記録のあれこれ 231 「農は国の基なり」

「自由民主」の断末魔の叫びのようなコップの中の嵐のような茶番劇から、最後は対立候補と近づこうとした維新が寝返ったかのようなどんでん返しに、倫理も何も通用しない厚顔無恥な政治成金に牛耳られる嫌な時代がまだ続くのかと暗澹たる思いですが、まあ国民は生活し続けなければいけないですからね。

 

ばったりお米のニュースが少なくなったと思ったら、今年は増産できて不足の心配はなくなり「コメ安定に道筋をつけた」(産経新聞、10月21日)と、次の大臣ポストへ移っていきました。

えっ?

それはその人が農水大臣になる前から、今年の春先にすでに米農家の方々が足りないなら増産しなければと自主的に動いたからですよね?

まだまだお米の価格に、生活は大混乱なのですけれど。

 

次の農林水産大臣はどんな人だろう、そのニュースを待っていました。

 

ニュースラインには「市場に任せる」「お米クーポン」という文字が並びました。

お米を投機性のある商品にするために、「菅(すが)案件」だったコメ先物取引本上場「強い農業」という恐怖政治のような農政の時代、そしてその政策を押した大阪府知事とか、ああ、そこにつながってしまうのかと、ちょっと絶望感の気分でした。大阪や東京でお米クーポン配ってましたから、あれもお米の流通にどう影響したのだろう。

 

ニュースで伝えられる部分では、なんだか今後のお米の政策がぼんやりしていて、これからどうなるのかなと検索しているうちに就任記者会見概要を見つけました。

それを読むと、内容は今までの日本の農業の歴史を踏まえた内容で、ニュースで切り取られているものとも違って筋が通っているような印象でした。

 

農林水産大臣に対してまた炎上しそうな雰囲気になっていますが、やはり原本に当たるのは大事ですね。

 

 

*「鈴木農林水産大臣就任記者会見概要」*

 

今後のために「鈴木農林水産大臣就任記者会見概要」(令和7年10月22日)の最初の部分を記録しておきましょう。

(原文では改行なしです)

 

農林水産大臣就任にあたって

 

皆さんお集まりをいただきまして、どうもありがとうございます。このたび、農林水産大臣を拝命いたしました、鈴木憲和です。約20年前、私は農林水産省に入省しました。その私が今日この場にこういう形で立たせていただけるということ、また改めて地元の応援をしてくださる皆さんに感謝を申し上げますとともに、今朝は、鳥インフルエンザの省内の対策本部からスタートいたしました。大変な緊張感を持って取り組んでいただきたいというふうに思いますので、どうかメディアの皆さんにも忌憚のないご意見やご質問をいただければというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

2050年、世界人口が現在の82億人から97億人に増大をいたします。同時に世界は、地球温暖化という生産現場にとっては、リスク要因が増えていくことになります。また、国際情勢は、紛争や戦争が当たり前のように起こる状態になってきており、そうした不安定な状況の中で、農林水産省の使命は、何と言っても、日本の食料安全保障を確立をしていくということ。そして国民の皆様に食料を安定的に供給をするということ。そして何よりも、生産現場の皆さんに、先を見通せる、そういった希望をもたらすということ、このことに尽きているというふうに考えております

「農は国の基なり」、この言葉を私自身胸に刻みながら、農林水産省の全国にいる2万人の職員の皆さんと、なるべく多く現場に伺って、現場を第一に、現場の皆さんの感覚を持って、農林水産行政にあたっていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

私が入省いたしました20年前、研修でお世話になった福島県須賀川市に、須田さんという生産者の方がいました。彼から言われた言葉が、私は心に刺さりました。「日本の農政はコロコロコロコロ変わる。猫の目農政だ。生産者は、農林水産省と逆のことをやると蔵が建つとこの辺ではいうんだよ。」この言葉が、私にとっての政治を志す原点となりました。私はいつか生産現場の皆さんから見て、先の見える、そういう農政を実現したい、このように考えております。

特に現在、令和9年度以降の水田政策の見直しを進めていますが、米づくりというのは、1年で1回しか収穫ができません。コロコロコロコロ方針が変わっては、生産現場の皆さんは対応することができません。需要に応じた生産、これが何よりも原則であり、基本であるというふうに考えております。その上で安心して先の見通せる農政、これを実現してまいります。さらに、中山間地域、条件不利な地域、全国の耕作地面せきの437万ヘクタールのうち約4割を占めております。そうした地域であっても、営農して、稼いで、暮らしていける、そういった農政を展開してまいりたいというふうに考えております。

このために食料・農業・農村基本計画に基づき、農地の大区画化・集約化、共同利用施設の更新、スマート農業、輸出産地の育成を集中的かつ計画的に推進をし、農業の構造転換を集中的に推し進め、農業の生産性向上や農林水産物の付加価値の向上、これによる収益力の向上の後押しをしてまいりたいというふうに考えております。また、総理からご指示をいただきました通り、激甚化する自然災害、気候変動の影響に左右されずに、安定的な生産力を確保できるよう、新たなテクノロジーを活用した完全閉鎖型の植物工場や、陸上養殖施設等への投資拡大を進めてまいります。これらの技術は、たとえば植物工場であれば、空調の設備というのがあります。空調の技術は、日本企業が世界のトップランナーです。農林水産業の世界に留まらず、日本の産業全体の技術の枠が詰まったものが、こうした新たなテクノロジーの食料の生産現場だと考えております。これらの技術が日本の稼ぐ力を高め、世界のスタンダードとなっていく。そんな食の未来を作っていきたいというふうに考えております。このために、農と食の分野で、必ず守り抜かなければならない、先ほどの中山間地域のような、そう言った守るべき分野と、攻めるべき分野を明確にした戦略を策定をいたします

そして輸出をはじめとした世界における日本の食のマーケットを作ることで、結果として農業の生産基盤を維持し、日本の国力の底上げと、食料自給率の向上、食料安全保障の確保、これにつなげてまいりたいというふうに考えております。

森林・林業分野について申し上げます。1,000万haの人工林の6割を超える部分が、今現在、利用期を迎えている状況です。「伐って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用を進めるため、小規模で分散した森林の集積・集約化を図るとともに、ICTを活用した高性能林業機械の導入などにより、林業経営体を支援をしていきます。また、木材需要の拡大を図るため、構想木造ビルの建設など、CLTを活用した新たな国産材の利用も推進をしてまいります。

水産分野について申し上げます。日本近海の海水温の上昇が世界平均の2倍を超えている。こうした激変をする海洋環境に適用していくために、海水温の自動観測を通じた水源資源の調査・評価の強化、北太平洋地域のサンマ漁船がアカイカ漁を行うような漁獲対象魚種の変化に対応した、新たな操業形態への転換、労働環境の改善と収益性の向上を両立させる新たな漁船の導入など、未来の漁業を担う経営体・人を確保し、水産業強靭化の実装に向けた大胆な変革を進めてまいります。

最後に、我が国の農林水産業・食品産業は、国民に食料を安定的に供給する役割を果たすのみならず、地域経済を支えております。我が国の農林水産業・食品産業が次の世代によりよい形で確実に継承され、若者が夢と希望を持って取り組める、そういう世界になるよう、2万人の農林水産省職員が現場に出て、現場の皆さんとともに汗を流して、現場の皆さんの本音に基づく農林水産行政の実現に全力を尽くしてまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。

(改行と強調は引用者による)

 

 

*ようやく実業の農政へ戻る*

 

すんなりとこの内容が頭に入ってきたのは、あちこちの田んぼにある石碑や農林水産省やその基盤整備をする国土交通省の国土を造ってきた歴史を伝える資料の内容と重なるからだと思いました。

 

「市場」「輸出」「稼ぐ」と言っても、ここ30年ほどの、利鞘を稼ぐ意味とは違うのだと思います。

「需要に応じた生産」も、巧妙な計算や企ては良しとせず、世の中の過不足を補い、需要と供給を調節するという意味であって、これまで長い間、農業に携わる方々が葛藤しながら試行錯誤された「生産調整」ということでしょうか。

 

20年前、ちょうどお米が投機的に扱われそうになった頃ですね。

「(農政が)コロコロコロコロ変わる」、その耳に痛い現場からの声が心に残ったことは幸いだったと思います。

 

貪欲な投機的商いは、先祖の加護や自然の道理に見放され、結果的に成功には結びつかないという失敗に基づくリスクマネージメントが息づく社会ですし、どの地域にも何世紀も試行錯誤をしながら田畑を開墾し水路を整備してきた長い歴史があり、行基さんをはじめ、日本各地に「理財の敏腕を持ちながら、公共奉仕の心を持つ」たくさんの先人によって造られた国土ですからね。

 

うきは市の用水路のそばの石碑で読んだ「健全なる国家は健全なる農村の建設と農民の生活の安定にあり」を思い出しました。

 

農業はやはり実業であり、少し将来に希望が見えそうです。

 

 

*おまけ*

誰かにお膳立てされて用意されたものを読むだけの会見だろうと思い込んでいたのですが、青年期のまっすぐな気持ちが続いている自分の考えがまとめられている文章の印象でした。

犬養元首相の言葉を思い出しました。

山林自ら不朽の業あり

古今多く無し独行人

(山林は元から非常に優れていて永遠に滅びない業がある

 昔から今までに、自分の考え通りに行う孤高な人は多くない)

支援していた人が離れ批判されるようになり、人の心の移ろいやすさを嘆いたようです。

 

社会の葛藤をまとめなければいけない立場というのは孤高であり、またその立場を利用しようと近づいてくる人にも注意しなければならないことでしょう。

 

 

*おまけのおまけ*

もう少し様子を見てから公開しようと思ったのですが、なんだか元維新の方が炎上を煽ろうとするような記事を見たので、私自身が煽られないように頭の整理のために公開しておきます。

きっと、維新も元民主系もあるいは自民党の人でも、投機的な動きに水をさされるのが嫌なのかなと感じたのですが、「市場」と言ってもそれぞれが指しているものが違いそうですね。

 

 

 

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