仕事とは何か 19 「労働移動」とか「労働市場」のもやもや

最近の犯罪のニュースで、「30歳無職の男性」といったことが珍しくなくなった印象です。一見まともそうな若い世代の男性が「無職」とはどんな事情があるのでしょう。

そういえば以前は、以前というのは30~40年前ですが、女性の無職を表す言葉に「家事手伝い」という表現がありましたが、最近は目にしなくなりましたね。

 

そんなことを考えていたら、「3代の天皇と英王室の深い交流」のニュース記事の中に、1975(昭和50)年にエリザベス女王が来日した時の様子が書かれていて、ああ、日本でもそんな時代があったと思い出しました。

この時、一行は日本が誇る新幹線にも乗っています。今では考えにくいですが、来日中、春闘の交通ゼネストで鉄道網が麻痺し、一行は東海道新幹線での関西入りをあきらめ、飛行機で大阪入りしました。新幹線に乗ったのは帰りの名古屋〜東京間です。その裏には「日本の国内問題である労働争議に外国が影響を与えてはならない」という、女王の考えがありました。(強調は引用者による)

 

女王は新幹線で往復してみたかったのかもしれませんね。あのジオラマのような車窓の風景をどんな思いでながめていらっしゃったのでしょう。

 

それはさておいて、ゼネストに影響を与えないように経路を変えられたことを初めて知りました。

現代になっても労働者用とパブの入り口が分かれていたらしいイギリスですし、イングランドの支配の中で、音楽やダンスが禁止されたとか世界中から看護師が労働者として集められる社会ですし、つい10年ほど前でも「母乳を与えることは社会階級のはしごを登るチャンス」というシュールな野心的研究があったことなどを考えると、美談というよりは自国での労働問題の葛藤もあったのかもしれませんね。

 

 

*「労働市場」はいつ頃からできた言葉なのか*

 

さて、私自身も労働者ですし、自ら「労働力」とか「職場の戦力」と使う分にはいいのですが、他人から「労働力」と言われるのは嫌だなと最近思うようになりました。

 

とりわけ「労働市場」という言葉の背景が嫌ですね。「ヒト」はモノ、カネ、情報などと同じ「資源」の一つというあたり。

 

労働市場」という言葉は「自由な働き方」と非正規雇用がもてはやされ始めた90年代頃からのような気がしたのですが、どうなのだろうと検索したらリクルートワークス研究所の「古くて新しい問題ー労働移動の歴史を振り返ってー」(2023年3月8日)がありました。

 

まあさすが雇用の流動化を牽引してきた会社ならではですね。

 

それを読むと1960年代に「流動化」という言葉が使われ始め、「労働市場」は1980年代のようです。

1980年代も前半は年に1回程度しか登場しないが、1985年からは年に10回程度登場し始める。「労働市場の流動化」「労働流動化政策」「雇用流動化」なる言葉が平常に出現する。文脈としては日本的雇用慣行が崩れ始め、転職が増えると、いった論が多い。事実、図表1を見ると、1980年代中頃から転職者比率が高まっていることがわかる。

 

ああ、そういえば女性の転職情報誌「とらばーゆ」がこの会社から出されて、社会の雰囲気が変わっていったのもこの頃でした。

 

良い面もあったのかもしれませんが、「労働移動」とあっさり表現されてしまうとなんだか違うよなあともやもやするのです。

ましてや自分が一生をかけてきた仕事も、「労働市場」で扱われるなんてなんだか耐えられないですね。

 

 

仕事への敬意とか労働に対する対価が軽んじられるようになり始めたは、このあたりではないかと最近思うことが増えました。

 

 

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