水のあれこれ 148 魚野川

初めて上越新幹線に乗ったのは1982年に開業してから37年後、昨年5月に八郎潟から新潟を回って帰る時でした。

 

長岡を出るとすぐにトンネルに入り、時々トンネルが途切れて車窓から美しい水田地帯と川が見えて、そしてまた長い長いトンネルに入り、抜けたら群馬県に入る新幹線です。

その川が魚野川という名前であることも、初めて知りました。

 

Wikipediaの魚野川の「舟運」を読むと、信越本線上越線開業によって大正年間には無くなった舟運も、その後、通学には使われていたようです。

1950年(昭和25年)7月4日には、通学する学生ら20人以上を乗せた 渡し船が転覆、5人が死亡する事故もあった。

私が生まれる10年ほど前の時代で、こんな通学の風景や「水の事故 」があったのですね。

 

 

*魚野川の災害の歴史*

 

続いて「災害の歴史」に以下のように書かれています。

現在の魚沼市一帯が狭窄部になっていること、信濃川本流の洪水時には魚野川へ逆流する現象がみられたことなどから、かつての流域一帯は水害の常襲地帯であった。(魚沼市の歴史を参照されたい)。これらの対策として、1960年代に建設省国土交通省)直轄工事による河川改修が開始、1993年(平成5年)に完成を見ている。 

 「魚沼」と聞くと米どころの私のイメージは、案外と最近の時代にできたものだったということでしょうか。

 

 

魚沼市の歴史から災害を抜粋してみました。

1896年7月19日ー熱帯性低気圧が通過したことによる集中豪雨(横田切れと呼ばれる出水)。魚野川沿いで被害多数。 

「横田切れ」を知ったのは昨年6月に訪ねた信濃川大河津資料館でした。

この信濃川の空前の大水害から、「行き場がない水が容易に引かない越後平野」に分水工事が計画されて1922年に大河津分水路 が完成したのでした。

下流域の水の引かない越後平野に空前の大水害が起きれば、支流の魚野川沿いの被害があるわけで、昨年の知識につながりました。

 

1927年ー低気圧による集中豪雨。魚野川、破間川流域が冠水。

1934年7月10日ー集中豪雨により破間川が大洪水。

1935年9月25日ー魚野川増水。

1948年9月16日ーアイオン台風豪雨により魚野川が大洪水。

1953年9月18日ー熱帯性低気圧の通過に伴う集中豪雨。小出の柳生ばし付近が冠水。橋梁の一部が消失。

1958年ー入広瀬村に黒又川第一ダムが完成。

1960年7月13日ー集中豪雨(小出町で日雨量306mm)により魚野川一帯が冠水。小出 町の柳生橋が流出。 

1960年ー湯之谷村で建設が進められていた奥只見ダムが竣工。

1961年9月16日ー第二室戸台風による集中豪雨。守門村に災害救助法発令。全壊69戸、小半壊787戸。

1961年ー小出町を中心に魚野川の河川改修工事が開始。魚野川の狭窄部分解消を図る(多くの災害を経て1993年に完成)。

1964年7月3日ー集中豪雨により破間川流域が氾濫。堤防の決壊により家屋191戸が浸水。

1969年8月11日ー集中豪雨により上流の六日町、から魚野川に沿って小出町堀之内町に被害。三国川ダム建設、魚野川河川改修計画のきっかけに。

1978年6月28日ー梅雨前線の活発化により信濃川が川口町内で氾濫。氾濫水が上流へ逆流し、堀之内町小出町へ避難勧告が出される。

1981年8月23日ー台風15号の通過に伴う集中豪雨。小出町内では魚野川の堤防が破壊し町内一帯が冠水、1,000戸以上が浸水。災害救助法の適用を受ける。堀内町内でも魚野川の溢水した水で冠水する。

1988年ー入広瀬村で融雪期の出水による被害が発生。激甚災害の指定を受ける。

1992年ー入広瀬村で集中豪雨による被害が発生。激甚災害の指定を受ける。

2001年ー広神村の広神ダム本体工事が着手。完成は2009年度予定。

2004年7月13日ー平成16年7月新潟・福島豪雨が発生。守門村入広瀬村を中心に道路が決壊する被害が発生。

2004年10月23日ー新潟県中越地震発生。後の魚沼市管内については死者5名、全壊75世帯、道路被害745ヶ所。

 

 

水害だけでなく、地震や地滑り、雪崩や融雪期の出水と雪害もあり、稲穂が輝く時期に車窓から見えた美しい魚野川周辺の風景からは想像ができない歴史です。

そしてこうした災害のたびに、収穫を断念せざるをえない状況に、どれだけの方々が追い込まれていたことでしょうか。

 

二十数年前に関屋分水を訪ねて、その管理棟で信濃川とその支流に至るまで水量が監視されている制御装置を見学し、そして昨年、念願の関屋分水再訪を果たすことができましたが、それでもまだ私の視野は越後平野にしかありませんでした。

 

その上流の地域の川の歴史を知る、二十数年来の宿題がまだたくさん残っています。

 

 

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