米のあれこれ 111 「コメ先物取引が本格的スタート」の結果では?

またお米の価格に関するニュースがここ1週間ほど増えました。ニュースのコメント欄にはいかに大変かとか「原因説」がたくさん書き込まれる中で、印象としては、私が知りたい「米の先物取引再開がどう影響しているか」についての意見は本当にわずかでした。

さらに「『コメの投機的な買い占め説』は胡散臭い」という記事まで出る始末。

 

昨年の最も大きな変化は米の先物取引が再開したことではないかと素人の私でも気になるのに、なんだかその話題を避けているような。

 

「お米を先物取引で扱う」のはどういうことなのか、その歴史までよくわかる記事がすでに昨年書かれていたことを見つけました。

頭の整理のために書き写しておきます。

 

コメ値上がりのなか 堂島コメ先物本格スタート

(関西 NEWS WEB、NHK、2024年8月20日

 

大阪の堂島取引所でコメの先物取引が本格的にスタートし、20日、式典が開かれました。

猛暑による天候不順などでコメの値上がりが続く中、取引所のトップは、取引を活発化させ、価格の透明性の向上につなげたい考えを示しました。

コメの先物取引は、江戸時代に大阪で始まり、1939年にいったん廃止されたあと、堂島取引所の前身の組織が2011年に試験的に再開させましたが、取引が低調で去年(2023年)、再び廃止となっていました

取り引きを復活させるため、市場を開設する国の認可を受けたことから、20日大阪市内のホテルて本格的なスタートを祝う式典が開かれました。

この中で、堂島取引所の有我渉社長は、「日々値段が見えるので、生産者や消費者などに参照してもらってうまく使ってもらいたい」と述べ、取り引きを活発化させ、価格の透明性の向上につなげたい考えを示しました。

新たに始まる取引、「堂島コメ平均」では、現物の受け渡しは行わず、主食のコメの平均価格に基づく指数を対象に売り買いが行われ、今回は、大豆やとうもろこしなどの先物取引を行う業者のほか、ネット証券大手のSBI証券が取り引きに参加します。主食用のコメの価格をめぐっては、JAなどの集荷業者と、卸売業者の間の相対で決まるのが主流となっていて、価格決定の透明性が不十分だという指摘が上がっています。

猛暑による天候不順などで需給が引き締まり、コメの価格が上昇する中、活発な取り引きが行われ、価格の新たな目安としての役割を果たせるか、注目されます。

 

SBIホールディングス北尾吉孝社長は】

堂島取引所の大株主で、傘下のSBI証券が取引に参加するSBIホールディングス北尾吉孝社長は、「コメの価格は生産者側と卸売業者の相対で決めているため透明性が重要だったが、ベンチマークとして活用できるので、透明性に資するものだと思う。さらなる取り引きの活性化に期待したい」と述べました。

 

【コメ先物とは】

通常のコメの取り引きは、JAグループや農家の「生産者」が小売や卸売などの「流通業者」と個別に価格を交渉して売買されるため価格決定の透明性が不十分だという指摘もあります。

これに対して先物取引の市場には「生産者」と「流通業者」に加えて、「投資家」も参加できるため、取り引きの参加者が増え、透明性が高まる事が見込まれます

また、先物取引は将来の収入の目安になることで安定した経営につながるほか、消費者にとっても今後の価格の指標になる事が期待されています。

去年の猛暑の影響で供給が減ったことなどを背景にコメの価格が上昇する中、先物取引を行うことで、価格変動によるリスクを避ける事ができるメリットも指摘されています。

(強調は引用者による)

 

2011年に72年ぶりに再開されたコメ取り引きが低調で2023年に再び廃止されたのはなぜだろう。

それなのに翌年には「取り引きを活発化させ、価格の透明性の向上」のために復活したのは何故だろう。

「投資家が参加すると透明性が高まる」とか「先物取引によって価格変動によるリスクを避ける」というのは、どのような失敗に基づく再発防止策なのだろう。

 

 

この半世紀ほどで、「インシデントを認め報告する、失敗から学び事故を防ぐ」というリスクマネージメントの根幹科学的というのは「わからないことはわからない」とする姿勢であることが浸透し始めた業界からみると、なんだか狐につままれたような説明ですね。

 

昨年7月20日の日本農業経済新聞の記事の最後の箇所が、とても正確な「預言」だったと思えてきました。

投機的な値動きを防ぐため、値幅や取引件数の制限があるが、先物取引が実態とかい離して乱高下すれば、米の需給調整にも影響を与えかねない。国は監視・監督を怠ってはならない。

 

「予言」ではなく「預言」ですね。

 

農林水産大臣が「胃に穴があくぐらい悩んだ」(2025年2月14日)備蓄米放出の決定のようですが、「なぜ低調だったコメ先物取引を再開させたのか」、その発案と決済者の間には何があるのか有耶無耶にしてはいけないのではないかと思いました。

 

 

 

 

*追記*

この記事を公開する直前の6:57にこんなニュースがありました。

あまりの政府の対応のつじつまの合わなさの記録として、書き留めておきましょう。

「令和のコメ騒動」石破総理の"備蓄米21万トン”放出の思惑とは

「海外にも売れる」「参議院選に向けて動いた」

(2025年2月18日6:57、ABEMATIMES)

 

 2024年から続くコメ不足により価格高騰が続く中、政府は備蓄米21万トンの放出を決定した。これまでに主食用として備蓄米が放出されたのは東日本大震災熊本地震という震災時の緊急対応2回のみだ。しかし今回は「流通の円滑化」という史上初の目的だ。

 政府は毎年20万トンの米を買い入れ、全国300あまりの倉庫におよそ100万トンのコメを備蓄。100万トンとは国内需要の2ヶ月弱に相当する量で、利用されずに5年経ったコメは資料用などに使われるという。

 コシヒカリ5kgの小売り価格表を見ると、去年と比べ2000円近くも高騰している。対策を講じてこなかった農林水産省がようやく重たい腰をあげ、放出を決定した「この半年余りの期間に『なんでもっと早く判断できなかったんだ』という批判は甘んじて受け止める。しかし他に手がない」(江藤拓農水大臣)

 政治ジャーナリストの青山和弘氏によると、今回の決定は農水大臣も務めた石破茂総理の強い後押しがあったという。「石破総理は、昔からいわゆる農水族とは一線を画す改革論者。農家はいいコメを作れば、海外にも売れるんだから競争すべきと、補助金を出して生産量を減らす減反政策にも反対の立場。また今回、夏の参議院選挙への影響も考えて、コメの値段を下げるために動いたとの見方もある」(青山氏)

 さらに青山氏は、石破総理への取材の中で「お米がこれだけ高騰しているので、国民生活の安定のために対応しろと農水省にはきつく指示した」「私はかねて食料安全保障の観点からも減反政策は転換すべきだと言ってきた。今回のコメ価格高騰は日本の農業政策を転換するチャンスかもしれない」「世界で食料不足が叫ばれているのに日本だけが税金を使って休耕田を作っているのはナンセンスだ」との回答を得たという。

「そろそろ減反政策で生産量を調整するよりも、作っていく時代。そして良い日本のお米を作れば、いま日本食ブームでもあるし海外に輸出もできるのではないか。石破総理も、今まで日本はお米を海外に輸出しようとちゃんと考えてこなかったのではないか。もっと売り込んだらいいと言っていた」(青山氏)

 また、石破総理は参議院選への影響も考えたとして「昔のように業界団体をがっちり固めれば自民党は常に勝ち続けるという時代ではなくなってきている。やはり消費者が『お米の価格が安定している』『おいしいお米がいつまでも普通に食べられる日本だ』と思えるように作るというのは、選挙のことを考えれば当たり前今頃、それに気づいているようでは遅いぞという感じもする」と解説。

今回のような価格の乱高下がこれからも何回も起こる農政で良いのかどうか。食糧安全保障の観点から、日本に何かあった時に食べ物がなくなってしまったら、国民の命を守ることができない。そういうことを考えると、今までの農政を転換していく、もっとお米を作ってもらって競争させながら、余ったら農家の人たちが困らないように保障する方向に変えていくきっかけなのかもしれない」と指摘した。

 

「しかし他に手がない」と失敗の原因を考えることを放棄して、その結果の対策が「おいしい日本の米を輸出していく」ですか?

もう何が何だかですよね。

国民(奴隷)の給与も低いままで円安を利用して輸出に力を入れているからか海苔など日常的な食べ物に手が届かなくなっているというのに、今度は主食の米もですか?

 

ここでもまた「先物取引再開」は滑っとはぐらかされ、農水省の人たちや農家の人たちへの補助金の問題にすり替えている。

「選挙のため」に何かが蠢いていることを隠そうとすることは見え見えですね。

党名や政策まで簡単に変えてしまう人たちの集まりですからね。

 

 

 

 

 

 

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