水のあれこれ 150 立ヶ花狭窄部

信濃川の「長野県の水害」の年表を見ると、3ヶ所強調文字で書かれた水害があります。

1742年(寛保2年) 戌の満水、千曲川で史上最大の大洪水  立ヶ花水位(36尺   10.9m)。死者2,800名

1983年(昭和58年)梅雨前線により飯山市千曲川本流が破堤、死者9名、全壊家屋7戸、半壊家屋8戸、床上浸水3891戸、床下浸水2693こ。立ヶ花で2019年までの最高水位を記録。(11.13m)

2019年(令和元年)10月、令和元年東日本台風(台風19号)による。長野市穂保(左岸)で千曲川本流が約70mに渡って決壊。北陸新幹線長野新幹線車両センターなどに大きな被害。上田市諏訪形で上田電鉄別所の千曲川橋梁が崩落した。立ヶ花水位12.44m、既往最高水位を更新

 

「立ヶ花」とはどこだろうともう一度地図を見直すと、飯山線の立ヶ花(たてがはな)駅と信濃浅野駅の間に、千曲川にいくつもの支流が合流する箇所がありました。

川が合流する部分に関心があると書きながら、見落としていました。

 

検索すると、信濃毎日新聞ニュース特集に「千曲川の狭窄部 掘削へ」(2020年1月25日)という記事がありました。

 千曲川の川幅が急に狭くなる中野市立ヶ花と飯山市戸狩地区にある2カ所の「狭窄(きょうさく)部」について、国が河床を掘削し、洪水時に水を流れやすくする対策を行うことが24日、分かった。国と県、千曲川信濃川)流域の自治体が検討している5カ年の「緊急治水プロジェクト」に盛り込む。流下能力を上げる目的でこの2カ所を掘削するのは初めて。

 立ヶ花の狭窄部(立ヶ花橋付近ー古牧橋付近)は、昨年10月の台風19号で甚大な被害をもたらした長野県穂保の堤防決壊地点の5キロほど下流から始まる。千曲川の川幅は、穂保付近で約1050メートルあるが、立ヶ花橋付近では約260メートルに狭まる。専門家には、大量の水が立ヶ花でせき止められる形になり、上流の穂保での越水、決壊の要因になったーとの見方がある。

 台風19号で立ヶ花の水位観測所の水位は、1983(昭和58)年9月に記録した過去最高の11.13メートルを更新し、12.46メートルに達していた。

 ただ、河道掘削により、大雨時に下流の水量が増す可能性がある。このため、同時に下流での反乱防止対策として、洪水時に一時的に水をためる遊水池を長野、新潟県内に複数箇所を新設する。遊水池の候補地の一つに、中野市内の1カ所が挙がっている。

 飯山市の戸狩狭窄部(大関橋付近ー湯滝橋付近)でも川幅は大関はしの上流側では約150メートルしかない。川幅が狭い区間では狭窄部の上流で計画した水位を上回り、戸狩地区で決壊して大きな被害をもたらした。

 県は長年、狭窄部の流下能力を上げるよう国に要望してきたが、河川整備は下流から進めるのが通例。国は現在、信濃川新潟市街地で氾濫しないよう手前で迂回(うかい)させて日本海に流す「大河津(おおこうづ)分水路」(新潟県燕市長岡市)の河口を広げる改修を進めている。この改修は2032年度までかかる予定だ。

 だが、台風が長野県内で甚大な災害をもたらしたことから、国土交通省などは立ヶ花と戸狩での河床の掘削が必要と判断したとみられる。川幅を広げるには新たに用地の確保が必要となり、難しい面がある。一般的に河川にたまった土砂を取り除くのがしゅんせつで、今回の河道掘削で流下能力を高める。

 

 

大きな災害時には全体像を把握するのは難しいといつも痛感するのですが、 昨年の千曲川の氾濫の原因は堤防決壊だという理解だけでした。

この立ヶ花狭窄部がまさにネックだったということなのですね。

 

その4ヶ月ほど前に訪ねた信濃川大河津資料館を見学した際、横田切れでは上流の氾濫の半日後に下流の水位が上がったことが強調して展示されていました。

その展示で、上流の雨の降りかたが下流へとこのような時間差で影響することを実感したので、昨年、千曲川が氾濫した時には、新潟県内の信濃川の水位が刻々と報道されていくのを追っていました。

 

水害のニュースは毎年繰り返されているようでも、「寝ずの番」で日夜防災対策に取り組んでいる方々、データーを集めてより安全な対策のための研究をしている方々、あるいは危険な場所での防災工事を請け負っている方々など、地道な仕事によって水害の記憶がほとんどなく暮らして来れたという思いが、川を訪ねて歴史を知ることでますます深まっています。

 

 

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