以前はニュースを見聞きしても政治の動きは全くといってわからなかったのに、あの日以来、何がつじつまのあうことなのかがだいぶ読めてきました。
ただ、昨年の夏以来お米はどこへ行ったのか、なぜこんなに高騰しているのかについては、何か「裏」があるようででもよくわかないままでしたが、ひょんなことからパズルがとけるような感覚があります。
ここ1~2ヶ月でしょうか、ニュースサイトのコメント欄に日本社会が30年前に変節し始めた雰囲気を生み出した人の名前が挙げられるようになりました。
さすがにお米までは関係ないだろうと思っていたのですが、正体現れたりと思う記事が出ました。
竹中氏は米国の1~3月期の実質GDP(国内総生産)は年率換算で前期比0.3%減と、3年ぶりにマイナス成長を記録したことに触れ「アメリカがやろうとしている関税とか、典型的な保護主義というのが、やりすぎるとマズいぞということが、トランプ氏もわからざるを得ない状況になっている」と指摘し、「日本は自由貿易を掲げる立場にあり、アメリカ車も米も自由貿易か、保護貿易かの観点に立ち、考える必要があると思う」と自論を展開した。
「米というのは日本に残された最後の保護貿易なんですよ」。日本の農地の面積は20年で約1割減、農業従事者約5割減している。このデータを元に「これは何を意味しているか?1個(家)あたりの面積は約2倍になっている。チャンスがあるが、ここに株式会社が入ってこれないので、スマート経営ができていない。ここでいろんな改革をすれば、日本のお米はもっともっと生産でき、減反をなくせば、米を輸出できる。輸出できるようにしておくのが食料安全保障です」と規制緩和を主張した。
「竹中平蔵『米というのは日本に残された最後の保護貿易』規制緩和を主張」
(2025年5月4日、日刊スポーツより一部引用、強調は引用者による)
3年前から始まっていた米の輸出政策と補助、そして2023年の堂島米先物取引の再々開、こういう思想だったのかとつながりました。
先物取引の「市場の安定」というのは、おそらく国内のことではなくて輸出価格の安定でそれに投機する人のため、あるいは輸入する人のためでしょうか。
30年来、だてに社会の不安定さを感じながら生きてきたわけではないので、このコメントが最も腑に落ちるものでした。
保護貿易といい郵政民営化で郵便料金は上がり、サービスの質も落ちた。農協が中抜きをしているという農協の既得権益を煽る世論を作り、農協を解体、民営化するのが竹中平蔵の目的ではないか。農林中金や共済の持つ150兆円の資産を外資に売り渡す為に。ゆうちょや簡保の時と同じ構造。4月19日の日本農業新聞によるとJAはこの米高騰もほとんど上乗せしていないというデータもある。
昨年から米を先物取引にした堂島取引所の筆頭株主のSBIの社外取締役に竹中平蔵がいる。これに伴う投機的な動きが米価格を釣り上げているのではないか。
農業の大規模化も結局は肥料、農薬、種、燃料と外資が儲かる為、竹中平蔵も大規模化を推進している。これらの輸入資材も経済成長を続ける諸外国と30年間停滞する日本経済との経済格差で高騰し続けている。大規模化しても設備投資を回収する事なんてできない。また気候変動や異常気象でまともに収穫できない。
同じ失敗を繰り返してはいけないですからね。
*自由貿易主義の時代の魔法*
私が生まれた1960年代はそれまで高価で贅沢品だったコーヒーやチョコレートそしてバナナなどが身近な食べ物になった時代でしたから、「自由化」を肯定的に受け止めてしまったのではないかと思い返しています。
これからは「自由貿易の時代であり、日本の農産物も競争に勝てなければいけない」かのような。
国内の産業の保護政策は「自由」を損なう悪しきものかのような風潮だったので、いまだに「補助金」と聞くとちょっと身構えるところがあります。
ところが、この米騒動のおかげで自由貿易を進めていた他の国々は農業への補助が大きいことを知りました。そりゃあそうですよね。
その筆頭だったアメリカが手のひらを返しているのですから、「自由貿易」ってなんだったのだろう。
そうか「自由」の意味が異なるのかもしれませんね。
と思ったら、こんなコメントが。
自由貿易が世界の富を増大させるというのは、リカードの定理に基づいている。しかしこの理論は、それによって増える失業などは全く考慮されていない。また食料自給率なども考慮していない。竹中平蔵は、供給量が需要を生み出すというセーの法則に基づく主流派経済学の学者だ。作れば売れるなんてことはないことは常識で考えればわかる。主流派経済学は、今や他の理論に一切耳をかさない宗教と言われていてアメリカでは全く評価されていない。それを知らない日本人に今や化石と化した経済学を大上段から言説するのが竹中平蔵氏。もう引退の時期はとっくに過ぎている。米を自由化すれば食料自給率が下がるのは必然。それをわかっていて彼は発言している。
検索したらリカードの等価定理がありましたが、目が滑ってよくわかりません。
ただ、食べ物に付加価値をつけて競争力を持たせ高い輸送費をかけてまで他の国で売ることで、国産の海苔や国産のりんごなど日常の食べ物がとても高くなり手が出なくなり、反対に外国から輸入した食品が安くなる逆転した状況になりました。
お米をその二の舞にしてはいけない、国内で消費できるように、生産者の方も安定して安心して生産し続ける方法が他にあるのではないかと思うことが増えました。
経済学というのは自分が主張した仮説が社会に与える影響について責任をどうやってとるのだろう、そんな疑問がまた大きくなりました。
そして、なんでいつまでもこの人が重用されるのだろうと思うのですが、上場セレモニーに参加した共同代表とその党のガバナンス委員になったというあたりがつながってきました。
まあ、この方の意見が記事になるたびに膨大な反論のコメントが書き込まれて、そのほとんどがつじつまのあう意見だという印象なので勉強になりますけどね。
おかげで、「保護貿易とか自由貿易」に対しての自分の中の呪縛がとけたのでした。
*おまけ*
日本の農業のすごさを実感したのが2011年3月の東日本大震災のときでした。数日は店頭から野菜が全く消えて絶望的になっていたところ次第に全国各地から野菜が入荷されるようになり、なんとすごい社会だったのだろうと感動しました。
国内で大規模な自然災害が頻発したり反対に豊作だと価格が暴落してしまう状況でも、ずっと野菜を食べ続けられるのは「野菜産業の健全な発展と国民消費生活の安定を目的とした野菜法」と産地リレーがあり頑張って作っても50回の農業の世界から色とりどりの種類も豊富な野菜の恩恵を受けています。
そのシステムに「搾取」があってはいけないし、自国の農業を守ることは大事で当然ですね。
冒頭の記事のコメント欄からもそういう現実の声が聞こえてきたようで、この国はまだ大丈夫だと勇気づけられました。
「鵺(ぬえ)のような」まとめはこちら。
「お米を投棄的に取り扱わないために」はこちら。
骨太のまとめはこちら。
失敗とかリスクについてのまとめはこちら。
あの日(2022年7月8日)から考えたことのまとめはこちら。
合わせて「米のあれこれ」もどうぞ。