今年5月の自分の所属政党が答えるべき問いを農水省に答えさせて言質をとったかのような国会答弁でしたが、2005年にはすでに国会で米の先物取引の議論があったことを知りました。
どんな議論だったのだろう、当時から国会議員だったり政府参考人だった人たちは当然その流れを知っているはずなのになぜか昨年からの混乱ではこの話題がないのはなぜでしょう。
検索していたら、そのタイトルずばり「米の先物取引に係る国会議事録(抜粋)」がありました。農林水産省の資料でした。
いつこの資料がどんな目的で農林水産省内で作られたのかわからないのですが、覚書として記録しておきましょう。
引用文の下線は原文のままです。
*推進する側の意見*
○後藤(斎)委員
もう一点この中から関連で質問させていただきますが、大正時代からストップをしておりますいわゆる米の先物取引、市場に上場しながらこの制度設計を、見直せとは私は言いません、ある意味では、この三十何年間の蓄積の中で、今現実の部分でやるべき姿だというふうにも私は思いますが、やはりまだまだ足りないと思うんです。
これは農水省の方にいただいた資料で、先物取引を行うメリット、デメリットというのをいただきました。
まず、メリット。公正な価格形成と指標価格の提供。これは今、自主流通米機構でもやっている機能も兼ねています。価格の平準化。地域、時間的な価格のひずみを是正します。価格変動に対する保険のつなぎ、リスクヘッジをしますというふうなことがメリット。デメリットは、投機性の可能性、投機的取引の可能性、その場合、需給や価格の安定に支障を来す。
これも実際、デメリットと言っている投機性とか需給と価格の安定に支障を来たすというのは、もう来しているんです。需要はもっともっと減っていくわけです。米穀年度でも十万トンずつくらい減ってくような計画を、農水省が基本計画をつくられているわけです。価格についても下げどまりはしていないわけです。むしろ、JAS法で魚沼のコシの袋を限定したということで、魚沼コシが上がっている。あとは、先ほど同僚議員がお話しをしたように下がっている、下げどまらない。このデメリットはもう関係ないわけですよ、ある意味では。
ある意味では省令か政令で対応すればいいということですから、大臣、確かにこの融資制度というものが必要なのかもしれませんが、新たな支援法人をつくって基金を造成するよりも、上場するだけで、上場と言うんでしょうね、先物取引にできますよということをすれば、それは対応ができ、このメリットのかなりの部分が生きてくると思うんですが、いかがでしょうか。
○亀井国務大臣
大変重要なご指摘でございます。ただ、もう少しこの辺、国民の理解やあるいは関係者のやはりいろいろな意見を伺うことも必要なことであるのではなかろうか。将来的な問題として、重要な問題として考えていくべき課題、私はこのように思います。
○後藤(斎)委員
将来の課題はというと、将来というのが何年後かわかりませんが、上場するときのできない理由というのは何かあるんですか。条件が何かあるんでしょうか。
○石原政府参考人
上場できない理由というのは特段ないと思います。
この問題につきましては、生産調整に関する研究会、これの最終とりまとめの中には入っておりませんけれども、昨年の六月に中間とりまとめということが出されております。この中では生産調整や国境措置を行なっている現状では導入すべきではない。要するに、この生産調整の問題あるいは国境措置の問題、この辺が何らかの改革がなされればあり得るというような趣旨のことかと思います。将来において、関係業者の価格変動リスクを軽減させる手段としては、その導入の可能性を排除すべきでないと取りまとめがされております。
これは、正直言いまして、研究会の場では卸の方から、要するに銀行からお金を借りるときに、銀行の方から将来のリスクヘッジの道もないんですかということをよく言われるということを言われたわけでございますけれども、他方で、農業団体の方は、まだそれは機が熟していないんじゃないか、昔のといいますか、きょうもここで議論が出ましたけれども、米が投機の対象として扱われるんじゃないか、そういうご意見もありまして、結果的に先ほど申し上げましたような取りまとめがなされたということでございます。
今回の食糧法の改正の中では、こうした考え方に基づきまして、未来永劫に先物取引を否定はしない。導入の検討に当たっては、取引関係者あるいは国という段階を踏んだチェックを行う仕組み、そういうものを入れたということでございまして、すぐとはいかないけれども、先ほど大臣が申し上げましたように、あくまで将来の課題としては位置付けたということであろうかと思います。そのようにご理解いただければと思っています。
○後藤(斎)委員
長官や大臣のご指摘、よくお考えはわかります。わかるものの、自主流通米だけでこの十年間見ても単価が30%減少し、先ほどご指摘をしたように、農業、米の粗生産額というのでしょうかも四割近く減少しているというもので、農業者の立場からいえば、むしろ投機性というものが、投機というのが何なのか私はイメージがよくわかりませんが、大正時代や江戸時代のようにそこへどうこう殺到するという部分はないという中で私は積極的に考えていただきたいと思います。
(強調は引用者による)
2003年のこの「第156回国会 農林水産委員会」の議事録全文を読むと、当時はまだまだ「米あまり」が問題で、「豊作になったらどうするか」「過剰米をどうするか」その中での「農家のもっと米を作りたい」に対して生産調整をどうするかという議論のようです。
後藤斎(ひとし)氏はこの当時は民主党、そして維新などを経て、先の参議院選挙で国民民主党から当選したようです。
○津村啓介分科員
関連しましてもう一つだけですが、これはむしろ提案に近い質問なんですけれども、生産者サイドのリスクヘッジとして、量ではなくてむしろ価格の問題なんですが、商品先物市場についてどうお考えを持っているか。あまり時間もありませんので簡単で結構なんですが、方向づけについて伺いたいと思います。
少しだけ私の問題意識を申し上げますと、そもそも日本の金融が昨今のモデルとしておりますのは欧米アングロサクソンの金融システムなわけですが、アメリカの金融市場というのがシカゴでの穀物の先物取引やそれに派生するデリバティブ商品の発達を背景にこうした発展を遂げてきたという歴史がございます。こうしたことを考えますと、商品先物取引というのは潜在的なニーズが大きいわけです。
残念ながら、現在日本では、商品先物取引と言いますと、極めて投機性が高い商品だということで過度に忌避されている嫌いがあるかなと実は私は思っておるんですけれども、この市場の育成も含めて、経済産業省ともまたがる課題とは聞いておりますが、ただ、天候に左右されやすい農産物の特性を考えて安定的な取り組みをするという点では先ほどの質問と一貫したものでありますので、方向だけでも結構です、将来の可能性でも結構ですので、お聞かせください。
○亀井国務大臣
農産物の価格変動リスク回避等の重要な役割をこの商品先物市場は持つ、こう思います。しかし、いろいろなかなか難しい課題もございまして、いろいろ先物取引をめぐります紛争の問題ですとか、先物取引のリスクを適正に管理し、信頼性の高い商品先物市場の基盤を確固たるものにする必要がある、私はこう思っております。特に、一番日本の農産物の中でも米の問題があるわけでありまして、このことにつきましても、関係の方々でいろいろ勉強をされていることも私も承知をし、私自身、米の卸売の仕事をしてきた経験がありますので、そういう認識は十分持っておるわけです。
ただ、いろいろ難しい問題もまだありますし、今回、経済産業省、商品取扱所制度の改正、こういうことに取り組まれる、このようにも承知をしておるわけでありまして、将来の問題として十分私どもも検討してまいりたい、このように考えております。
津村啓介氏は当時は民主党議員、現在は立憲民主党の衆議院議員のようです。
○広野ただし君
それと、やはり上場商品というものを拡大していく、上場しやすくしていくということもビッグバンの一つの大事なことではないかと思いますが、(中略)農水省の方では、大物は、昔、江戸時代は米だったわけですけれども、この食糧、食管がどんどん自由化をされてきたということに合わせて米をどういうふうに考えておられるのか。この点について、両省に伺いたいと思います。
○副大臣(市川一郎君)
現在、各商品取引所でいろいろ検討されている中で、米とかそれからバスケット野菜というようなところで主要野菜等についての検討も進められておりますが、特にこの一、二年、米に関する勉強会、各取引所でやっておられますけれども、雰囲気として直ちにそれが適用される状況ではないわけでございますが、私ども、米政策改革大綱を議論しておりました際に、これを、米を商品先物市場で取り扱うような形で解決していくのは一つの有力な手段ではないかという主張が党内でも強く出されたのも事実でございます。ただ一方で、米につきましては、今我が国の本当に主要な主食でございますから、その価格の安定とかそういったようなことを考えますとかなり問題が大きいのではないかという意見もございまして、一応国内的には今意見が分かれているというところでございます。
我々農林水産省といたしましては、先生ご指摘のとおり、昔は米の取引というのはあったわけでございますが、この先物市場における米の扱いについては現時点では慎重に取り扱っていく必要があるというふうに考えております。
○広野ただし君
江戸の、堂島でそれこそ世界に先駆けて、当時、米というのは今の経済に占める割合からいうと、もうとんでもないぐらい大きいものだったと思います。それを町衆がやって、また天候によって左右されるわけですから、そういうことに対して大変な知恵を絞ってやってきたわけですね。私はこれは日本の大変な先人の知恵であって、この米が今自由化をされてきているわけですから、私はやっぱり思い切ってその条件整備といいますか、環境整備をやっていったらいいんじゃないかと。それはアメリカでも大豆、穀物という大物をちゃんとやってできているわけですからね。ですから、そういうことによって公正な価格形成、あるいはまたリスクヘッジというものもできるわけで、これは是非前向きに検討をしてもらう。そうすることが、工業品において石油というものも取り上げるときにいろんな問題がありました。取り上げることによって大きくマーケットが開けたわけですね。しかもそのときは、石油のメーカーなんかも誠に慎重だったんです。だけれども、世界の石油市場が大きく動きますから、そういうことに合わせてある決断を踏まえてやってきた。それによって大きくまた開けてきているということだろうと思いますので、是非前向きな検討をお願いをしたいと思います。
堂島のコメ取引の歴史については、2000年代の先物取引を勧める記事でよく見かけますね。
ほんとうに「さきがけた」ものだったのか、また宿題ができました。
この議員さんは1943年(昭和18)生まれのようですから、生まれる25年前の1918年の米騒動やその時代の雰囲気をどのようにとらえていらっしゃったのでしょう。
さて、この資料を読んで、2003年から2004年ごろにはすでに米先物取引についてあちこちで勉強会や議論があり、農水省内にもメリット・デメリットをまとめた資料があったことを知りました。
ちょうど第2次小泉内閣の頃ですが、保護貿易から自由貿易への波が吹き荒れていたのでしょうか。
もしかしたら米の先物取引に賛成した議員さんたちは自民党とか民主党とか政党に関係なく、「これからは自由貿易の時代だ」「自分たちは時代の先端を行っている」と思っていた方々だったのかもしれませんね、「米というのは日本の残された最後の保護貿易」という強い思いで。
ちょっと当時の雰囲気が思い出されてきました。
当時はまさかその主導した国から手のひらを返されるとは思っていなかったことでしょう。
それにしても国会議事録を読むと、「国会議員の専門性とはなんだろう」と考えてしまいますね。
こういうやり方で、制度を変えさせられ、晴天の霹靂で現場は右往左往させられてきたのだと、分野は違っても思うのでした。
これからは時間もあることだし、じっくり国会議事録を読むようにしましょう。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。
「お米を投機的に扱わないために」まとめはこちら。
骨太についてのまとめはこちら。
失敗とかリスクについてのまとめはこちら。