散歩をする 305 日野用水沿いに歩く

30年ぶりに日野駅に降りました。

駅の西側には日野台地の端の崖のように高い場所があるのは、記憶通りでした。改札を出て甲州街道沿いに少し歩くと、最初の交差点の反対側に小さな公園があり、さっそく水音が聞こえてきました。

30年前もこの辺りを歩いたのだと思うのですが、風景に全くと言って記憶がありません。

 

本当に日野を訪ねたのだろうかという記憶さえおぼつかなくなったのですが、そのまま団地の中を歩いていくと、右手に畑が広がり、小さな水路に水が勢いよく流れています。

石積みの水路が続き、畑から住宅地になり、また畑と公園が見えてきました。その公園の手前では、公園の北側から小さな水路が来て合流しています。

こんな風景を見ると、どうやって分水したり合流させたりしているのか、その地域の水の歴史が気になりますね。

 

*よそう森公園*

 

その公園は「よそう森公園」で、「『水の郷日野』用水路マップ」がありました。

今まで歩いた水路は、この公園の端で日野用水上堰から分水された水路で、さらにいくつかの分水を甲州街道沿いのさきほどの「池端公園」の辺りでまた合流しているようです。

 

「よそう森公園」に「碑文」がありました。

 本地区は、日野市の北西部、多摩川沿いの沖積地に位置する。

そのため、古くから東京の米どころとして、日野用水をはじめ、中小の農業用水網のある水田地帯として発展して来た。

 JR中央線日野駅の徒歩圏にあり、無秩序な乱開発の波が進行してくるとの懸念から、日野市の原風景である水路のある街並みや田畑が消えていくなか、農あるまちづくりを進めていこうと、組合施行による区画整理事業を行うこととした。

 平成6年十月三十一日東京都知事より組合設立の認可を受け、以来十年の歳月を経て、道路、水路、公園の築造を行い、本事業の完成となった。

 ここに事業の竣功に伴い、関係者ならびに地元住民各位のご協力であることを記すと共に新町地区の新たな発展と末永い繁栄を祈念し、この碑を建立する。

平成十六年十二月吉日 

 

住宅と畑が途切れた向こうに広がっていたよそう公園は、まるで絵画の中の田園風景のような場所でした。

 

三十年ほど前、私が初めて日野を訪れた頃に始まった運動が、落ち着いた街並みを残したのですね。

 

*日野用水上堰沿いを歩く*

 

公園を出ると、幅3mはあるでしょうか、水量の多い日野用水上堰の流れがありました。

日野台地の小高い場所のすぐそばを掘り進んだように見えます。

この流れに、「ああ、やはり日野市内を歩いたことがある」という記憶が蘇りました。どこへ向かったのかは忘れたのですが、確かにこの水路沿いを歩きました。

多摩川側へは少し低地になって、畑が広がっています。かつては水田だったのではないかと思うような場所でした。

 

地図には緑色の帯状に描かれていた東光寺第一緑地は崖線で、その森がぐっと近づくところで、八王子方面への切り通しの道がありました。

そこにまた説明がありました。

日野市指定史跡 東光寺大橋の碑

昭和三十六年十月一日指定

 

 日野市栄町と新町の一帯は、東光寺とも呼ばれ、日野宿と八王子を結ぶ、通称「東光寺道」が通っていた。

 右側にある「東光寺大橋の碑」は、東光寺道が日野用水上堰堀を渡る場所に架けられた石橋(現存せず)の架橋を記念して、弘化三年(1846)に建立されたものである。

 碑文には、天明六年(1786)に土橋から板橋に架け替え、文化五年(1808)には石橋にしたが、天保年間(1830〜44)に崩落したこと、このため村民が協力して弘化三年に伊豆石を用いて架橋したことが記され、端の変遷を知ることができるものとして、市史跡に指定された。

 また、この碑の左には、大正時代に建てられた「東光寺大坂の碑」がある。碑文には、八王子に向けて台地を登る坂道が険しかったため、崖を開削し、排水溝を設けたことなどが記されている。

 これらの碑は、往時の交通を支えた村民の姿を今日に伝えるものとして、貴重なものである。

日野市教育委員会

 

 

水路には轟々と水が流れていて、たくさん鯉がいるのですが、頑張らないと水流に負けて流されていました。

日野市内の多摩川右岸沿いの農地を潤すための用水路ですから、人喰い川の様相だったのかもしれませんね。

橋を架けるのも、維持するのも大変なことだったのでしょう。

 

その反対側の多摩川の河岸に日野用水下堰の取水口があるようで、日野用水上堰よりもう少し日野市内の北側の地域を流れているようです。

 

 

しばらく歩くと、崖状の小高い場所が途切れ、谷地川が流れています。

日野用水上堰の流れはどのようにこの川を交差しているのだろうと、期待しながら近づいて見ました。

 

 

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