「聖域なき見直し」と聞くと身構えるのですが、とうとうお米にもその言葉が登場しました。
小泉氏「聖域」に口先介入強める 卵やキャベツ例に
(KYODO、2025年6月6日)
小泉進次郎農相が、コメの緊急輸入に踏み込んだ。6日の閣議後記者会見で「ほかの産品が足りない時は当然やっている」と指摘し、卵やキャベツを例に挙げた。コメの輸入は日本政府が守ってきた「聖域」だが、小泉氏は「価格高騰を何とかしなければ、コメ離れがどんどん進みかねない」とも述べ、市場への「口先介入」を強めた。
小泉氏は、これまでお「マーケットに対し強烈にメッセージを伝えなければ、米価のトレンドは変わらない」と発信。今回はコメに「タブー視がある」とけん制した。(以下略)
この場合の「聖域」とは、コメの緊急輸入のことを指すのでしょうか。
であれば、すでに1993年の米不足の時に緊急輸入をしているので、「聖域」とまでは言えないのではないかと矛盾を感じました。
1993年は冷夏によって収穫量が減って米不足になったことが明確だったので、タイから米を緊急輸入したのでした。
そして助けた側のタイ国内では貧困者に餓死者がでたというのに、日本ではまずいと捨てているニュースの記憶が、「コメ緊急輸入」とともによみがえります。
コメ輸入自由化
日本国政府は、関税及び貿易に関する一般協定の「ウルグアイ・ラウンド」で世界各国と外交交渉中であった。従前より日本のコメ農家保護のために、国是として「一粒たりとも輸入させない」とコメの全面輸入禁止を方針としていた。しかしながら米不足により、世界からコメの緊急輸入を受け入れざるを得なかった。
あの緊急輸入のおかげで混乱は翌年でおさまった記憶があるので、昨年お米が棚からなくなった時に生産量が需要に対して足りなくて価格が高騰しているのであれば、なぜ緊急輸入しないのだろうと思っていました。
世界の市場を混乱させるようですが、その手法はすでに行われているので「聖域」ではなかったですからね。
その後も米はあるのかないのか、つじつまがあわない説明に煙に巻かれている状態が続き、混乱はさらに大きくなった感じですね。
*投機を仄めかす表現が増えた*
突然、農相が交代すると「熱いマーケットに水をさす」と備蓄米をまるで為替介入のような表現になりました。
ああ、やはり「コメがないのではなく、あるところにはある」わけで、政府も投機的な動きが原因と把握できたのかと思ったら、6月5日にはまた「小泉農相、米価格高騰のなぜを検証」という話に戻ってしまいました。
すでに含みを持たせた言い方をしているのになんだかすっきりしないと思っていると、「生産調整見直し、増産の方向へ」と言い、「根拠となる今回の原因を検証」と言った翌日にすぐ方針が決まるのか不思議。
まずは原因検索、分析し、再発防止策の順ですよね。
投機的な動きで、これから毎年こんなお米の価格の乱高下に生活を混乱させられるのはたまりませんからね。
「口先介入」って言うぐらいですから、原因はあれですね。政府はわかっているのだと確信しました。
となると、再発防止策は「お米の価格に投機的な動きを許さない」になり、それが「聖域なき」だと思うけれど、きっと骨太の人たちの考えることは違いそうですね。やれやれ。
*基本となる食糧の輸入には慎重に、そして投機での価格乱高下はさせない、それが政治*
さて冒頭のニュースのコメント欄を読んでいたら、一晩で3000以上のコメントがついていました。まだ全部は読みきれていないのですが、いろいろな見方がありますね。勉強になります。
その中でお二人のエキスパートの方のコメントと、キャベツ農家の方のコメントを記録しておきます。
小泉農相が米の緊急輸入を示唆すれば、実際に米の緊急輸入を行わずとも、それが市場への口先介入となって米の価格引き下げに一定の効果を発揮する可能性はあるだろう。
最近のコメの価格高騰は投機的な要因によるところが大きい。
農相がコメの価格引き下げに断固とした姿勢を示すことで投機的な業者が先行きの米価格下落を予想するようになれば、投機筋の過度な買い占め・売り渋り行為が是正され、米の価格も落ち着きを取り戻してくるのではないか。
(門倉貴史氏。強調は引用者による)
コメ流通量の指標である民間在庫は回復傾向であり、6月末の民間在庫も適正水準を超過する見込みだ。備蓄米が出回れば追加放出も輸入米も必要ないとも言える状況だ。なのにコメを聖域と名指しし言葉を切り取り現実の課題と乖離した農政改革案を提示する。随意契約で財務省と輸入米を扱うという密約を交わしたとしか思えないほどこだわっている。コメ農家の減少が進む中で輸入米を増やせば、近い将来令和のコメ騒動以上の手痛いしっぺ返しが食卓を襲う可能性がある。その発言はまさに今の価格だけを見た口先介入と言えるだろう。
(松平尚也氏。強調は引用者による)
貯蓄から投資へとか金融リテラシーをつけなさいとか政府からお勧めされている昨今、ぜひこのコメと投機について政府から教えていただけたら幸いです。
そして「食べ物が足りないなら輸入すればいいじゃない」の答えとして記録しておきましょう。
キャベツの例を挙げているようですが、その輸入のせいで今農家が苦しんでいます。
不足していたのは昨年の秋からですが、春以降は数量が回復していたのに今現在も輸入が続いてしまっており市場が飽和状態になり価格が例年よりも大幅に下落していて農家は赤字状態です。
理由は輸入品を入れようとすると契約上、長期に渡って輸入せざるを得なくなるからです。
要は足もとを見られて、必要以上に買わないと売らないよってことです。
これが輸入することでその場凌ぎにはなりますが、生産者には強烈な副作用になるので劇薬なのです。
みなさん物がなければ輸入すればいいと簡単にいいますが、こういう現実があることを知ってください。
現場の声はほんとうに勉強になります。
さてコメの聖域とは何か。見失わないように日々勉強しなければ。
もしかして備蓄米在庫一掃セールの様相を呈してきた備蓄米の制度もぶっ壊す、それも「聖域」だったら怖いですね。
*おまけ*
それにしても他国の混乱(米不足)に乗じて、関税問題を突きつけてくる「自由貿易」ってなんだか嫌ですね。
「米のあれこれ」まとめはこちら。
お米を投棄的に扱わないためにのまとめはこちら。
失敗とかリスクについてのまとめはこちら。
骨太についてのまとめはこちら。