こんな地図があるといいな 15 全国版の「クマダス」

秋田市の熊の立てこもり事件は驚かされました。

ほんの10年ぐらい前はまだ、たまに山間部などでの冬眠前の熊と遭遇のニュースぐらいだったような気がするのですけれど。

 

ニュースの中で「秋田県のクマダス」と聞こえてきました。

検索してみると、地図とともに目撃日時やその時の情報が網羅されています。ああ、こういうのが欲しかったと思いました。

 

私の散歩は潟や川や用水路など熊と行動範囲が似てしまうので、遠出をする計画では必ずその地域の熊のニュースを確認するようにしています。

熊情報をまとめている自治体もあれば、ニュースしか確認方法がなさそうな場所もあります。

そして以前は遭遇しそうな季節と山に近い場所を避けていれば何とかなりそうでしたが、最近は年中そして市街地でも出会ってしまう可能性があります。

 

少し前までTwitterの熊ニュースがとても役立っていたのですが、Xには入りたくないのでその情報も得られなくなりました。

 

 

*「KumaDAS(クマダス)のススメ」*

 

さすが熊が多そうな県は情報網がしっかりしているなと秋田県のクマダスに感心したのですが、もう少し検索していたら国立研究開発法人森林研究・整備機構の「KumaDAS(クマダス)のススメ」がありました。

 

背景と目的

 2006年(平成18)年は、市場最悪の規模でツキノワグマが人里領域に出没し、大きな社会問題となりました。人身被害件数は全国で140件に達し、有害獣として駆除されたツキノワグマの数は5,000頭を超えました。

 今、「山の実」とくにブナやドングリなどの「堅実類」が豊作か凶作化によって、ツキノワグマによる人里への出没多発を予測しようという取り組みが各地でおこなわれています。しかし、これまでのデータの蓄積がないため、こうした「山の実」の豊凶が本当にクマ出没と関係があるのか、よくわからない地域も多いようです。

 ところで、堅実類の豊凶は広い範囲で同じように変動することが知られています。ということは、もしクマの出没がこの豊凶に関連して起こるものであるなら、出没の変動パターンも近隣の県で似たものとなるはずです。そこで、人里への出没の多少を示す有害駆除数の変動パターンが、どの程度似ているかを調べてみました。

成 果

KumaDAS(クマ出没予測システム)

 数年に一度起こる東北地方のクマ出没多発は、主としてブナの凶作で説明できそうだといわれています(平成15年度研究成果選集)。2001年にクマの出没が多発した岩手県は、この研究成果をもとにブナの豊凶調査を始め、2006年春に初めてのクマ出没注意報を発令しました。市町村、関係各機関は様々な対策を取り、人里での人心被害を少なくすることができました。

 現在、各県の担当課が中心となって「山の実」の成り具合についての情報を集め、その結果からクマの人里への出没多発を予測しようとしています。これは天気予報にも似ているので、地域気象システムAMeDASにならってKumaDASと呼ぶことにしましょう。2006年の岩手県の例はKumaDASが被害軽減に有効であることを示したことになります。

 

堅実類の凶作がクマを出す?

 さて、どの地域でもクマの出没は堅実類の豊凶と関係しているのでしょうか。クマによる被害を受けている23府県25地域における1993年~2004年のツキノワグマ有害駆除数がどのように変動したかを解析したところ、近隣県では確かに同じように変動していることがわかりました。つまり、ある県がクマの出没多発に悩んでいる年はその隣の県でもクマ騒動が起きているということです。これは、県レベルを超えた広い範囲で堅実類の豊凶が同調していることと関係があるのではないかと推奨されます。

 

広域のKumaDASも可能

 KumaDASは全国の多くの地域で取り組み可能です。しかし各県だけでの取り組みには限界もあります。出没パターンが似ている近隣県は協力してデータを収集、分析することにより、クマの出没多発をより精度よく、また広域的に予測し、被害回避のための策を事前に検討することができるようになるでしょう。また、森林総合研究所が公表している全国のブナ結実状況データベースも役立つでしょう。

 

なんと2006年ごろから「広域版」も視野に入れたKumaDASの取り組みが始まっていたようです。

 

ちなみに今年の秋田の熊出没について、堅実類の不足だけではなさそうな解説もありました。

熊の生活に影響を与えるヒトの行動の変化もあるからでしょうか。

 

いずれにしても熊の生態や植物を地道に観察し、それぞれの生活史を明らかにするデータをもとにした科学的な地図といえそうです。

 

秋田の「クマダス」の全国版ができたらいいな。

こういうことをデジタル庁が率先してまとめてくださるといいのですけれど。

そしてスマホに「全国のKumaDAS」の標準アプリが入っていて、いつでも誰でもその情報を確認することができる。

とても公益性の高い地図情報になると思いますね。

 

 

*おまけ*

突然の天気の変化を予測するのに役立っている東京下水局の「東京アメッシュ」も全国版があるといいですね。

気象庁の「ナウキャスト(雨雲の動き・雷・竜巻)」があるのですが細かな地域を見ることができないので、遠出をした場所ではいつも東京アメッシュのような天気図を見たいと熱望しています。

 

 

 

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