行間を読む 240 「世界初の農協」とGHQの農地改革で生まれた制度のその後

一昨日500円台で買えていたパックご飯が、昨日はいきなり750円台になりました。

6月には物価がまた上がるというニュースはありましたが、辛いですね。

 

 

せっかく農相自身が「価格破壊」「熱いマーケットに水をさす」(5/27)と原因についてのヒントを発言し、備蓄米放出は為替介入のようなものと見抜いている人もいるのに、そこを掘り下げて追求しないメディアはなんなのだろう。

知りたいのは大臣の一挙一動ではなく、いきなりお米が高くなったのはなぜかそしてその再発防止は何か、そして誰がそれを求めているのか、なのですけれど。

メディアは最初からわかっているのに切り込まないのだろうな。

 

 

ある時点からネットニュースのコメント欄にはJA批判が書き込まれるようになったけれど、むしろJAについて現実的なコメントもたくさん読めるようになったのでとても勉強になります。

ここ数年、あちこちの用水路を訪ねて見る干拓地から小さな谷津まで整然と田畑が広がる風景と、大災害や天候不順でも全国各地からお米や野菜が届けられるシステムとつじつまがあいますからね。

 

農業や土木技術の歴史を訪ね歩いておいて本当に良かった。そうでなければ私自身が、「JAは何をやっているのか」と知りもしないで世の中の雰囲気に加担してしまったかもしれません。

ほんと、怖いのは人間ですからね。

現実の社会はもう少し落ち着いているような気もしますが、怖いのは選挙の流れまで変えるネットの世界ですね。

 

 

*「世界初の農業協同組合」*

 

子どもの頃からあった「農協」そして「JA」は、空気のように日本の農業には当たり前の存在に感じていました。

標準的な医療を格安に誰もが受けられる日本の国民皆保険制度と同じように。

 

そういえばいまだにWikipediaの「農業協同組合」さえ読んでいなかったと思ったら、初めから目から鱗の話がありました。

江戸時代後期、農村指導者の大原幽学が下総国香取郡長部村(現・千葉県旭市長部)一帯で興した「先祖株組合」が、世界初の農業協同組合とされる。一方、近代的意味における農業協同組合の前進は、明治時代に作られた産業組合や帝国農会にさかのぼる。

Wikipedia「農協協同組合」「沿革」)

 

旭市、2018年に訪ねた椿の海干拓と大利根用水の地ですね。

 

 

*「農地改革で生まれた戦後自作農を守るための制度」*

 

 

産業組合は、ドイツ帝国の産業および経済組合法をもとに、1900年(明治33年)に産業組合法が制定された。産業組合は、信用、販売、購買、利用の4種の組合が認められ、農業による組合員の制限はなかった。

(強調は引用者による)

明治時代というのは普遍性を求めた時代のような印象ですが、産業組合の中に生き続ける普遍性とは何でしょうか。

 

そして戦前の「農会」の時代を経て、GHQにより現在のJAの前身が進められたようです。

戦後の農地改革の一環として、GHQは農地改革で生まれた戦後自作農を守るための制度として、自主的で自立的な欧米型の農業協同組合の創設を日本政府に指示した。しかし、当時の食糧行政は深刻な食糧難の中で、食料を統制・管理する必要があった農林省は集落を単位とする農家組合等を構成員とする農協制度が発足した。

(強調は引用者による)

タンパク質が足りない時代からお米も栄養にも不自由しない時代へ、爆発的に増えた人口のお腹を満たし誰もが経済的に豊さを求められる時代へと急激に変化する中で、日本の人に日本の米や農産物を食べてもらいたいと思って開墾し用水をひき品種を改良して農業を続けてこられた方々のおかげですね。

 

理想と現実の葛藤と批判はどの分野にもあり、その葛藤の中で変化していかざるを得ないですね。

戦後農協は、欧米型の自主的、自立的協同組合の理念を掲げながらも、実際には食糧統制、農業統制のための行政の下請け組織的傾向がある。さらに、戦後農協の性格を「協同組合」、「農政下請け機関」、「圧力団体」の複合体と見る見解もある。

 

お米にも栄養にも不自由しない時代へになったと書いてまさか2ヶ月後には棚から米がなくなり、最初は農家の方々の大変さを思う意見が多かったのに、いつの間にかJAへしかも改革ではなく解体しろと矛先が向けられました。

怖い変化ですね。

 

 

アメリカの理想へ向けた改革が日本で実現し、そしてアメリカの思想によって壊される*

 

農業協同組合の歴史、なんだか医療や社会保障に似ていますね。

 

アメリカの理想へ向けた改革だった社会保険制度や国民皆保険制度はむしろ日本でうまく定着したというのに、本国ではうまくいかずに後退し、むしろ他の国でその普遍性と平等性が実現していることが興味深いものです。

 

そしてうまくいっている制度を壊すのは、その本国の方からきた思想でしょうか。

2014年5月22日、規制改革会議は、「全国農業協同組合中央会JA全中)が、法律に基づいて農協の経営指導などを行う」今の制度を廃止する農協改革案を提案した。

しかし、議員からは「安易に組織をいじれば生産者の不安をあおるだけ」、「あくまで自らで行う改革が基本だ」と、反対の声が相次いだ。一方、一部の議員からは「農協にもっと経営能力のある人材を登用すべき」とか「農協の販売力の強化は必要だ」という意見も出た。その為、自民党は、6月上旬を目標に目処に、生産者の所得を増やすための案をまとめる。なお、規制改革会議の農協(JA)改革案は、TPP交渉をにらんでの考えとされている。竹中平蔵は「外国人労働者を入れて農業を再生したい」という提案を拾い上げ、実現に向けて意欲を示している。その後2019年までにJA全中は一般社団法人に、都道府県農業協同組合中央会農業協同組合連合会に移行した。

(強調は引用者による)

 

 

それから10年、やはりこの方向が息を吹き返そうとしているのでしょう。

ここ30~40年ほどの流れを見ると、「価格破壊」は国民のためというよりは「国民が築いてきた普遍性・平等性のある方向性」をぶっ壊すつもりなのだろうなとつじつまがあってきました。

それを求めているのは誰でしょうか。

 

 

*おまけ*

突如として短期間で備蓄米を運び入れて精米、袋詰めして販売するようにと命じられた「現場」の人は大変だったことでしょう。

しかも精米すると1割減る玄米を「5kg2000円」で販売すれば、企業側の損失ですしね。

「小さな政府」を主張する側の方が往々にして強権的な振る舞いが多く、こういうことを平気で通常業務に上乗せさせて現場を疲弊させますね。

 

レジ袋の有料化とかなんとかカードと健康保険証廃止とか、なんとか給付金とか、消費税をとり過ぎたことへの減税のはずが1回ポッキリの4万円のための膨大な事務作業とか。

問題は何か、改善策は何か、そしてその効果あるいは失敗点はどうかと考えることなく押し付けて、本当の目的は時間をかけて人が築いてきたものを壊すことという、「いつの間にか地上最悪の植物がはびこっていた」かのように見える政治の世界ですね。

 

日々怠ることなく、みんなで協力して草むしりをすることは大事ですね。

良い草か悪い草かどうか、見た目に誤魔化されずに取り除くのはほんと難しいですけれど。

 

 

 

 

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