事実とは何か 95 「唐突」だったのかそうでないのか?

毎日新聞の「『任意なのに義務化?』 マイナ保険証、SNSで渦巻く不信感」(2022年10月13日)に、以下のようにありました。

 

<国会でいつどのような審議をしたのか>

 

 実は、マイナンバーカードの普及を目指し、現行の健康保険証を24年度中をめどに原則廃止する方針は6月に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針」で打ち出されていた。

 しかし、今回の事実上義務化の発表は唐突感を持って受け止められたようだ。9月の国葬実施が国会での議論を経ずに閣議決定されたことへの不信感も重なり、不満が噴出。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令の請求は「慎重に判断」(松野博一官房長官)とした政府の姿勢を引き合いにこんな皮肉めいた書き込みもあった。

(強調は引用者による)

 

ええ、本当に唐突感しかありませんでした。

6月ごろに確かにマイナンバーカードと健康保険証についてのニュースがあったような記憶がありますが、一応、医療従事者の端くれなので「事実上義務化」「廃止決定」であれば業務に影響があるので記憶に残るはずです。

 

 

*唐突感は当然ではないか*

 

なぜ「唐突感」を感じたのか、過去のニュースを検索してみました。

 

政府が「骨太方針2022」原案 かかりつけ医機能発揮へ制度整備 保険証の選択制導入など明記

(健保ニュース2022年6月中旬号)

 

政府は5月31日の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」の原案を示した。与党との調整を経て、近く閣議決定する。令和5年度予算編成に向けては、4年度から6年度まで歳出改革努力を継続する方針にもとづき、経済・財政一体改革を着実に推進。社会保障改革は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行い、機能分化と連携を一層重視した国民目線での医療提供体制改革を進める。他方、保険者による保険証発行の選択制導入や、オンライン資格確認の導入状況を踏まえた保険証の原則廃止を目指す方針を明示した。

 

 「骨太方針2022」の原案は、強固で持続可能な経済・財政・社会保障制度の構築に向けた経済・財政一体改革の取り組み方針を示し、短期と中長期の整合性を確保した経済財政運営と令和5年度予算編成の考え方を提示した。

 

 5年度予算は、4年度から6年度までの3年間、歳出改革努力を継続することとした「骨太方針2021」にもとづき、経済・財政一体改革を着実に推進する。

 

 持続可能な社会保障制度の構築に向けては、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造を見直し、能力に応じ皆が支え合うことを基本としながら、それぞれの人生のステージで必要な保証をバランスよく確保すると明記。

 

 その上で、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引き上げを含む保険料負担など各保険制度における負担能力に応じた負担のあり方について総合的な検討を進めるとした。

 

 勤労社会保険は、被用者保険の定用拡大の着実な実施や企業規模要件の撤廃・非適用業種の見直しなどを検討し、実施を図る。

 

 今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築、かかりつけ医機能が発揮される制度整備や地域医療構想の推進など、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制の国民目線での改革を進めるとした。基盤強化に向けて、医療費適正化計画のあり方も見直す。

 

 高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040年頃を視野に入れつつ、新型コロナ禍で顕在化した課題を含め、2023年、2024年を見据えた短期的課題及び中長期的課題を政府の「全世代型社会保障構築会議」で整理し、中長期的な改革事項を工程化した上で政府全体として取り組みを進める方針を明示した。

 

 社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進に向けては、オンライン資格確認について、医療機関・薬局に令和5年4月からの導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、診療報酬上の加算による支援措置を中医協で検討する。

 

 さらに、6年度中を目処に保険者による保険証発行の選択制の導入や、オンライン資格確認の導入状況を踏まえた保険証の原則廃止をめざす方針を盛り込んだ。

 

以下略。

(強調は引用者による)

 

これを読むと、2024年度が始まるまでには医療機関・薬局にはカードリーダーなどを整備し、それぞれの健保団体が「マイナーカードと一体型か、そうでないか」を選択して、その利用状況が増えていけば段階的に「現在の保険証の原則中止」もありうるという意味だと思いますから、やはり今回の発表は「唐突感」しかないですね。

 

それとも観測気球なのでしょうか。

だとすると、SNSでは日頃の生活では使わないような断定調での正しさが人の気持ちを惹きつけやすいので、賛成であれ反対であれ、なんだか現実の生活からはかけ離れた方向性へと向かってしまいそうな嫌な予感がしますね。

 

 

 

唐突に決定されたことは、その方向性に不具合があっても現場に丸投げされたままになりそうです。

政策の失敗もその社会の雰囲気に賛同した人たちの責任も、顧みられることも引き返す機会もない。

20年も前の骨太の方針という漠然としたイメージで、本当はどこへ向かっているのだろう。

 

 

 

 

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