散歩をする 391 晩秋の車窓の風景

11月初旬、品川駅6時に出発するのぞみに乗るためにまだ真っ暗な中、家を出ました。9度ですがそれほど寒く感じないのは不思議です。

でも朝帰りの酔っ払った人が駅に座り込んでいたので、凍死しないか心配になりながら品川駅に向かいました。

 

うっすら明るくなってきた頃に出発しました。まずは原の水神池の鎮守の森を見逃さないようにと集中したのですが、やはりこの辺りの舌状台地の入り組み方は複雑すぎて見失いました。

新横浜でかなり乗車して、指定席も3分の2ぐらい埋まった感じです。

短いトンネルや切り通しをいくつか過ぎて目の前がひらけるように相模湾が見えてきた時に、ちょうど国府津から来た御殿場線の車体が朝日に輝いていました。6時23分でした。あっという間に小田原を過ぎて、1分後には早川の河口を通過し、相模湾に小さな小舟が浮かんで一人の漁師さんが漁をしているのが見えました。

 

大好きな三島あたりの風景が過ぎたところで、GPSを確認しながら興国寺城跡を見逃さないようにしていたのですが、たぶんここがその切り通しだろうと思ったところであっという間に通過してしまいました。この辺りの水田地帯は刈り取ったあとから生えてきたひこばえで、うす黄緑色の絨毯のようです。

 

 

富士川を越えるとまた短いトンネルをいくつか通過する区間に入りますが、ここでもGPSを確認しながら車窓の風景を見ていました。9月23日から24日の豪雨で静岡市内は浸水や長期の断水で大変な被害を受けたのですが、その時にこの興津川からも静岡市内へと上水道が来ていることを知りました。昨年、駿府城下の用水の歴史を訪ねたのですが、現代の水道はどこから来ているかまでは考えていませんでした。

 

このところ睡眠不足だったので、いつもなら車窓の風景を何時間でも集中してみているのですが、この日は掛川の辺りで意識がなくなりました。でも大きな川の直前ではハッと目が覚めるのは不思議です。

定刻通り通過した三河安城のあたりでは、水田はすっかり茶色で裏作のための準備が始まっていました。

木曽川では以前から新幹線の線路より少し下流に橋桁が造られていたのですが、橋が途中までできていました。すごいですね、どうやって川の中に安全に、そして頑丈な橋を造るのでしょう。

ふと車内に野焼きの香りが入ってきました。

あっという間に8時2分京都駅に到着しました。

 

ここからJR奈良線に乗り換え、紅葉が美しい琵琶湖疏水に沿ってしばらく走ると高台へと上り、近鉄線とも違う車窓の風景です。

宇治川を越えたあたりから木津駅までの山沿いから見た風景が好きなのですが、秋の日差しが入り込んできたので途中またうつらうつらしてしまいました。

沿線にはコスモスが咲き、ススキの穂が輝いていました。びわの花も少し咲き始めていました。

 

春や夏の草花のあふれた華々しい風景とは違う晩秋の風景ですが、日照りや水不足や水害に耐えたあとのしばしの安息の時期のように見えてきました。

ヒトが眠いのも秋のせいということにしておきましょうか。

ただ晩秋の水田は休んでいるわけでもなさそうで、次に向けて準備が始まっているようでした。

 

今回はちょっと眠ってしまいましたが、それでも何度も同じ路線を通っても車窓の風景にあきないものですね。

新たな発見がある楽しみもそうですが、知らなかったことや見えていなかったことに愕然とすることが増え、そして当たり前のようにあった風景が一瞬でなくなってしまうこともある理不尽さがひしひしと感じられるようになって、この風景を目に焼き付けておきたいという思いが強くなってきました。

 

2ヶ月ほど前に訪れた奈良に到着しました。

いよいよあの万葉まほろば線の車窓から見えた風景を歩きます。

 

 

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