行間を読む 224 「所得格差が世界で最も小さい世界最高水準の福祉国家」

デンマークのイエローカードから、40年来の宿題を思い出しました。

 

1980年代半ばに東南アジアにあるインドシナ難民キャンプで一緒に働いた方々の中に、デンマークからの女性医師がいました。

当時で50代ぐらいでしょうか、日本ではまだ女性医師が少なくさらに海外医療支援のような市民運動に関わるのは奇特な人に思われていた時代に海外支援に参加する女性医師は皆無だったので、印象に残りました。

そして1980年代の日本の病院では医師というのは近づき難い存在の感覚があったたので、親しくなることもなく、「デンマークはどんな国ですか」と尋ねることもなくそのままになっていました。

 

ただ、当時おしゃれなパン屋さんが増え始めて、「デニッシュ」の国だということは知っていました。

 

「保険証と身分証明書にもなるこんなカードだったら欲しいのに」と思うデンマーク、どんな国なのでしょう。

 

 

*1968年には導入されていた「個人番号」*

 

WikipediaのCPR番号の「経緯」を読むと、1968年にはすでに個人番号が導入され、1970年に中央納税管理システム、そして1977年には個人医療記録システムが導入されたとあります。

 

これだけ読むと「ああ、やはり日本は遅れていたのか」と思ってしまいそうですが、あの国鉄の発券システムのマルスがすでに1960年には誕生していたことを考えると、技術的なことではないのかもしれませんね。

 

1980年代はまだ国連機関でもテレックスと電話しかなかったのに、その後わずか10年であっという間に家庭にまでパソコンが普及したのは、1960年代以前から社会のシステムを少しずつ数字で表現し始めたからだったのでしょうか。

 

「私という存在を出生時から個人番号で表す」

90年代に家庭でのデジタル製品のためのインフラ整備が急速に進んだ日本だというのに、その発想を実現しにくかった理由の一つが住民票以外に戸籍制度が重複していることだったり、名前や地名の漢字や読み方の複雑さかもしれません。

漢字一文字を変えるにも、馴染んできた思い入れがありそうですしね。

 

 

*福祉といっても目指す方向が違っていくる*

 

「北欧では」の理想ばかりではないと思いつつ、Wikipediaのデンマークの以下の箇所を読むと「ああすごい」と思いますね。

市民の生活満足度は世界最高クラスで、2014年国連世界幸福度報告では幸福度第1位であった。様々な角度からのウェルビーイングは最高レベルであり、世界で最も社会流動性が高く、世界で最も腐敗が少なく、男女の賃金差はOECD中最小であった。2024年の世界平和度指数では8位、積極的平和指数では2位にランクインしている。社会はグローバル化とデジタル化が進んでおり、それは国民生活と企業活動において多大な利益をもたらしている。

デンマークは欧州において最もデジタル化された社会である。

 

なんでも「日本は遅れている」と言いたい人は「やっぱり」と思うかもしれないし、この文章の直前に書かれている「ノルディックモデルの高福祉高負担国家であり、OECD各国中で最も個人所得税の高い国」を引き合いに出して「もっと増税が必要」という人もいるかもしれません。

 

でも搾り取られていくのに、日本では理想的な福祉が思い描けないのはどうしてなのだろうと思いながらさらに読み進めていくと、「福祉国家モデル」からWikipedia「福祉国家論」の「福祉レジーム論」に行きつきました。

 

社会民主主義」のスウェーデンデンマークなどでは「租税軽減」が犠牲となる代わりに、「階層化」は低くそして「脱家族化」は高くなり、主たる福祉供給源は「政府」になります。

つまり、所得を公平に分配し個人個人を基準にした福祉制度を政府が実現させるという方向ですね。

 

それに対して「自由主義」では、「所得平等」が犠牲となり「階層化」は高く、そして脱家族化は中くらい、そして「主たる福祉供給源」は「市場」だそうです。

これが今の自民党や経済界が求める福祉の方向性であり、新しい資本主義の「福祉」モデルなのだと合点がいきました。

 

「デジタル化」と言っても、基本にあるどんな社会を求めているかが違えば大きく違ってきますね。

 

デンマークの歴史やこの「福祉レジーム論」の行間をさらに読み込むにはまだまだ知らないことだらけですが、頭の整理になりました。

 

 

 

*おまけ*

私としては北欧型の福祉国家がいいなと思うけれど、高額の社会保険料を徴収してもそれはどこへいっちゃったんだろうと思うような不透明感や、「福祉目的税」だと増税したのに滑っと違うことに使い、政党の名前や政治の方向性をしれっと変えていくような政治家のもとでは怖くて「高負担」にすることは支持できないですね。

「世界で最も腐敗が少なく」、それはどうしてだろう。

また宿題ができました。

 

 

 

 

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