宇部線と小野田線に乗ってみたいと思ったのは、海岸線を走る路線であるとともに、子どもの頃からの記憶にある地名を実際に訪ねてみたいという理由でした。
JR宇部線は、新山口駅から宇部駅までUの字を描くように通っていて、その途中の居能駅から小野田駅までJR小野田線が支線を含めてYの字のようにあり、内陸部では宇部駅と小野田駅は山陽本線でつながっています。
ちょっと複雑なこの回廊のような鉄道網は、小野田セメントと宇部興産がヒントなのだろうと思いつつ、ずっとそれ以上の歴史を知ろうとしないまま来てしまいました。
2019年に武甲山資料館を訪ねたことがきっかけで、伊吹山や大垣の金生山など採掘場のある地域の歴史が気になり始めました。昨年訪ねた大船渡には駅の対岸に、太平洋セメントの工場と引き込み線が見えました。
セメントとか石灰とか、生活に欠かせないのに、本当に知らないことばかりです。
*小野田線と宇部線とセメントの歴史*
Wikipediaを読み比べてみると、JR宇部線は1914年(大正3年)に開業、翌年1915年(大正4年)に小野田線が開業しているようです。
セメントの歴史からすると、現在は太平洋セメントに会社名が変わったそうですが、小野田セメントの方が先に、1881年(明治14年)に設立されているようです。
太平洋セメント株式会社は、日本最大のセメントメーカーである。1875年(明治8年)に設立された官営深川セメント営業所の流れを組む。
それに対して、宇部興産は現在はUBE(ユービーイー)になっているようですが、江戸時代には山口藩石炭局、明治には炭鉱、1923年(大正12年)に宇部セメント製造会社が設立されたとありました。
*鉄道の今昔*
宇部線、小野田線のどちらの概要にも、かつては石灰石や石炭輸送で賑わっていたことが書かれています。
私が乗った日は平日の日中でも結構乗車していたのですが、産業や交通事情の変化で採算性の問題もあるようです。
宇部線については「宇部新川ー新山口駅間では、宇部市営バスを利用する方が早く到着できる場合がある」(Wikipedia「宇部線」「概要」)、あるいは「宇部線の方が運賃は安いが、バスの方が運行本数が多い」(同、「並行する交通」)とあります。
比較的早い時期に電化された路線の一つであるが、全線が単線で地盤が悪いこともあり運行速度が遅く、宇部新川ー新山口間では、宇部市営バスを利用する方が早く到着できる場合もある。
読み飛ばしてしまいそうな一文ですが、「地盤が悪いこともあり」が指しているのが開作による土地が多いということなのだろうと理解しました。
宇部線と小野田線を気仙沼線のようなBRTにする計画もあったようです。
2018年度に宇部市とJR西日本が中心となって、宇部線と共に小野田線をバス・ラピッド・トランジット(BRT)に転換する可能性について検討を始めた。しかし、宇部市が試算したところ、宇部線にBRTを導入した場合の概算整備事業費が約153億円となることが判明した。そのため採算性に厳しく早期の実現は困難であるとしてBRTは凍結され、JR西日本と沿線自治体(宇部市、山口市、山陽小野田市)の4者勉強会は休止となった。
それぞれの地域の地理や歴史そして生活があるので、難しいですね。
実際に、宇部線と小野田線の車窓の風景を見ることができて、こうした歴史を読み返すときに理解しやすくなりました。
*おまけ*
Wikipedia「小野田線」に、「選択乗車の特例」が書かれています。
居能駅ー小野田駅間は小野田線と宇部線・山陽本線との間に選択乗車の特例(旅客営業規則第157条)があり、一方を経由する乗車券を持っていれば他方の経路でも乗車できる。途中下車の禁止されていない乗車券であれば他方の経路上でも途中下車が可能である。
今回の乗車券は気ままに途中下車できるように、都内から小倉までの連続切符をみどりの窓口で購入していたのですが、宇部線から小野田線に乗り継ぐことを伝えた時に、窓口の方がしばらく何か調べていて、「もし途中下車する駅で何か言われたら、大丈夫であることを伝えてください」とおっしゃっていたことがこのことだったようです。
今読んでも、なんだかよくわからないのですが、一枚の乗車券にも複雑な規則の歴史の積み重ねがありますね。
「行間を読む」まとめはこちら。