落ち着いた街  28 熊川分水から玉川上水へ

熊川神社に着いた時、ちょうど歴史を辿る街歩きでしょうか、数人の方が境内から出て熊川分水沿いに歩いていかれました。

この先の蛇行した水路に沿って多摩川までも歩いてみたかったのですが、今日は玉川上水でまだ歩いたことがない場所を歩くという大きな目的があるので、ここから北へと引き返します。

 

水路の水面を眺めながら住宅地を歩くと少し暗渠になり、今度は道の反対側にまた水路が現れました。しばらく水面を眺めがてら歩いていると、個人の家の庭へと水路が続いています。

分水を追うのはあきらめて、清水坂通りに多摩川へと歩くと熊川通りの向こうが急な下り坂になっていて、ここが拝島段丘の崖線の「清水坂」であることが初めてわかりました。

膝に力を入れないと歩くのも大変な坂道の下が「南田園」と言う地名で、水田があったのでしょうか。

しばらく崖下のせせらぎ通りを北へ歩き、再び見上げるような坂道を登って福生院の横に出ました。

地図ではこの福生院と福生消防署の間に水色の線が描かれているのですが、立ち入り禁止の場所のようです。

 

熊川分水を辿るのは一旦終わりで、五日市線に乗って一駅、拝島駅に戻りました。

 

 

*拝島から西武線武蔵砂川駅まで玉川上水沿いに歩く*

 

再び拝島駅北口に出て、今度はあの車窓からも見える高い木々が続く玉川上水の遊歩道を歩き始めました。

 

道路よりも一段高くなっている土手の上を歩けるようになっています。まるで森の中を歩いているような落ち葉と土の遊歩道が続きます。

玉川上水

江戸時代のはじめ、多摩川の水を飲料水として江戸市中に供給する目的で開削された上水路です。羽村の取水口から四ツ谷(新宿区)に至るその開削は、幕府の命によって多摩川兄弟が請負い、承応3年(1654)に完成、以降、今日に至るまで江戸・東京の主要上水として機能しています。

一方、この水は、水の乏しい台地の村々にも多くの分水を通じて供給され、人々の農耕生活に重要な役割りを果たしてきました。しかし、その使用に際しては幕府の許可が必要で、また種々の制限も加えられ、人々はこれを自由に使うことはできませんでした。

現在の平和橋たもとから、南方の拝島本村域方面に引水される「拝島分水」もその一つです。明暦年間(1655~1658)頃の開通で、毎年冥加金(みょうがきん、使用料)を上納し、生活・農業用水として利用されてきたものです。

 昭島教育委員会

 

いつの間にか昭島市に入っていたようです。あちこちにある「玉川上水」の説明板は、また新たに知らない世界へといざなってくれますね。

拝島分水、また歩く計画を立てなければ。

 

街路樹は椎やクヌギで、たくさんの実が遊歩道の上に落ちていました。萩やススキ、秋の景色です。

 

つつじ橋では、南側から大量の水が玉川上水へと合流していて、そのそばにスリーボンドケミカルの工場がありました。分水するだけでなく、どこからか工業用水が送水されて合流しているのが現代の玉川上水ですね。

 

しばらく歩くと、大きな公園のような森が見えてきました。手前に上水公園があり、その向こうが昭和の森ゴルフコースです。

ここで今まで歩いてきた玉川上水の右岸側の遊歩道が忽然となくなり、左岸だけになりました。

そしてそれまでの土と落ち葉の道から、オガクズでしょうか、ふかふかしたものが敷き詰められた道に変わりました。

左手は平野に広がる住宅地と少し残っている畑、右手は広いゴルフコースと言う風景に変わりました。

どこまでも水の音が一緒で木陰で涼しく、そして自転車は道が分けられているのでのんびりと歩けます。

薄紫色の釣鐘のような花があちこちに咲いていました。なんという名前でしょうか。

 

玉川上水沿いの道はほとんど高低差を感じないのですが、多摩川から段丘上に水を乗せて江戸まで送水するのですから、ほんとうにその土木技術をどうやって見出したのでしょう。

途中で鴨が流されているのを楽しんでいるような場所があり、一見穏やかでも水の流れが速いようです。

 

松中橋ではまた分水路があり、「砂川分水」と表示されていました。

このあたりから途中で暗渠になったり、遊歩道が途切れて、ところどころ畑があるものの市街地の趣きになってきました。

 

拝島駅から1時間と少しであの残堀川と玉川上水が交差するマジックのような場所に到着し、しばしあちこちからその仕掛けを眺めましたがサイホン式らしいということ以外には全く手も足も出ません。

 

これで、ほんとうに玉川上水のほとんどの区間を歩くことができました。

達成感もひとしおですが、何よりも玉川上水沿いの街は上水沿いの美しい風景だけでなく、その歴史を知ることができる資料館のような場所なのでまた足を向けたくなるのでした。

 

 

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