つじつまのあれこれ 48 観光は虚業か実業か

昨年あたりからまたベネチアの名前をニュースで時々耳にするようになりました。

 

あの2020年の新型コロナ感染拡大で閑散としたベネチアからわずか3年ほどで今度は、人を制限し入場税まで払う状況になっているのですから、これだけの人を動かす「観光」恐るべしですね。

それでも検索すると、大手旅行会社をはじめベネチア行きのツアーがたくさんありますね。

 

やはりどこかへ行きたいという思いは世の中が混乱している時期にもありますから、私も2020年7月に国内の感染状況の動向を見ながら1泊2日の散歩を再開しました。先行きの見えない長い感染症との闘いになりそうでしたが、少しずつ付き合い方が見えてきたこともありました。

 

未曾有の感染症拡大で観光や飲食そして関連業者さんの大変さが聞こえてくる中、驚いたのが政府がこんな時に観光を勧める「GoToトラベル」をはじめたことでした。

今じゃないのに、それじゃないのにと、政府の感染症対策と「観光」への違和感を感じるようになったのがこの頃ですね。

 

 

*「アフターコロナの中で、どこまで回復したかー旅行・観光ー」*

 

「コロナ、観光」で検索したら経済産業省から上記の内容のレポートがありました。

「アフターコロナ」、最近のものかと思ったらなんと2023年5月12日付です。家族内感染が激増してまだまだ対応が大変だったのに「コロナは終わった」どころか「コロナはなかった」「今までの対策は無駄だった」といった批判がではじめて、急に社会の流れが変わったと感じた直後です。

 

その末尾には「経済産業省を代表した見解ではありません」と注がありますが、「Go Toトラベル」を評価しているようです。

 第3次産業活動指数から、鉄道旅客運送業と航空旅運送業について新型コロナの影響がなかった2019年12月からの推移をみますと、鉄道旅客運送業は、2020年5月を底にして"GoToトラベル"(実施期間:2020年7月22日から12月27日)の実施効果もあり緩やかな上昇傾向を見せ、新型コロナ前の2019年12月と比較して90%までに回復しています。

 一方、航空旅客輸送業は、2021年1月を境に緩やかな回復傾向が続いた後、2022年10月に始まった"全国旅行支援"の効果もあり、足元では新型コロナ前の2019年12月を15%ほど超えるまでに回復しています。

(強調は引用者による)

ああ、そういえば「全国旅行支援」もありましたね。

 

 第3次産業活動指数から、宿泊業と旅行業についてコロナの影響がなかった2019年12月からの推移をみますと、宿泊業は、2020年5月を底にして"GoToトラベル"実施効果から回復しましたが、第3波の感染拡大期(2020年12月から2021年1月)とともに低下し、第3波収束以降は緩やかな上昇傾向を見せて、足元では2019年12月を13%上まる水準まで回復していますが、内訳となりますホテルに比べて旅館の回復の足取りが重い傾向にあります。

2020年4月にはすでに宿泊療養でホテルを借り上げることが行われていましたが、それはこの数値にどう貢献したのでしょうか。

 

いずれにしても、"GoToトラベル”に瑕疵はなかったかのような報告ですね。

 

 

*実際には"GoToトラベル”は社会にどんな影響を与えたのだろう*

 

未曾有の感染症拡大でさまざまな考え方が混沌とする中、それでも感染症の専門家の方々が、疾病そのものがわからない中で多くの人の命や健康が脅かされる状況への対応に身を呈してくださっていた、しかも最初は見るに見かねて自主的な勉強会から政府への提言が始まった、そんなこの国の医療の末端で働くことができたことは幸いだったと思っています。

 

ただ、政治とか経済となると、社会に与えた「失敗」さえ認めないことが多いですからね。

混沌とするのは仕方がない状況の新型コロナの対応の中でもGoToトラベルについては本当にびっくりしましたが、こんな流れがあったことを「奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか」広野真嗣氏)を読んで知りました。

 官僚機構も忖度が働いたのか、諌める動きはなかった。

 首相肝入りのGo Toは厚労省内で「Go To ヘル」と揶揄されていた。政策をいったん止めた方がいいに違いないが、進言すれば自らのクビが飛ぶという自嘲の表現だ。

(p.115)

 

「人の移動で感染が拡大する」ことが当初からわかっていたのに、GoToだけでなく当初の水際対策など「観光」と「感染症」について見直そうという動きがあまり感じられないのはなぜなのだろう。

 

そんなことを考えながら観光「学」は何だろう、学問的にリスクマネージメントはどうなっているのだろうと思って読んで、納得しました。

観光学(かんこうがく)とは、観光に関する諸事情を研究する学際的学問である。ただし学問としてまだ日本では体系化されていないという研究者もあり、観光論、観光研究、ツーリズム研究と称される場合も多い。

 

1990年代ごろから「観光学科」を見かけるようになったのですが、学問として体系化されていない、そして社会全体への責任の体制がないあたりでしょうか。

 

「観光」これからどこへ行くのでしょう。

 

 

*おまけ*

 

どの分野でも怪しい話がまことしやかに「学問」の程をなして商売になりやすいのですが、「人を移動させる脳の働きに着目した人流学」(Wikipedia「観光学」)なんてあるのですね。

いやはや。

 

 

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