目から鱗 22 「儲ける」と「稼ぐ」

ここ最近、政治家の方々の口から「稼げる農業」とか聞こえてきて、なんだか違うなあと思っていました。

 

労働生産性という言葉は、天候や災害あるいは昨今の投機的な売買に影響される一次産業や、「儲けることが目的ではない」医療・介護・福祉やインフラを支える産業には馴染まない言葉ですからね。

1990年代ごろから「コストを考えろ」という意味が、いつの間にか自分たちで稼げと放り投げられた医療現場で「医療従事者が稼ぐというのはどういう意味か」と考えているうちに、自由診療がもてはやされるようになってきました。

 

 

*儲けるのは何のため?*

 

そういえば、「儲ける」という字は面白い組み合わせですね。

「信じる」と「者」の組み合わせかと思ってググったら、AIが教えてくれました。

「儲ける」の語源は?

「儲ける」の語源は、漢字の「儲」に由来し、「人」と「諸(諸々、用意する)」を組みわせたもので、「人が諸々のものを備蓄する」という意味から来ているとする説が有力です。

具体的には、緊急事態に備えて食料などを蓄えるニュアンスが、現在の「利益を得る」という意味につながったと考えられます

・「人」+「諸」:「諸」には「設ける」という意味があり、人々が色々なもの(食料など)を蓄える様子を表していました。

・具体的な例:昔の人が冬を越すために薪を「諸々」蓄えていたことに由来するという説もあります。

・現在の意味への変化:そのように「用意して備蓄する」というニュアンスが、「利益を得て蓄える」という意味で使われるようになりました。

AIの回答には間違いが含まれている場合があります。金融に関するアドバイスについては、専門家にご相談ください

(強調は引用者による)

 

なんと、「人々が諸々のものを準備する」という意味から来ていたのですね。

まあ「人偏」ですからね。

 

そして、まさに失敗やリスクそして生活の中から生まれた字ですね。

でも、「緊急事態に備えて食料などを蓄えるというニュアンスが、現在の『利益を得る』という意味につながったと考えられます」という解釈は何だかつじつまが合わないように感じますね。

 

 

*「稼ぐ」*

 

では「稼ぐ」のAIの答えはと読んでみました。

「稼ぐ」とは、収入を得るための具体的な方法や、仕事、副業を指します。収入を得る方法は多岐に渡り、フリマアプリで不用品を売る、ポイ活、アルバイト、データ入力、Webライティング、スキルシェア、ハンドメイド販売など、自身のスキルや時間、目標額に合わせて、様々な方法があります。また、「稼ぐ」には、家族に食料をもたらす、地域に貢献するなど、より広い意味合いが含まれることもあります

(強調は引用者による)

 

フリマアプリ、ポイ活、Webライティング、データー入力とか、いかにも時代の流れを感じる言葉ですが、何だかステマや詐欺などのリスクに巻き込まれそうな「稼ぎ方」ですねえ。

 

そもそも、人の生活とは何か。それさえわかっていないのに、それを言語化するのは無理なので、「AI」の表現を信じ込まないようにすることは大事ですね。

 

そういえば今年の「女性版骨太の方針」に「教育訓練給付金制度の対象に人工知能(AI)に関する講座などを加える」としていたけれど、AIなどに煙にまかれないような対策を教えてくれるのかな。

それとも、「モノ」「カネ」「情報資源」と同列にされた「ヒト(国民)」ですから、AIにこき使われるようになるのかしら。

 

*「儲ける」と「稼ぐ」の本質から考えると*

 

私自身はあまり「儲ける」「稼ぐ」という言葉は好きではないのですが、「人が諸々を備蓄する」「緊急時に備えて食料などを蓄える」あるいは「家族に食料をもたらす、地域に貢献するなど、より広い意味合いが含まれる」のであれば、それは政治・経済の普遍的なことに近いような気がしてきました。

 

おそらく終戦直後の生きる希望や夢が欠けていた混乱の時代から、それでも生きるために「諸々の物を準備し」て経済を立て直し始めた頃に私は生まれたのだろうと思います。

 

1980年代に働き始めた頃は希望の持てる社会にいつの間にかなって、「不治の病者(治る見込みのない病人)も棄てかえりみざるは人道に反す」という普遍性が当たり前の医療になり、「満足のいく医療」をみんなで追求する雰囲気を経験できたのは幸いでした。

それが救命救急につながり、あるいは高齢者の医療や介護に対応する底力になったのだろうな、と。

 

ところが社会が落ち着くとみんなで築き上げた社会の豊かさを自分のものと勘違いした偉そうにする人が出てきて、みんなで豊かになることを嫌う人がまるで「社会の富を稼いだのは自分の力だ」と言い張るようになるのを目の当たりにして、また希望の持てない時代になりました。

 

 

さて、最近の政治家の皆さんの真意は如何に。

国民に投機のリスクを背負わせて、誰かが富と権力を手にする社会はご勘弁。

農林水産業も医療や福祉といった社会のインフラの分野も、投機ではそれを担う人が育たないと思うので。

 

虚業と実業についての葛藤は当分続きそうです。

 

 

 

 

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