴って再び増加する可能性や秋以降に第二波、第三波が到来する可能性がありますので、個人個人の感染予防と重症化予防が重要です。妊婦も高齢者や合併症のある患者さんと同様の扱いになります。
- 感染が疑われる場合には保健所の相談窓口に連絡の上、対応医療機関への受診を指示してください。
- 都道府県ごとに分娩施設やアクセスが異なりますので、地方自治体の担当部署にご確認をお願いします。
- 新型コロナウイルスに感染した方の産科的管理は通常に準じますが、対応医療機関における院内感染対策には十分留意してください。なお感染拡大に応じ、施設によって原則帝王切開とすることもやむを得ないと考えます。
- 特に医療スタッフの感染防御には十分留意してください。
- 感染者や疑い患者がおられなくても、施設内の清掃消毒、食事の個別提供(ビュッフェ形式は不可)、面会の制限など感染予防対策をお願いします。
- 妊婦さんご本人と医療スタッフの感染リスクを避けるため、原則的に帰省分娩と分娩付き添いは推奨しませんが、地域ごとの感染状況によって弾力的に対応してください。
- 担がん患者は新型コロナウイルス感染と重症化リスクが高いとする報告がありますので、必要に応じて治療計画の変更も考慮してください。
- 生殖補助医療につきましては、地域ごとの感染状況に配慮し、徐々に通常診療に復帰していただきたいと考えますが、引き続き標準予防策の徹底など院内感染防御にご配慮ください。
簡潔にまとめられた方針を知ることができる。これもまた、医療の90年代からの変化が実を結び始めたのかもしれませんね。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。
「災害時の分娩施設での対応を考える」のまとめも合わせてどうぞ。