10月30日の国土交通省のtweetで、東北地方整備局福島河川国道事務所による「令和元年東日本台風(令和元年10月12日出水) 阿武隈川上流水害写真集」が紹介されていました。
「はじめに」に以下のようなまとめが記されています。
阿武隈川上流の本格的な近代治水対策は、約100年前の大正8年からはじまり、近年では昭和61年8月洪水を契機とした「広瀬川激甚災害対策特別緊急時業」等による重点地区の堤防整備等、平成10年8月洪水を契機とした「平成の大改修」による阿武隈川上流の堤防整備や浜尾遊水池の整備等を順次進めて参りましたが、今般、これらの洪水を大きく上回る洪水が発生したことから、国、県、関係市町村連携のもと、令和2年1月に「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を取りまとめ、「浸水被害の軽減」、「逃げ遅れゼロ」、「社会経済被害の最小化」を目指し、支川を含む阿武隈川の抜本的な治水対策と流域一体となった総合的な防災・減災を進めています。
災害を減らすためにどのような対策が取られていたか、実際に災害が起きた場合、どのような活動が行われ、どのように河川の復旧作業が行われるのか、私のような素人に理解しやすい報告書でした。
2年前の倉敷での水害を機に、排水作業が実際にどのように行われているのか知ったのですが、この報告書では、各排水場所の稼働時間や排水量まで具体的に記録されています。
そして、「排水ポンプ車36台、照明車11台、衛星通信車3台、災害本部車2台、待機支援車1台」が活動していたことも記されています。
また、堤防決壊のニュースがあるといつも、どうやって堤防をなおすのだろうと気になっていましたが、「令和元年東日本台風に伴う出水による堤防決壊箇所の緊急復旧工事」では、写真と図でその過程が説明されていました。
「コラム 阿武隈川を知る」では、阿武隈川の特徴がまとめられています。
「阿武隈川の地形的特性は?」
狭窄部によって流れが妨げられ、狭窄部上流の盆地で水位が上昇しやすく洪水被害を受けやすい。
・下流部では、堤防の背後地に仙台空港など重要な公共施設や市街地が形成され、資産が集中していることから、一度氾濫すると甚大な被害が発生。
・狭窄部と盆地が交互に存在し、盆地には市街地が形成され資産が集中。狭窄部によって水の流れが妨げられるため、狭窄部上流の盆地では水位が上昇しやすいことが特徴。
「阿武隈川の降雨特性は?」
阿武隈川の年平均降水量は、奥羽山脈側で約1,500mm、阿武隈山脈側で約1,200mm。
阿武隈川の流域・流路は南北方向になっているため、台風の進路と一致しやすい傾向により、主要洪水はほとんどが台風に起因する。
昨年初めて東北新幹線に乗って阿武隈川流域を見たときに、阿武隈川や北上川は、同じ川を何度も越える ということが印象に残ったのは、「流路が南北方向になっているため、台風の進路と一致しやすい」ということでもあったのですね。
こうして一つの災害について全体的にまとめられた専門的な記録が公開され、正確に状況を知ることができる。
とてもいい時代ですね。
あのときに車窓から見えた阿武隈川の風景に惹かれて、昨年は何度か阿武隈川流域を歩き、あの水害にショックを受け、そしてその後も歩いてみたのでした。
阿武隈川に関連した記事をここにまとめておこうと思います。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。