散歩の2日目、ほんと遠出のホテルでは熟睡できます。
おかげで仕事の日に比べて血圧も下がります。
やはり65歳近くになって働くというのは、加齢には太刀打ちできないですからね。「70台なんて皆さんはお若いですから、もっと働いて人生を謳歌しましょう(税金も社会保険もたくさん納め続けてね)」という政治家が現れないように、祈るしかないですね。
コツコツと堅実に生きてきた人が、ごく普通の衣食住を確保できる心配がなく早々に引退できる世の中だといいのに。
まあ、平均寿命が半世紀で20歳以上のびて、高齢者の定義まで変わるという急激に変化する時代の試行錯誤が続くので仕方ないのですけれどね。
テレビをつけると奈良の風景が目に入りました。ああ、また奈良に行きたい、奈良は飾らない美しさだなあと思ってカーテンを開けると、西側の山々が折り重なりその向こうに日光の残雪の山の見える美しい風景でした。そして眼下には水鏡の田んぼ。
そうでした、美しい鹿沼の幻想的な場所を訪ねるための遠出でした。
さあ、あの偶然テレビで見た鹿沼の風景は見つかるでしょうか。そして楽しみにしていた食事は今日こそ食べることができるでしょうか。
*コミュティバスでぐるりと鹿沼をまわる*
あの風景を見ることができそうと見当をつけたのは、東武日光線新鹿沼駅から西へ2kmほどのところを流れる大芦川流域です。
せっかくなので、新鹿沼駅まで行くコミュニティバスに乗ってみることにしました。黒川を挟んで新鹿沼駅のちょうど反対側にあるJR日光線鹿沼駅に立ち寄ってぐるりと市内を回るようです。
ホテルを出て遠く日光の山々を眺めながら歩くと、古民家風のおしゃれなグループホームがあり、畑の向こうには本当の豪農のような古民家もあります。
日本各地、ほんとうに落ち着いた風景があるものだと思いながら歩いていると、畑のそばに日露戦争、満州事変の何か小さな石碑があります。戦没者の慰霊碑だろうかとよくみると、「徴馬勝善神」と彫られていました。
「勝善神(しょうぜんしん)」と読むようで、必勝を願う意味かと思ったら「馬の守護神」だそうです。
徴用された馬に対しての想い、「大戦の好況」とは違って当時はこのような形でしか表現できなかったのかもしれませんね。
バス停の前の田んぼは田おこし直後で、そばにパイプラインの給水栓がありました。
微高地なのでこのパイプラインが通らなければ水田は難しい地域だったかもしれないと思いながら、バスに乗りました。
立派な蔵が多い街を通り、2000年代ぐらいに開発されたような街路樹の美しい住宅地を抜け、ところどころ畑もあって新旧がほどよく混ざった街の印象です。
予想よりは起伏が少ない道でJR鹿沼駅に立ち寄り、そこからはぐんぐんと下り坂を降りて黒川を渡り、右岸の新鹿沼駅へと30分ほどの車窓の散歩が終わりました。
コミュニティバスなので一律200円ぐらいかと思っていたら、鹿沼では距離によって350円か500円のようです。500円はちょっと高いなあとドキドキしていたら、ギリギリ350円でした。
*関東一の清流大芦川の田んぼ*
新鹿沼駅の前の小籔川は水も水草も美しい川で、魚がたくさんいました。
県道14号沿いにしばらく歩いたあと、日向辻交差点まではまたコミュニティバスを利用しましたが、ここは200円でした。
日向辻バス停の前には、水鏡の田んぼが広がり、その向こうに低い丘陵地帯が続いています。
ここからも日光の山が見えます。美しい田んぼの風景です。
おそらくこの流域にあの幻想的な風景がありそうです。
あちこちから豊かな水の音が聞こえてきます。田植え直後や水鏡の田んぼの中の道を歩くのはほんとうに楽しいものです。
緩やかに下りながら、もう一つ楽しいことが待っています。
前日に食べられなかったものに出会えるお店があるはずです。
田んぼに囲まれた場所にありました。車もあるので開店準備中でしょうか。しばらく待ってみましたが、物音もひとけも感じられないので泣く泣く歩き始めました。
気を取り直しましょう。
道端には野蒜や白詰草が美しく、水鏡の田んぼでは鴨が遊んでいます。さわやかな川風は大芦川からでしょうか。
大芦川にかかる橋の上に立ってみました。
折り重なる山々から流れてくる川、そしてきっと6月ごろで一面緑の田んぼだったらあの幻想的な風景はやはりこの流域だと確信しました。
満足して、県道337号線を歩いて駅へ戻ることにしました。
交通量は多いのですが、歩道が農道なのでゆったりと歩けます。
山を眺め、田んぼを眺め、元気な水路を眺め、幸せな散歩です。
ただ駅のある地区との間に低い山が横たわっているので、最後にそこを登り切らなければなりません。ふと足元をみると、濃いタチツボスミレが咲いていました。
ここまで一度も見ていないのに、ほんと、スミレは忽然と群生する不思議な花です。
おかげで、「もしかしたらこの先にもっと咲いているかも」という期待が背中を押してくれて、坂道を上り駅に到達することができました。
そうそう、大芦川を検索したら「関東一の清流」と書かれていました。
もう少し上流の渓流釣りで使われる枕詞のようですが、田んぼや流域の風景も美しい川でした。
「散歩をする」まとめはこちら。
骨太についてのまとめはこちら。