3月以降、急激に海外からの観光客が増えたことを実感しますね。
通勤ラッシュ時にさまざまな国の旅行客が大きなスーツケースとともに乗り込んできます。日本人だけならたとえ混雑しても通勤時間帯は駅構内でも粛々と移動する人が多いのですが、平日なのに休日並みのアトランダムの人の流れ方で大混乱です。
10年ほど前に日本を訪ねるのにもいろいろな思いがあるのかと海外からの観光客への見方が変わったのですが、当時と比べると数人ぐらいから20人ぐらいで行動する集団の旅行者の姿が増えた印象です。
そして最近では「日本は物が安いから、食べ物が安いから」という感想がテレビで流れるようになりました。
つまりは労働対価が安いということですね。
40年ほど前に意気揚々と海外へと出かけていた時と逆転したのでした。
それはそれで、「日本は先進国」という気恥ずかしさはやはりあれも意識のバブルだったことに目が覚めたので、よい機会かもしれませんね。
*「ぼーっとしていると、あんたらもそのうち魚食べられんくなるぞ」*
ただ、物価が上がってかなり節約しているのに海外からは「物価が安いから日本に遊びにいく」と思われるようになったのかとなんともいえない気持ちのところに、もう一つガツンとくるニュースがありました。
「日本人は金払えない」アジアの胃袋に向かう高級魚
日本で水揚げされるノドクロやマナガツオといったいわゆる高級魚の行き先が、国内から海外に移っていると言われている。背景には、刺身でも食べられる日本の"鮮魚”に目覚めたアジアの巨大な胃袋があった。九州の近海でとれるおいしい魚が魅力の福岡でも、その影響がじわりじわりと広がっている。
(以下、略)
(NHK WEBNEWS、2023年5月12日)
「もう国内だけではだめだと思います。われわれとしては、高く買ってくれるところに売るのが一番いいんです。今は海外の方が確実にもうかります。
日本人は金払えない?
市場の運営会社によると、ノドグロやマナガツオ、アラカブ、タチウオといったいわゆる高級魚を中心に、輸出する魚の種類と量が急速に増えているという。
売り上げに占める割合の差こそあれ、今では市場の約40の仲卸会社の大半が、輸出に関わっているとみられている。
「日本人は金払えないからもう無理だ」
取材中、日本人の仲買人からポツリとこぼれたことばに、台頭するアジアの勢いと今の日本の現実を見た気がした。
その背景には「血抜きや冷凍など魚の鮮度を保つ日本ならではの技術がある」とのことで、この場合は適正な技術料なのかもしれません。
1970年代から80年代、東南アジアの沿岸で根こそぎ魚をとり、安い魚は海に捨てて高級な魚だけ日本へと輸出されていたことをその国の零細漁民のNPOの人たちから聞きました。
魚は無尽蔵にあるのではなく、世界中から魚を買いあさっている日本の状況ではいつかは魚は食べられなくなるのではないかと感じたのでした。
「高級な魚は日本へ」から「高級な魚はアジアの富裕層へ」に変わったのがこの40年の変化でした。
そして高級な魚どころか、鰯や鯖や秋刀魚といった身近な魚まで手が届かなくなってしまった40年でもありました。
どうしたら良かったのでしょう。
「10年ひとむかし」まとめはこちら。