記録のあれこれ 126 「りんご台風」

8月も半ばになると、気温が30度を超えても体が慣れてきたのがあまり暑さを感じなくなりますね。そして少し温かい食べ物や秋の果物が恋しくなります。

 

岩木川の堤防の内側にあるりんご園の惨状がテレビで伝えられるたびに何もできないことがいたたまれない思いですが、「大雨被害の弘前市りんご園 ボランティアの復旧作業が再開」(NHK NEWS WEB、2022年8月21日)というニュースを見ました。

災害があると各地から駆けつける災害ボランティアの姿も、ここ30~40年前のことを考えると隔世の感ですね。

 

遠くて参加は無理なので、食べて応援とりんごを買い始めました。いつも買う価格の2倍ほどですが、美味しいふじをいただきました。ふじりんごの里と書かれていた藤崎駅周辺の光景を思い出しました。

 

*「りんごと台風」より*

 

青森の水害の記録を検索していたら「りんご台風」とあり、そういえばいつだったか、壊滅的な被害でもうりんご栽培ができなくなるという絶望的な年があったことを思い出しました。

 

「りんご大学」(弘前中央青果株式会社)に「りんごと台風」という記事がありました。

りんごは風に弱い作物です。りんごの実と枝を結んでいるのは、細いツルの部分です。りんごに強い風があたると、りんご同士がぶつかったり枝にすれることで傷つきます。また、突風や長時間の風で、ツルと枝が離れて落果してしまいます。

りんご台風と言われる1991年(平成3年)の台風19号では最大瞬間風速53.9m/sの猛烈な風が吹いたために、収穫前の多くのりんごの落下や、りんごの倒木・枝折れという被害を受けました。収穫前のりんごの被害は勿論ですが、倒木や枝折れ等によって農園の再生がままならないため、収穫の回復に時間がかかり長期的にも大きな被害を受けました。

被害面積は2万2400ヘクタール、被害総額は約38万トン、被害金額は約741億円でした。

りんご台風青森県に接近したのは9月27日夜から28日にかけての一晩ですので、りんごにとっての台風の脅威を思い知らされます。

 

Wikipediaの1991年のその平成3年台風第19号に「地域別の被害」として、りんごの被害が書かれていました。

青森県のリンゴ農園では、収穫前のりんごが木からほとんど落ち、リンゴの倒木・枝折れの被害に見舞われた。落下したリンゴは生食用には不向きでほとんど値がつかないため、ジュースやジャムなどの加工用に回されたが、地域の小学校などでは給食に支給された。また、被害を受けたリンゴ農園の収穫量回復には時間がかかるなど、長期的に甚大な被害を受けた。しかしながら、この時に木から落ちなかったリンゴは、"落ちないリンゴ"として販売され、当時の受験生に人気を呼んだ。なお、リンゴの被害面積は22,400ヘクタール、被害総額は38万8,000トン、被害総額は741億7千万円とされている。

この台風を教訓として、青森県を始めとするリンゴ産地では、台風来襲が近づくと(収穫可能なものに関しては)早めに収穫することが多くなった。

ああ、そうそう、「落ちないりんご」とか「収穫を早くする」とかニュースで耳にした記憶があります。

 

当時のりんご農家の方も「衝撃的な光景」と記憶しているという記事が、ちょうどあれから30年たった昨年書かれていました。

りんご台風から30年 「衝撃」今も

 

 30年前の1991年9月28日、日本海を猛スピードで北上してきた台風19号は、本県に記録的な暴風をもたらした。特に収穫間近のリンゴ園へ壊滅的な打撃を与え被害総額は空前の約38万トンにも上り、全国的にも"りんご台風"の名で記憶されている。木から振り落とされたリンゴで埋め尽くされた畑。当時被害を受けた農家は「衝撃的な光景だった。あんな経験はそれ以前もそれ以降もない」と当時を振り返る。

 自然と向き合い、災害とも付き合いながら営みを続けるリンゴ農家。「それでもリンゴ作りは好きだし、これからも体が健康なうちは頑張る」と木村さんは笑顔を見せ、今も畑で作業に汗を流している。

(「陸奥新報」、2021年9月27日)

 

 

今回は風よりは大雨による落果のようです。

「自然と向き合い、災害とも付き合いながら」というのは、文学的表現かもしれませんね。

そして「食べて応援」というのも。

 

長野県の2019年のりんごの被害のことも思い出しました。

「明治時代に養蚕の桑から水害に強いりんごに植え替えた」

長い時間をかけて災害に強い品種や栽培方法の経験が積み重ねられてきたから、また今年も各地のりんごを食べることができるのですね。

 

米(ヨネ)のなるサワを訪ねる記録の途中ですが、明日もりんごの話が続きます。

 

 

 

 

「記録のあれこれ」まとめはこちら

失敗とかリスクについてのまとめはこちら