事実とは何か 111 最上川沿いの「輪中」完成直後の水害

7月25日、山形・秋田に大雨特別警報が2回も出されました。ここ数年で歩いた場所の地名が次々と聞こえてくるので、ニュースをずっと追っていました。

 

被害の全体像が見えてくるにつれて、ちょうど1年前に、念願の最上川沿いから庄内平野を歩いた地域と重なってきました。

一面泥水の池になってしまった各地の田んぼが映し出され、自宅が被災された方々の様子が伝わってきました。

 

*2018年の水害を機に計画された輪中堤*

 

その中で「輪中」という話があり、どこだろうと地図で確認したところ、陸羽西線の代行バスで最上川沿いを走った時に、「美しい!」と思った支流の鮭川との合流地点のあたりでした。

 

「『輪中堤』整備された戸沢村蔵岡地区 想定外の『最上川』氾濫に『もう住めない』の声も」(山形放送、2024年7月31日)に住民の方々の声がありました。

「輪中堤を整備してもらったけどそれでもダメなんで。誰もここまでの規模になるとは想像できなかった」

「ポンプや輪中堤を作って何十億。どうしたのって感じ。私たちからしてみれば」

「輪中堤が出来た時は出来たら幾らかいいかなと安心していたと思う。だけどこうなってしまった。水には逆らえない」。

(引用者により抜粋)

 

輪中計画はいつ頃の水害で計画されたものなのでしょう。

 

検索すると山形県の「河川整備補助事業費(角間沢川)」にその経緯が書かれていました。

1. 事業概要

 戸沢村蔵岡地内を流れる角間沢川は、上流に角間沢ため池があり、古くから農業用水として用いられているなど、流域へ恩恵をもたらしてきた。

 平成30年8月において2度に渡る記録的な豪雨により角間沢川が氾濫し、蔵岡地区では多くの住家が床上・床下浸水する被害が発生した。同規模の洪水に対する再度災害を防止するため、県、国及び戸沢村が連携して治水対策を実施することとしており、県は輪中堤などの整備を行う。

1. 事業内容

 全体計画:輪中堤

 事業期間:平成31年度から令和3年度(予定) 令和2年度は、用地買収、輪中堤整備を実 施予定。

 

地図からてっきり最上川と鮭川の合流部だから水害が多いのだと思ったのですが、実際は違うようです。

Mapの地図では最大限に拡大しても「角間沢川」が表示されないのですが、その南側数百メートルの山中にため池が描かれているのでこの池からの水路があるようです。

 

そして山側に集落があるのかと思ったら、最上川沿いに集落があって山に挟まれた場所に水田があるようです。

 

 

最上川による氾濫は「想定外」だった?*

 

最上川の氾濫から集落を守るための輪中堤かと思ったら違うことが、別の記事を読んでわかりました。

 

「もう移転するしかないのか」 最上川本流のはん濫は"輪中堤"の想定外 戸沢村蔵岡地区」さくらんぼニュース、2024年7月30日)

 

今回の大雨で集落全体に被害があった戸沢村蔵岡地区。過去に何度も浸水被害があり、その対策としての堤防「輪中堤(わじゅうてい)」が去年完成したばかりだった。しかし今回は想定を超えて最上川の本流がはん濫した。繰り返される被害に住民からは「またか」と、やるせない声が聞かれた。

 

(リポート)

戸沢村蔵岡地区です。川の水が上がり集落全体が水に浸かった地区を見ると、道路が陥没し通れなくなっています。街の中には水は引いても泥が至る所に残っている状態です」

 

戸沢村蔵岡地区では最上川の本流がはん濫し、集落全体が水にのまれた。押し寄せた水の高さは、住宅の2階にまで達した。

(住民・中村健一さん)

「ああ、跡がある。あそこくらいまで水が上がったのかな。人の背も超えている」

 

蔵岡地区は、これまでも何度も浸水被害を受けてきた。

これまでの浸水被害は、集落を流れる最上川の支流「角間沢川」の水が、最上川の本流に流れ込めずあふれてしまう「内水氾濫」によるものだった。

(2018年・内水氾濫時の住民の声)

「半分もうあきらめ。雨が降るたびに安心できない」

「いつまで続くんだろう…と。何していいか、とにかくもうわからない」

 

内水氾濫の対策として、県が示した切り札が「輪中堤」。

最上川本流沿いに走る国道47号には、堤防としての役割もある。これに加え、県は高さ最大3メートル・約1キロに渡って集落をぐるりと取り囲んで水の侵入を防ぐ「輪中堤」を、去年、約14億円かけて完成させた。

 

ただし、輪中堤の建設には、土地の確保のため一部の住民の移転などが必要で、計画が持ち上がった当時は住民から複雑な声も上がった。

 

(2019年のインタビュー/住民・中村健一さん)

「農家としては反対だが、住民としては賛成。自分だけだったらわがままを言えるが、お年寄りから子どもまでいるので」

 

去年3月、期待の「輪中堤」が完成。集落には安心感が生まれたという。

そして今回の大雨。雨が降り始めた頃、集落の人たちは「輪中堤の効果は大きい」と実感したと話す。

 

(住民・中村健一さん)

「降り始めのころは『効いているな』と、『外水がこんなに高いのに内水が全然入ってこないすごいなぁ』って。それをみんなで『すごいな、効いているね』って話をしていた」

 

複数の住民の証言では、角間沢川も増水したが、輪中堤の効果ではん濫には至らなかった。しかし…。

 

(住民)

「もうまるっきり想定外。輪中堤は機能していた。ただ最上川の堤防側があふれた。もうどうしようもない状態」

 

今回の大雨で水があふれたのは、最上川の本流だった。

元々あった最上川沿いの堤防を超える「外水氾濫」が発生し、集落をのみこんだ。本流のはん濫は、「輪中堤」の想定外だった。

 

(住民)

「輪中堤がどうというよりは雨量の問題。線状降水帯でこの辺一帯かなり雨が降ったので一気に増えて超えてしまった。お手上げ状態」

 

(住民)

「避難所では『もううんざりだ』って。『出ていった方が気持ちが楽なのでは』という声が聞こえてきた。みんな悩んでいる」

 

農業を営む中村さんは、作業ハウスや田んぼも被害を受けた。

「もう移転するしかない」との声も聞こえる中、今後もここで暮らしたい気持ちは変わらないと話す。

 

(住民・中村健一さん)

「みなさんから土地を借りて農業をしている。最後の最後までいようというつもりはある。生まれてずっとここで育ったので、死ぬまでここでやっていければと。それは変わらない」

 

今回水があふれた国道47号線の堤防について、国は「数百年に一度のレベルの大雨に耐えられる設計だが、今回はそれを上回る雨だった」とした上で、堤防の強化などについては今後の検討課題としている。

(強調は引用者による)

 

 

代行バスの車窓から「鮭川が美しい」と眺めていたのが、この国道47号線のバイパス区間でした。新しい立派な道路で、雨にもそして雪にも耐えられるように造られているのだろうと思った記憶があります。

 

この道路が最上川の堤防がわりで、そして眺めていた風景の反対側には蔵岡地区の集落がありその南側には完成したばかりの輪中堤があったようです。

 

完成翌年に数百年に一度のレベルを超える大雨による水害が起こり輪中堤を超えてしまった。

住民の方々の恐怖と思いはいかばかりでしょう。

こういう災害直後のインタビューは大きな葛藤がそのまま言葉や表情に出るので心が千々に乱れそうになりますが、「輪中」から検索したことで今回の被害の背景とこの地域の歴史を少し知ることができました。

 

 

 

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