行間を読む 206 最近の「観光」には「そこに住む人もよし」の視点がないのでは

昨日の記事は2週間ほど前にすでに下書きを書いていて、「住んでよし、訪ねてよし」に足りないものは何だろうと考えていました。

 

まあ、無理に「三方よし」にしなくてもいいのですけれど、あえて「観光業者もよし」(それで商いをする人)あるいは「観光政策を立てる人もよし」を入れないのは何かありそうと思いたくなる、昨今の政治状況ですね。

 

 

自治体までがその地域を「観光資源」として切り売りする時代*

 

さて、最近の「観光」に足りないものは「そこに住む(生活する)人もよし」の視点かなと思っていたところ、ちょうどこんな記事がありました。

 

『奈良の観光は、安い・浅い・狭い』マイナス面を三拍子で・・・こんな結論は誰が作った?奈良県観光戦略本部に聞くと

 2024年5月18日   MBSNEWS

 

 以前から、"宿泊客が少ない"などの課題が挙げられている奈良県は、観光戦略本部を立ち上げて、15日に初会合を行った。そこで委員らに示された資料には、奈良観光のマイナス面をはっきり示す衝撃的なキーワードが並んでいる。

結論『現在の奈良の観光は 安い 浅い 狭い』

これはどういうことで、誰が作成したのか。資料を読みとき、県の担当者に話を聞いた。

 

安い=観光消費額が少ない

奈良県を訪れる観光客は、一定数いる。コロナ前の2019年には全国19位(4500万人)、インバウンド客に至っては2位大阪、4位京都に続く全国トップクラスの5位(350万人)。

それにも関わらず、1人あたりの観光消費額5308円は、全国平均の9931円に大きな開きがある。

日帰り客の消費額、6年間平均を見ると、飲食費は1344円、土産代は1156円。入場料は369円。飲食費はランチ代+飲み物代程度か。

こうしたデータから圧倒的に「奈良観光は安い」ことがわかる。入場料の369円といったところから、県は体験やアクティビティなどの消費額はほとんどない、と分析している。

 

浅い=滞在時間が短い

奈良県で宿泊する客は非常に少ない、これは昔から課題に挙げられている。過去9年はほぼ46位、最高は44位で、最低は47位だ。

外国人訪問者数が全国5位に達した2019年も、外国人宿泊者となると全国24位に沈んでいる。

奈良を訪れた観光客の94%は日帰りを選ぶ。宿泊者の割合は6%、これは和歌山県の半分の値だという。

 

狭い=奈良公園周辺ばかり

人流は、年間通じて奈良公園エリアに集中。桜シーズンの吉野には人流のピークがあるものの、飛鳥、橿原、平城宮跡などほかの地域にピークはほぼない。

インバウンド客に限ると、なんと85%が奈良公園周辺だ。県は誘客イベントをするにしても、奈良公園周辺以外には、飲食店や宿泊先の受け皿環境がないとした。

また、観光客が来訪するのを待つ「大仏商法」の側面が否定できないとした。

 

結論を三拍子にしたのは奈良県自身だった

こうしたデータを基に、「現在の奈良の観光は 安い 浅い 狭い」の三拍子で結論づけられた。これを作ったのは、奈良県自身だった。

県の担当者によると、原案は観光戦略課が作成し、その後上司に上がるなど県としてまとめ上げていく中で、結論部分は『端的にまとまった、わかりやすい言葉が必要』という意見が出たという。

その結果、奈良県自らが『安い、浅い、狭い』の三拍子を打ち出した。『浅い』は『滞在時間が短く、深い魅力を知ってもらえていない』の意。ある意味自虐的にも聞こえるが、その心は、課題を明らかにしてテコ入れし、変えていこうとする姿勢のあらわれだという。

 

山下真知事『素材は良い、ポテンシャルはある』

初会合を終えた山下真知事は、奈良県について『素材は良い、ポテンシャルはある』と話した。

観光戦略本部は、2030年度の数値目標を、宿泊者500万人(273万人)、一人当たり観光消費額は6000円(4569円)などと定めて、これまでのように県全体を対象にしたプランニングではなく、各地の状況に合わせて、小さいところからはじめるという。

 

奈良の観光は『高い、深い、広い』に変わることはできるだろうか。戦略本部は、各地で観光地としての「磨き上げ」などが必要だとしている。

 

 

政争と動乱、飢饉と災厄を乗り越えてきた歴史や、「いにしえより水に乏しい」盆地の真ん中に広々と水田地帯が残り続ける意味など、一見奈良県には郷土歴史博物館が少ないようでも歩けば歩くほど土地そのものが歴史の記録を残しているし、それがまた全国各地への歴史への関心につながっていくすごい場所だと思っています。

そして四方の山をさえぎる建物が少ないダイナミックな風景も、また各地のそれぞれの歴史や時代が感じられる広い奈良、こんどは次にいつ奈良を訪ねようかと楽しみにしていました。

 

からしみじみと奈良が好きだと思うのですが、観光の視点からは「観光資源」だったり「良い素材、ポテンシャル」になってしまうのか、何だかなあ。

 

 

あれだけ観光客が多くても、経済的に観光に依存しない生活を維持できているとすればむしろすごいことだと思いますけれどね。

それなのにまさかの「国の病気を取り除くため」に今でも読経が続けられている東大寺をもじって「大仏商法」なんて言われるとは。

 

奈良で生活している方々は、どう思っているのでしょう。

少なくともその記事のコメントからは、もっと観光で稼ぎたいという雰囲気ではなさそうですけれどね。

むしろ歴史という遺産を「観光」で食い潰して欲しくないと思いながら生活されているのではないかと、静かな街を歩いていて思いました。

 

そして一時的に観光で儲けたり派手な建物がたっても、「強者どもが夢のあと」でいつかは田畑や森に戻っていく。

そんな経験もまた大いなる奈良の遺産かもしれませんね。

 

 

 

 

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