今治といえば、海のそばに建つ今治城を見てみたいと思っていました。
ただ、この日の予想最高気温は35度を超えそうなので、できるだけ歩かない散歩を計画しなければなりません。
地図を眺めていると燧(ひうち)灘が終わる西側のあたりが半島のようにでっぱっていて、「波止浜」「波方」「馬刀潟」といった地名や、干拓地かと思う場所に「中堀」「内堀」「地堀」そして「門樋バス停」がありました。水路の先には波方駅のそばに沢池があります。
このあたりをぜひ見てみたいと思っていると、どうやらぐるりとその半島の先を回るバス路線があるようです。
しかも今治駅に到着して10分後に発車するバスは、「ドッグ前」を通過する路線のようです。
そこには今治造船所があるようです。
瀬戸内海を訪ねるようになって、海に沿って様々な暮らしや産業がある風景を見ることが楽しみになりました。
かつては工業化と自然な景観との葛藤が大きかったのですけれど。
「波」のつく土地にはどんな風景があるのだろう。この路線で車窓の散歩をすることにしました。しかもぐるりとまわった後、今治城の近くも通るようです。
*せとうちバス波方ループ線の車窓から*
今治駅まえのバス停には、予想以上の人が待っていました。同じ方向へ向かうのかなと思っていると、しまなみ海道を通って福山まで向かう高速バスが到着しました。
瀬戸内海の島々を眺めるのに瀬戸大橋線だけではなくこの手があったのかと、また次の計画が浮かんできました。困りましたね。
循環バスには私一人だけで、途中でポツリポツリと乗客が乗降車しながら進みます。
その名も「大新田町」を過ぎ、県立今治病院に立ち寄ると緩やかな上り坂になり、ため池や美しい瓦に魚の鴟尾(しび)のある屋根が多いようです。
すぐにまた下り坂になると、遠くに大きな橋が見えました。サイクリング車が通り過ぎて行きます。体力のある時に、瀬戸内海を自転車で訪ねてみたかったですね。
造船所も少し見えました。
高齢の方がバス料金の支払いに手間取っていますが、運転手さんものんびり待っていて、バスの中にも緊張感が走ることもない、こんな生活の方が幸せですね。誰もがいつかいく道ですからね。
車窓に海が見え始め、「はとはましんでん」の案内板がありました。「波止浜」をなんと読むのか確認しないまま家を出たのでした。
地図ではこの辺りも大昔はきっと小島が干潟でつながっていたのを干拓して入江になったのだろうなと想像していた場所が、目の前に広がり始めました。
大きなタンカーが今治造船所の前に停泊しています。
路線バス内だったので写真を撮るのをためらっていたのですが、思わず「(かっこいい)!」とタンカーや湾内の写真を収めました。
また上り坂になり美しい集落と大きな鉄鋼センターが見えます。
再び下ると、バスは海岸線に沿って夏の空に美しい瀬戸内海の島々、そして石積みの防波堤が見えました。
大好きな瀬戸内海そのものです。
またバスはグイグイと小高い場所へと上り、じきに九十九折(つづらおり)の道を下ります。
*波方の馬刀潟*
九十九折りの先に、見てみたかった場所があります。
地図では「潟」がつく地名で、おそらく小高い場所がかつての島だった干拓地ではないかと。
全国の潟をめぐるという無謀な計画もありますからね。
車窓からは潟の痕跡は全くわからない場所でした。
馬刀潟村(まてがたむら)
[現在地名]波方町馬刀潟
高縄半島の北端、宮崎岬が西に突出する付根付近、北側に位置する。東は森上(もりあげ)村、西は宮崎村、南は小部(おべ)むらに接し、北は海に面している。
慶安元年伊予国知行高郷村数帳(一六八七)には村名はみられず、波方村の一部であった。江戸中期頃波方村から分離独立したものと推測される。なお天保郷帳(一八三四)にも村名はない。「野間郡手鑑」によると、享保末年から元文(一七三六〜四一)頃の村高は二三石七升八合の小村である。田畑面積は五町五反で、「新田畑」と記されているところから、新田村として波方村から独立したものである。
(コトバンク、「日本歴史地名大系」より)
「馬刀潟」、てっきり「ばとうがた」だと思っていました。「馬刀」とはマテ貝のことのようです。
「波方」は「なみかた」のようですが、かつてははがたと読んでいたそうです。ほんと日本語は難しいですね。
この説明のおかげで、今治の先のあのでっぱった地域は「高縄半島」だと知りました。
*沢池から門樋、そして今治城へ*
馬刀潟から高縄半島の西側の海岸線をしばらく走ると、また上り坂になって沢池が見えました。けっこう大きなため池です。
ここからドッグの入り口の波止浜まで水路が通って「門樋」があるのだと思いますが、水門はわかりませんでした。いつ頃の用水路でしょう。
ちなみに「門樋バス停」は「もんぴ」で大丈夫でしょうか?
また県立今治病院にたちよって市街地の風景になり、今治駅からは街路樹の美しい道路を通って海岸線へ出ました。
「造船とタオルの街」の案内板があって、大きなスクリューのモニュメントが見えました。
1時間15分、580円の車窓の散歩が終わり、13時ちょうどに今治城前で下車しました。
外は35度、少し立っているだけで朦朧とする暑さですが、今治は歩いてみたくなる街ですね。
「落ち着いた街」まとめはこちら。
工業地帯についてのまとめはこちら。