記憶についてのあれこれ 163 顔を覚える

次に計画していた地域で熊出没が相次いだので、今年は熊についてのニュースが気になってしまいます。

 

「クマやウシの顔を識別するAIが登場、野生動物の保護や家畜の個体識別において有望」(GIGAZIME、11月26日)というニュースがありました。

近年では人々の顔を認識するAIの精度が向上しており、スマートフォンなどのロック解除や法執行機関による監視など至るところに用いられています。AIによる顔認識は人間だけの専売特許ではないようで、野生のクマやウシの顔を認識するAIが登場していると海外のメディアのCNNが報じています。

多くの人々はクマの顔を見分けることができず、複数のクマの中から特定のクマを識別できません。しかし、カナダ・ビクトリア大学の博士研究員としてクマの研究を行っているMelanie Clapham氏が、「私は個体の特徴を使って識別します。たとえば、あるクマには耳や鼻に傷があります」と述べるように、クマごとにさまざまな個体差があります。Clapham氏によると、多くの人々はクマの全体的な外見に目を向けて識別を試みるそうですが、クマは冬眠の前に太ったり冬眠後にげっそりとやせたり、1年の間に劇的に変化するため、全身に目を向けても識別しにくいとのこと。

 

動物園のクマの顔でさえ、誰が誰なのかなんてほんと、わからないですよね。

私は未だにハシビロコウパンダのそれぞれの個体に特徴があるのはなんとなくわかっても、「顔を覚える」というまでに至っていません。

まして、カワウはみんな同じに見えてしまいます。

 

でもなぜ、多くの人はクマの顔を識別できないのでしょうね。

 

*人の顔も覚えられなくなってきた*

 

20代の頃でしょうか、自分より数歳年下の歌手やアイドルといった人たちが次々に出てきて、顔が同じに見えてしまい覚えられなくなりました。

身近な人たちや仕事で出会う人の顔や名前はちゃんと覚えられましたから、テレビやメディアに出る人が急に増えた時代だからだろうぐらいに思っていました。

 

最近では、ほんの数日前に分娩介助した人の顔や分娩時の状況をすっかり忘れている時があって、そろそろ記憶が怪しくなったかとちょっと愕然としています。

分娩の記録ノートを読み返すと、30年前に介助した時の場面や名前まで思い出すのですけれど、直近の記憶が本当に怪しくなりました。

 

仕事だけでなく、同じ集合住宅に住む人と廊下やエレベーターで出会っても、すぐに顔を覚えられなくなりました。たぶん、10回ぐらい挨拶をしないと顔が覚えられないので、たぶん、外ですれ違っても無視してしまっているかもしれないと冷や汗をかいています。

ただ、この場合は本当に会釈してすれ違う程度の関係なので仕方がないかもしれませんね。

 

ただし、最近出会った人でも、何かエピソードがあれば記憶に残っています。

 

たぶん、だんだんとパターン化して記憶されていって、たとえば仕事上なら「分娩や産後の経緯」にいくつかパターン化されて自分の中に分類されてきているのかもしれない、と。

そのパターンにはない、「こんなこともあるのか」というようなエピソードがあると顔や名前も記憶に残っていますから。

 

そういえば、「5000人ぐらいの顔を記憶できる」といった話があったことを思い出したのですが、同じGIGAZINの「『人間は平均して5000人の顔を覚えることができる』という研究結果が報告される」(2018年10月12日)でした。

人間の歴史の大部分において、人々が形成する社会的集団は小規模なものであり、それぞれが広く分散して生きていました。人口が急激に増加して街や都市が形成され、多くの人々が出会うようになったのは人間の長い歴史から見えれば、非常に最近のことであるといえます。 

 

そうか、人の顔を覚えるという点でも驚異的に変化する時代なのかもしれませんね。

記憶力の老化ではなく、人類にかつてない数の他人を識別するために、効率よく記憶していくための進化ということにしておきましょうか。

 

 

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