発達する 35 唾液と「若者」

唾液というのは、医療の中では体液であり「血液や体液が付着したものは不潔、再利用しない」という感染症対策の基本です。

ですから、当初、洗って再利用することは不織布マスクだけでなく布マスクに対しても、仕事で一旦染み付いたこの原則を変えるのはとても抵抗がありました。

 

「体液は感染性物質ととらえる」ことは医療行為の中では当然ですが、医療と日常生活の中での清潔と不潔の境界線はまた異なります。

それが、今のような感染症を日常生活の中でどう理解するかの難しさの一つかもしれませんね。

 

唾液というと普通は消化管の分泌物を思いつきますが、ハグやキスのように親密性と性や生殖に関わる体液のひとつともいえます。

検査の精度はよくわからないのですが、熱いキスでドーピング陽性ということもありました。

 

今回の感染症で、「夜の街」とか「若い人の行動」と言った漠然とした表現が多いのは、この性につきものの唾液を介した行動を表現することにためらいが大きいのかなと感じています。

 

 

*「若者」の発達段階*

 

「若者」というと10代後半から30代前半ぐらいの青年期をさすのかもしれませんが、私の年代になると40代から50代ぐらいの人も「若い人」になります。

 

ただ、ニュースなどで耳にする若者のせいとか、若い人の行動というのは、分別(ふんべつ)とか無茶といった行動の意味ではなく、もう少し違う意味で発達段階を指しているのではないかと理解しています。

 

1980年代後半になって看護でも耳にするようになったエリクソンの発達段階ですが、「看護roo!」の「エリクソンの漸成的発達理論」によれば10代から40代までを以下の2つに分けているようです。(強調は引用者による)

(5)青年期(13歳から22歳頃)

 青年期は、多くの異なる場面や状況において、自分とは何者か、自分は何になりたいのかについて考える時期である。(アイデンティティ(自我同一性)の確立)。

その過程で、自分が何者かがわからず悩む(役割の拡散・混乱)。

 

(6)成人期(22歳から40歳頃) 

成人期は、職場や家庭など現実的な役割を担い、責任を負うようになる期間である。さらに同性や異性との関係を重要視する(親密性)。親密性を獲得していくためには、アイデンティティを獲得されていなければならず、相手に受け入れられないと後ろ向きな感情が生まれる(孤独感)。

 

おそらくこの2つの時期で最も大きい課題は、家庭を築くことだったり、社会の中で自分の居場所をつくるあたりかもしれません。

その一見現実的な話も、その年代を過ぎてしまえば、生殖や性的な衝動からくる「白馬に乗った王子様と出会う」という妄想の一種に感じるのは身も蓋もない話でしょうか。

まあ最近では自分は若いという主観年齢がだいぶ変化して、60代の花嫁衣装の話まである時代なので、エリクソンも驚くことでしょう。

 

会話を控えて相手と距離を取りながら座っている人がほとんどの電車内で、ピッタリとくっついて顔を寄せ合って話をしている「若い人」や数人でかたまって大きな声ではしゃいでいる「若い人」をみると、この発達段階の特徴に切り込んだ注意喚起はなかなか難しそうだと思います。

 

 

こういう感染症の拡大時にエリクソンの発達段階の理論がとても合理的に感じるとは思いもよらなかったのですが、発達段階を意識して生きている人はあまりいないでしょうし、人の行動は合理的にはいかないですからね。

 

COVID-19は、ヒトのさまざまな面をあぶりだす不思議なウイルスですね。

 

 

 

 

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