散歩をする 287 愛知池へ

最初の計画では足助から豊田市駅にバスで戻り、名鉄豊田線で次の目的地へ向かう予定でした。

足助のバス停で路線図と時刻表を眺めたら、なんと、豊田市駅に戻らなくても名鉄線浄水駅を通過するバスがちょうどありました。

「浄水」その名前に惹かれて、途中下車しようかと思っていた場所です。

 

計画を変更して、このバスに乗りました。

広瀬を通り、矢作川右岸側へと渡り、しばらく矢作川沿いを走るのですが、山のような左岸側ともまた違い、畑がありました。

名鉄三河線(山線)の終点、猿投駅のあたりはもう市街地です。

そこからしばらく走ると、矢作川支流の籠川の周囲に水田地帯が広がっています。そこから少し上り坂になって、浄水場の前を通過し、浄水駅に到着しました。

 

浄水場というと川のそばにあるイメージですが、地図で見るとここにある浄水場河岸段丘の上にあるように見えました。それが理由で、見てみたいと思ったのでした。

愛知県の「西三河水道の浄水場」によれば、この豊田浄水場は「標高90メートルの伊香保台地」にあるそうです。水源はどこなのだろうと検索したら、愛知中部水道企業団の「水のネットワーク」に矢作川の岩倉取水口とありました。

最初の計画通りの小渡行きのバスに乗っていたら通過していた、百月ダムのあたりから導水しているようです。地図で見ると直線距離でも20km以上あります。

 

*ため池、そして愛知用水

 

浄水駅から名鉄線に乗り、目的の黒笹駅におりました。

 

この辺りには数々のため池と用水路があります。

とりわけ、目を引くのが愛知池です。

その北側の水路を地図で見ていたら「愛知用水」とあり、愛知県内の七つの用水のひとつです。

名前は知っていたけれどここを通っているのかと、初めてその場所が見えてきました。

 

愛知池には次の米野木台駅の方が近いのですが、黒笹駅近くにあるため池を見て、愛知用水のそばを歩いて愛知池を目指すという計画を立てました。

 

「駅近くにあるため池」、まずここで計画が甘すぎました。

地図では500mほどですが、ため池が造られているのですから当然小高い場所で上り坂です。

しかも車が結構通るのですが、歩いている人はまずいない道ですから申し訳程度の白線が引いてあるだけでした。いえ、こんなところを歩いている私が悪いのですけれど。

 

途中、愛知国際病院あたりから今度は下り坂になり、東名高速の下を通って海老池のそばに出ました。

ここも大型車がばんばんと走っているのですが、白線しかない歩道です。前から後ろからくる車を避け、立ち止まり、ヒヤヒヤしながら歩きました。運転手さんたちもまさか人が歩いているとは思わなかったことでしょう。

地図ではあと少しで愛知用水の水路で、そこからは遊歩道でのんびり歩けるからと自分を励まして歩いたのですが、愛知用水沿いの歩道は「立入禁止」でした。

ちょっとのぞくと、轟々と水が流れています。玉川上水が「人喰い川」と呼ばれていたことを思い出しました。

 

愛知用水沿いを歩けば愛知池まで700mほどだったのですが、迂回する道を探さなければなりません。

しばらく歩くと天白川があり、その遊歩道をゆっくりと歩くことができました。

東海道新幹線で名古屋に到着する直前に越える、あの天白川の上流とは思えない、可愛らしい小さな川です。

周囲に水田も残っていて、ほっとする風景をしばし歩きました。ところで、水田が残っている場所の地名が「油田」なのはなぜなのでしょうか。

 

小さな川でしたが、その河岸段丘は険しく、息切れしながら登ったところが「米野木台」でした。

 

*愛知池へ*

 

名鉄線米野木台駅を過ぎて、さらに600mほど歩くと次第に愛知池の堰堤が見えてきました。

公園になっていて、堰堤の上も歩けるようです。

 

階段を昇り、目の前に真っ青な水面が広がりました。

想像以上に広い池です。

東郷調整池(通称:愛知池)は、愛知用水の水路水を管理するために造成された人造湖で、愛知用水の幹線水路(本流:全長約112km)の中間点に位置する。本池は、独立行政法人水資源機構が管理する東郷ダム(とうごうダム)のダム湖である。味噌川ダム(木曽川)・牧尾ダム(王滝川)・阿木川ダム阿木川)から放流された木曽川の水を岐阜県八百津町愛知用水取水口で取水後、愛知用水幹線水路を流水し本池にて流入する。また別水系水として、矢作川岩倉取水口(愛知県豊田市)から矢作連絡導水路を流水し本池に工業用水が流入している。本池で貯水した水は、本池の愛知用水取水口を経由して愛知用水幹線水路の下流(東郷発電所経由ルートもある)に再送水する。

 

愛知用水の水は、農業用水として岐阜県、愛知県の27市町の1万5000haの農地、水道用水として愛知県の11市町の家庭約83万人、工業用水として岐阜県可児市名古屋市南部および名古屋市南部臨海工業地帯などの9市町村の約80社の工場で使用されている。

 

この前日から見ていきた明治用水の水源である矢作川から数キロしか離れていない場所に、木曽川から導水した愛知用水がある。

そしてその愛知用水は、ここからはるばると蟹の右手(知多半島)へと運ばれているのでした。

 

この日は時間に余裕があって、当初の計画では愛知用水下流部分をここからもう少し歩くつもりでしたが、ちょっと疲れたのでまだ日が高いうちに名古屋に出て帰路につきました。

帰りの新幹線の中で、すでに愛知用水と蟹の右手を歩く計画ができ始めていたのでした。

 

 

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