また寄り道して間があいてしまいましたが、3月中旬の散歩の記録の続きです。
散歩の1日目は潤井川からの水がこの地域の農業と工業を支えてきた用水路をたどり、富士川左岸のかつて上流から集落が流されてきたことが信じられない田園地帯を歩きました。
土砂降りになったので早々にホテルに入りましたが、薄暮からずっと、刻々と変化する富士山の姿と新幹線を眺めました。
18時台の静岡のテレビはどの局も県内の話題が多く充実していました。
翌朝、5時台からまた富士山を眺め始めました。山頂は雲の中ですが、富士市から見える富士山は多少天候が悪いときでも常に広々と裾野のあたりが見えているのが、すっかり雲の中になる東側とは違う印象ですね。そして6時19分には頂上が見え始め、24分に出発した東海道新幹線と富士山という美しい一枚が撮れました。
*企業からの『案件』*
今日も一日、富士川と富士市の水の歴史を歩こうと思っていると、高校生が「企業からの『案件』で仕事紹介のビデオを作りました」というニュースが聞こえてきました。
この地域の朝のテレビは、全国版のニュースしかないようです。
たしかに、どんな仕事なのかあまり知られていない点をうまく伝えられていたので、これも私たちの頃にはなかった中学生の職場体験が生かされているのかもしれませんね。
ただ、そのインタビューに答えていた高校生の口から「案件」という言葉がさらっと出てきたことに、ちょっと違和感を感じたのでした。
私の仕事では使わない言葉だし、いつ頃からそういう言葉が広がりだしたのだろう、それを高校生が使っているのは少し背伸びしたいお年頃だからか、それとも「教育」の賜物なのか。
なんだかちょっと浦島太郎の気分になったのでした。
*「案件」のあれこれ*
「案件」は「問題となっている事柄」「訴訟になっている箇条」(デジタル大辞泉)が基本的な意味のようですが、もう少し意味が違いそうです。
「実用日本語表現辞典」にはこんな説明がありました。
案件とは、取り扱いの対象となっている事柄のことである。現在まさに対処すべき問題として直面している事柄、検討・審議・調査などの対象となっている事柄を指す意味合いが色濃い。
案件の類語は、「対処して解決すべき事柄」という意味では「課題」「問題」などの語が挙げられる。そこまでの意味合いを含まずに「事項」「事例」「例の件」といった程度の意味合いで「案件」の語が用いられる場合もままある。
私が高校生だったら、「例の件」ぐらいかな。
その続きがありました。
英語では「案件」はおおむねmatterやissueあるいはtopicなどの単語で表現される。
ビジネスシーンでは、業務として扱われる事項全般を「案件」と呼び得るが、とりわけ、対外的な営業・商談の単位を「案件」と呼ぶことが多い。営業方面の「案件」の例としては、たとえば「案件紹介」や「案件管理」「案件リスト」ならびに「案件化」「案件創出」といった表現が用いられる。
(強調は引用者による)
「案件化」とか「案件創出」となると、感覚的に私にはなじまないなあと思いました。
そうそう、この「ビジネスシーン」という言葉もなんだかゾクっとするのはなんだろう。
もう少し検索していたら、「『案件』てどういう意味?ネット言葉や一般的な意味を簡単にご紹介」(Domani)という記事がありました。
それによると「インスタ案件・インスタグラム(Instagram)に投稿したくなる被写体を指す」とか「激アツ案件・思わず興奮してしまうような出来事のことです」「胸アツ案件・胸が熱くなるような出来事」なんて使い方もあるようです。
件の高校生の場合は、ビジネスシーンの使い方でしょうか。
教育の中に「スタートアップ」とか「起業」が組み込まれて、「公立高校はコストが高い」なんて言われる時代の影響かもしれませんね。
と思っていると、アメリカでは「教育省を廃止」という、これまた驚きのニュースが。
果たして日本の高校は実業かそれとも虚業のどちらへ向かっているでしょうか。
そんなことを考えていたら、「22歳、配信で生活。人から250万円の借金。『〇〇通貨』で数百万円の詐欺にあった」という「話題」が聞こえてきて、さらに別のニュースでは「暗号資産は法定通貨ではありません」という言葉が聞こえてきました。
ああ。
*おまけ*
なんだか誰も彼もがお金儲けの時代だなあと思っていると、テレビでは経団連会長の「賃上げ確定の会見」がありました。
席につく会長の後ろには、着席時に椅子を押すスタッフがスタンバイしていました。
こういうことが当たり前の感覚の人たちが経済界なのだろうなと、妙に気になったのでした。
さあ、気持ちを切り替えて二日目の散歩に出かけましょう。
「シュールな光景」まとめはこちら。
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失敗とかリスクについてのまとめはこちら。