実験のようなもの 13 「ある意味社会実験」?

テレビに「南海トラフ地震注意(巨大地震注意)」という文字スーパーが出たので、今でも地震速報を聴くと心臓が止まりそうになる東日本大震災の記憶とここ10年ほどよく目にする南海トラフ地震などのシミュレーションの映像、そして各地の石碑で知った安政年間の大地震や災害などが一気に思い起こされて何が起きたのかと動揺しました。

 

今までの災害時の対応からこの国の専門家の方々の判断にも信頼がありますし、この十数年は未曾有の事態続きですから災害時の警報についてもそのつど確認して情報を整理するようにしていました。

 

「巨大地震注意」は記憶にないのですぐに検索しましたが、何をどうして良いのか正直なところ漠然とし過ぎていました。

 

 

*それはないよなと思ったこと*

 

この猛暑なので遠出の計画もなかったのですが、もしあればキャンセルしたと思います。

新幹線が徐行したりするくらいですし、これはのっぴきない事態かもしれないですからね。

巨大地震が実際に起きたらどんな災害になり、仕事や生活はどうなるのだろう。東日本大震災のことをあれこれ思い出しました。

離れた地域でも流通はつながっていますから、とりあえず社会から物が無くなったり、流言飛語で混乱することには加担してしまわないようにと思いましたが、生活を維持するためにどうしたらよいか、やはり正解はわかりません。

 

その後、不気味な静けさが続き、ようやく注意報が終了した時に「これはないよな」と思う言葉を見つけました。

 臨時情報の制度設計に携わった福森伸夫・名古屋大名誉教授は「今回はある種の壮大な社会実験となったが南海トラフ地震は国の半分が被災する巨大地震であり、本気で対策し、被害軽減につなげていく必要がある。耐震化や高台移転、企業の業務継続計画策定を進めていくことが重要だ」と訴える。

(「南海トラフ臨時情報、対象住民83%が見聞き…昨年調査では「知らない」7割」読売新聞、2024年8月15日)(強調は引用者による)

 

最近、実証実験とか「社会実験」という言葉が簡単に使われるけれど、生活や仕事にどれだけ影響するのかきちんと計画もされていない実験が多い印象ですね。

 

 

*誰が決定し、その責任を負うのか*

 

最初注意報が出された時には「防災庁」や長官の発表はなく、「気象庁は…」と説明していたことに違和感がありました。

 

その注意報が出てから翌日に首相の外遊が取りやめになったということは、こんな大事な注意報を政府・内閣が決定したものではなかったのかと混乱しました。

 

ようやく、その経緯が少しわかりました。

有料記事なので全部は読んでいないのですが、公開されている部分です。

 内閣府気象庁は8月8日、宮崎・日向灘地震を受け、南海トラフ地震に関する「臨時情報」を初めて発表。マグニチュード(M)8以上の地震の発生可能性が平城じより高まったとして、1週間の「巨大地震注意報」を呼びかけた。南海トラフ地震評価検討委員会の平田直会長(東京大学名誉教授)は記者会見で、「普段よりも数倍、地震の発生する確率が高くなった」と説明した。

 (中略)

〜巨大地震注意を初めて呼びかけました。どのような経緯があったのでしょうか。

南海トラフ地震評価検討会・平田直会長(以下、平田氏):臨時情報を発表する仕組みは、2019年から始まりました。4月17日に豊後水道という宮崎・日向灘の北側で地震がありましたが、M6.6と基準以下だったので、臨時情報は出しませんでした。

 その後の8月8日に、宮崎・日向灘でM7.1の地震があり、気象庁から私に連絡がありました。それで午後5時半ぐらいに気象庁南海トラフ地震に関する評価検討会という諮問会議が開かれ、それから2時間ぐらいで巨大地震注意という情報を出しました

 

(「南海トラフ地震評価検討会・平田会長「無視した人が多いことを恐れている」」、日経ビジネス、2024年8月20日)(強調は引用者による)

 

 

こんなに社会に大きな影響を与える初めての注意報を、気象庁が決定・発表したかのような状況に混乱した人もいるのではないでしょうか。

なぜ、首相や防災庁の長官の発表ではないのか。

 

そして「無視した人が多いことを恐れている」が何を指しているのかは有料記事で読めないのですが、翌日になってようやく首相の外遊中止が発表されたあたりで緊迫はしていないのかもしれないと感じた人も多かったのかもしれませんね。

 

地震は突然起こるのは身にしみてわかっている国民だから、どんな注意報が必要なのか、そんな社会実験にはなったのかもしれません。

 

それにしても暑い夏ですね。

命に危険を及ぼす、災害と認識する暑さという表現が初めて使われた2018年の夏の比ではない毎日。

冷房が効いた屋内でも動き回ると汗が止まらず、そんな暑さでも外で働いている方々もたくさんいます。

 

苦しい疲れたもうやめたでは人の命は救えないだけでなく、どの仕事も滞ってしまえば社会が動かなくなるので、国民はこんな猛暑という災害の中でも働き続けているのですよね。

むしろこういう猛暑が続いた中での安全な労働衛生管理とは何かの方が、現実に起きている問題なのに、そこへの政策を誰も考えてくれなさそうな政府です。

 

生かさず殺さずどころか、この猛暑の中でどこまで通常通り働かせることができるか実験されているような、そして猛暑で死のうがまたどこからか労働力を安く手に入れればいいとでも思っているのかと思えてきました。

朦朧とした頭で、政治の動きから目を逸らさないようにしなければと思っています。

 

 

 

 

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