いよいよ文化用水・木島用水を歩きます。まずは、黒川の取水堰をみることにしましょう。
東武日光線新鹿沼駅から東へ150mほど歩くと国道293号線の交差点があり、その北側50mほどの二叉路の角に小さなお社がありました。
そのすぐ後ろには木陰の涼しそうなベンチのある小さな公園もあり、なんだか交差点だというのにホッとする場所です。
中央地区 史跡名所 二荒山(ふたあらさん)(鳥居跡)
鹿沼の由来を記録した「鹿沼町古記録によると、日光開山の勝道上人が、日光山守護のために、四天王を表す松、杉、梅、紅葉の4本を植えた都あり、また、『押原推移録』によると、源頼朝が日光山に神領66郷を寄進したとき、神領の入り口に当たる所に「遠鳥居」を建てたといわれ、その跡に大欅があったが、昭和22年9月台風で倒壊、伐採された。その後、日光二荒山神社から勧進された「二荒山神社」が建立された。(鳥居跡町)
「神領」とか「遠鳥居」とか、知らない言葉がたくさんあることを知るこの頃です。
「昭和22年9月の台風」はカスリーン台風ですね。
そしてこのあたりを、日光街道の脇街道が通っていたようです。
地図を眺めると、JR鹿沼駅と東武日光線新鹿沼駅が黒川を挟むようにあります。どちらの駅が市の中心地に近いのだろうと思っていたのですが、こちら側のほうが旧市街なのかもしれません。
国道より東側の道へと進むと、暗渠になった側溝から勢いの良い水音が聞こえてきます。これも文化用水の一部でしょうか。
通りにはあちこちに蔵が残り、交差点には石のベンチがあり石材店もいくつかありました。石の産業があったのでしょうか。沿線に立派な蔵がありましたからね。
東へと緩やかに上り坂を歩き、はなみずき通りに出ました。向かいに「市民情報センター」や昔の倉庫のようなおしゃれな建物が見えています。あのあたりを用水が通っているようですが、そのまま北へ進みます。
御成橋のあたりで取水堰が見えるかと期待したのですが、高い河岸のようで近寄れず、そのまま途中の水路から歩くことにしました。人が近寄りがたい場所というのは、水路へと取水する場所にはふさわしい地形なのでしょう。
*まるで小川のような美しい水路が流れる街*
地図にはない小さな流れが忽然と始まっています。それに沿って住宅地を歩いていると、取水堰からの流れにぶつかりました。
幅3mほどでしょうか、想像より大きなゆったりとした流れで、その先が二手に分かれています。
どちらへ進むか悩みましたが、右手に行ってみました。片側は石積みですが、片側は草むらが続き、まるで自然な小川のような流れが住宅地の間を蛇行したり直角に曲がったりして続いています。
途中、黒川の堤防沿いも歩いてみましたが、左岸のJRが走っている側の方がやや高台でそのまま山に続き、こちらの右岸側の方が田畑を作るのには適した地形のように見えました。
黒川は急流をイメージしていましたが、河川敷もゆったりとした美しい流れでした。
このどこかにあの幻想的な風景があるのでしょうか。
再び「小川」のような水路沿いに戻りました。家のすぐそばを小さな美しい川が流れている雰囲気に、半世紀以上前に過ごした地域のあちこちに湧水とその小さな流れがあった風景を懐かしく思い出しました。
こうして今、水を訪ね歩いている原点のような地域でした。
さて水路の先に大きな木が茂る場所が見えてきました。そこがショッピングモールで、その手前で二本の水路が合流して「小川」から水量の多い水路になりました。
その水路沿いを歩けるように遊歩道になり、途中東屋があります。
ショッピングモールの裏手だというのに、美しく落ち着いた場所です。
しばらく休憩しました。
新緑と水音と、さわやかな風に木々の揺れる音と。なんと豊な時間でしょう。
よく手入れされた遊歩道で、ゴミもありません。
学校帰りの子どもたちや買い物から帰る近所の方も、心なしかゆっくりと歩いているように見えます。
地図で見つけた用水路ですが、大正解でした。
*「せせらぎ水路」*
鹿沼市の水路で検索すると、この遊歩道の名前が「せせらぎ水路」だとわかりました。
黒川の清流を取り入れた木島堀は、かつて周辺の貴重な農業用水ろであるとともに、流域住民の生活に密着し大いに利用されてきたが、生活雑排水が流れ込むようになると下水路と化し、ごみが投棄され、どぶ川となりかけていた。
しかし、近年は下水道の整備が進み、清流が取り戻されつつある。このことをきっかけに、いこいと潤いのある都市空間を形成するため、鹿沼市が堀の一部を「せせらぎ水路」として復活させた。
現在では、鹿沼市の下水終末処理場の放流水を利用して繁殖したホタルを放虫しており、夏季にはホタルの飛び交う姿が見られるほどとなっている。
川がきれいになり始めた頃から魔法のような時代を過ごしてきたのだと思う場所に、また出会うことができました。
かれこれ40年ほど、なぜ玉川上水に惹かれたのか、そしてなぜあちこちの水路を訪ね歩くようになったのか。
漠然としたものの形が少しずつはっきりしてきたような気がしてきました。
さあ、鹿沼のこの水路はまだまだ続きます。
歩くのが楽しみになってきました。
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