初めて「骨太の方針」を認識したのは、「助産師による正常分娩時の会陰切開、縫合を解禁」させようという動きが規制改革会議によって話し合われていると知った時でした。
青天の霹靂で、周囲の助産師でそれを知る人はいませんでした。
そして数年後には、現場の私たちが必要とする「産後ケア」とは全く異なり、「早期退院推進」のための産後ケアセンターが経済諮問会議により進められました。
産後のお母さんがゆっくり体を休められて、赤ちゃんや上のお子さんの世話に慣れていけるように。
そういう現実の問題提起からとはほどとおい「膨らみ続ける社会保障費は、聖域とせず見直す」という思想から、以って非なる「産後ケア」が広がってしまいました。
*骨太って何の意味だろう*
「骨太の方針」って何だろう、「骨太」ってどういう意味なのだろうと疑問に思いながらも漠然としすぎていました。
そうだ、Wikipediaでさえまだ読んでいなかったと骨太の方針を見て、愕然としました。
2001年、当時の宮澤喜一財務相が内閣府に設置された経済財政諮問会議の議論を「骨太」と表現したことから、骨太の方針と呼ばれるようになった。基本策を諮問会議で、具体策を財務省で決めることから、骨や軸がしっかりしている様を名前に込めたとされる。
骨太の方針というのは大きな傘みたいなもんだ。総論をしっかり抑えてその下に各省の改革プログラムを組み込んでいく。そうすればみんないやでも改革案を考えざるを得なくなる
(強調は引用者による)
漠然としすぎてわからないのも当然の、個人の感覚的なものから生まれた言葉でした。
対象を観察し、「何かがある、何か変だ」という疑問から症例(ケース)報告をしていき、Reviewとなり大規模スタディを積み重ねることによって、ニーズを社会化する、その専門分野の議論を経て社会のニーズを実現していくのが政治だと思っていました。
ところが骨太の方針というのは、思想が先に総論になっていて結論ありきですね。
しかもなんでも経済諮問会議が基本策を決めちゃうなんて。
だから政治家と国民の生活がすれ違い、今の混乱と格差社会の閉塞感になっているのだと朧げながら見えてきました。
*「骨太」に女性版ができていた*
ということで、かれこれ20年近く「骨太」についてアンテナを張っていたつもりでしたが、最近になって「女性版骨太の方針」なるものまであったことを知り愕然としています。
女性の起業、全国で支援=地方離れ防止、政府「骨太」原案
(時事通信ニュース、2025年6月2日)
政府は2日、男女共同参画会議(議長・林芳正官房長官)を首相官邸で開き、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2025」(女性版骨太の方針)の原案をまとめた。女性の地方離れを防ぐため、全国各地で女性の起業を支援する方針を明記。地方自治体が設置する「男女共同参画センター」を拠点に、セミナーや出前講座を開催する。
月内に開く男女共同参画推進本部(本部長・石破茂首相)などの合同会議で正式決定する。
原案では、東京一極集中が加速する中で「女性にも選ばれる地方の実現が急務」と明記。地方に女性の就職先が少ないことが背景にあるとして、地域での起業に向けた相談体制の拡充、経済団体や金融機関などとのネットワーク構築を進める。女性起業家に対するハラスメント防止、人材のマッチングにも取り組む。
政府は2026年度中に独立行政法人「男女共同参画機構」を新設する方針。同機構で全国のセンターに派遣する講師のデータベースを整備し、自治体への交付金による財政支援も行う考えだ。
原案には、国会で議論されている選択的夫婦別姓制度に関し「引き続き旧制の通称使用拡大やその周知に取り組む」と記述。国会の議論や司法判断を踏まえ「さらなる検討を進める」も記した。
一方、政府は女性のデジタルスキル習得の促進にむけ、今後3年間に集中的に取り組む支援策を盛り込んだ新たな「女性デジタル人材育成プラン」の原案もまとめた。受講料の一部を補助する「教育訓練給付金制度」の対象に人工知能(AI)に関する講座などを加える。
高額の授業料を払い国家資格を得た看護・保育・介護あるいは美容師といった女性の職業の中では古くからの実業(じつごう)なのに、低賃金で過酷な労働はそのままだし、地域の長年続いてきた病院や施設が閉鎖していくのも何とかしてくださるといいのですけれどね。
あるいは交通費の地域差とか、生活上でもっと改善されれば戻りたいと思う人もいることでしょう。
低賃金だと、公共交通が少ない地域では女性が自立するのを妨げますからね。
*「まったなし」のはずが「それじゃあない」感*
「女性版骨太の方針2025」に向けた提言が公開されています。
はじめに
これまで、国をあげて「地方創生」に取り組んできたところであるが、東京一極集中の大きな流れが止まらず、人口減少が続いている。地方においては、少子化の流れが止まらず。人口減少が続いている。このような状況の中、女性に選ばれる地域づくりに取り組むことは、待ったなしの課題である。
女性に選ばれる地域であるためには、女性が、男性と対等な地域社会の構成員として尊重され、生き生きと自分らしく生きがいを持ってその地域で生活していけることが必要であるが、女性活躍・男女共同参画の状況は自治体ごとに差異が見られ、また、根強い固定的性差別役割分担意識の存在も指摘されているところである。こういった状況下においては、それぞれの自治体において、実情に応じた、女性に寄り添ったきめ細やかな施策を支える全国的な体制の構築と国による丁寧な支援の存在が不可欠である。(以下略)
「女性に選ばれる地域」というのもなんか変な日本語ですが、「生き生きと自分らしく生きがいを持って」とか「寄り添った」とかふわりとした表現を使うのが骨太っぽいなあと感じました。
出席すると勉強した気分になる研修会やその資格商売を潤したり、その資格は経済的に自立するのに役立つだろうか。
移住婚の女性に60万とか婚活イベントに参加すると交通費支給とか、「生き生きと自分らしく生がいを持って」という割にはやはり「根強い固定的性別役割意識の存在」を感じます。
そういえば「男性版骨太の方針」もあるのかなと検索したら、見つけられませんでした。
男性だって高学歴なのにハシゴを外され、経済的に困窮している人がたくさんいらっしゃいますよね。あるいはこれから人生経験を積むはずの年代なのに、無職だったり一生刑務所が確定するような犯罪に巻き込まれたり。
骨太って何だろう。
骨太の呪縛がない政治家の皆さんが増えないと、希望は持てなさそうな気がしてきました。
*おまけ*
2007年ごろにはすでに「分娩について食い込んできていた骨太」のはずですが、なぜ今さら「女性版」なんてつけるのでしょう。
やはり、もともと女性の問題を考えていたわけではなく、たまたま女性関連の案が積み上げられてきたから作りました、というようにしか見えないですね。
だから方向がズレるのだと。
「行間を読む」まとめはこちら。
骨太についてのまとめはこちら。
失敗とかリスクについてのまとめはこちら。