水のあれこれ  268 梅雨前線と湿舌

線状降水帯に逆らうようなスケージュールだった三泊四日の九州の散歩の最後の宿泊地は熊本で、ホテルの窓から坪井川の流れが見えました。

あの身の危険を感じた土砂降りが嘘のように雨があがり、青空が映える川面を窓から眺めました。

 

帰宅してからこの坪井川加藤清正時代の治水対策のひとつであったことを知りました。

あの時は雨の中を歩いた後で疲労困憊でしたが、もっと欲張って歩いてみればよかったのにと今になって後悔することがたくさんです。

 

ホテルでテレビを観ていたら、水俣土石流災害から19年というニュースがありました。

水俣市では当時、梅雨前線・湿舌の影響で、1時間雨量72mm(アメダス熊本県設置の深川雨量計では121mm)を記録するなど激しい豪雨であった。大規模な土石流は、市内の深川新屋敷地区と宝川内集地区の2箇所で発生し、19人が死亡、7人が負傷した。避難勧告の発令は遅れ、土石流が起きた後になって発令された。物的被害は県下50市町村で176億円に及んだ。

水俣市は、被害の反省・教訓を後世に伝えようと、「平成15年水俣土石流災害記録誌〜災害の教訓を伝えるために〜」と題する記録誌を作成している。

なお、土石流災害前後の7月18日から20日にかけて、九州では梅雨前線の影響で集中豪雨となっており、熊本県、鹿児島県、福岡県、長崎県の4県で合計23人が死亡している。

 

2003年(平成15年)に19人もの方が亡くなった災害が起きていたようですが、当時のニュースの記憶がありません。

2000年代に入り、ゲリラ豪雨という言葉とともに「こんなことが起こるのか」という水害がぼちぼちと都内でも増えてきた時期ではありましたが、長いこと大きな水害に遭遇することもなかったので私自身の危機感も少なかったのだと思い返しています。

 

今年はたまたま梅雨明けが6月だったので、例年に比べれば雨量の少ない7月中旬に九州を訪ねたのですが、それでもすごい雨に圧倒されたのでした。

 

 

*湿舌(しつぜつ)とは*

 

水俣市土石流災害を読んで、「湿舌」という言葉を初めて目にしました。

 

梅雨前線の場合は前線の南側が広く暖湿流に覆われるが、低気圧の通過などに伴って狭い領域に暖湿流が流れ込み、梅雨前線を刺激して活発化させ、猛烈な集中豪雨をもたらすことがある。梅雨前線付近で発生することが多いが、それ以外のこともある。

 

地上付近から上空約7km付近までの高度では、湿舌が侵入すると水蒸気と対流のエネルギーを供給して、積乱雲の成長を促す。これが狭い領域で起こると、雨が短時間に大量にしかも狭い範囲にできて、それが一気に降り集中豪雨となる。

 

湿舌による集中豪雨は、湿舌だけではなく、対流を促進する地形と風のコンディション、上空の寒気や乾燥の程度なども影響する。

Wikipedia「暖湿流」

 

夏の空に積乱雲が出来始めて変化したり、雷雨になりそうな雲行きを眺めるのがけっこう好きなのですが、その現象をどのように言葉で表現できるのだろうというあたりでいつもつまづいています。

「もくもくと雲が集まり始める」とか「真っ黒い雲が」ぐらいで自分の語彙力の少なさが情けないと思いつつ、気象の基礎知識もないので仕方ないですね。

 

同じように空を眺めても、こんな言語で表現できるのが専門の方々ですね。

 

私にはとてもとても、梅雨空を眺めても「湿舌」が見えそうにはありません。

水がさまざまな状態に変化して起こす現象を、どうやって突き止めたのでしょうか。

すごい世界ですね。

 

 

 

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