三里浜について検索していたら「さんりはま」(三里浜砂丘地農業支援センター)があり、車窓から見えた畑にパイプラインがあったその歴史を知ることができました。
1978年(昭和53)に福井港が開港する以前から砂丘ではラッキョウが栽培されていたようです。
そして現在では「10月中旬から11月下旬になると、海岸線一面に見事ならっきょうの花が咲きます」とあります。
私が通過した9月下旬は畑がきれいに整地された茶色の風景で、何を栽培するのだろうと思っていたのですが、なんとも愛らしいラッキョウの薄紫の花を見てみたいものです。
「主に韓国・ロシア・中国・台湾などとの貿易港として発展し、年間約169万トンの荷物」を扱う福井港と、「福井港を取り囲む形で県内最大の工業地帯であるテクノポート福井」があり、1969年(昭和44)に福井臨海工業地帯マスタープランが作られたとのことです。
砂丘のそばに大型船舶用の港湾を造った鹿島港を思い出しました。砂丘を掘って水深のある港にしたのかと思ったら、神之池を埋め立ててできた鹿島港ですが、福井港はどうやって造ったのでしょう。
*三里浜砂丘地の「営農状況」*
砂丘では細々と畑を維持していたのだろうと想像したのですが、「さんりはま」を読むと、むしろ工業地帯ができる前のほうが広い畑地だったそうです。
営農状況
三里浜砂丘地には、従来しっかりとした水源がなく、浅井戸による水に依存し、主にラッキョウなどを栽培していました。一風吹くごとに砂が移動し耕作には不向きな土地でした。この地に昭和44年福井臨海工業地帯造成マスタープランが作成され、その用地として林地・耕地を含めた約800haが買収されました。その後、減少した畑の対策として、県営による土地改良事業が導入され、盛土による畑造成、農道・排水路整備などが実施され、新たな畑地が生み出されました。
現在は露地とハウスによる作付けが行われており、露地ではラッキョウ、スイカ、ダイコンが主流であり、ハウスではメロン、カブ、コマツナといった軟弱野菜が栽培されており、本県を代表する園芸産地となっている。しかし、当地区では、水源である井戸水の塩水化や水量不足により、初期生育の遅れや生育障害などが問題となっており、水の確保が課題となっています。また、近年、農産物価格の低迷や農業従事者の減少、遊休地の増加が進行しており、その対策が急務となっています。
砂丘を畑に変えるというのは、途方もなく大変なことですね。
用水の確保について、もう少し説明がありました。
農地等の整備状況
福井臨海工業地帯の造成に伴う買収により、一戸あたりの耕作面積は平均1haであったものが半減したため、県営水田転換特別対策事業を導入し、農地造成(盛土)農道、用水路、防風林(黒松の植林)を整備しました。更に翌年には水源確保のため、県営畑地総合土地改良工事により、水源(深井戸)と散水施設(スプリンクラー)を整備し、減少した畑を従来あった面積の約7割までに戻す耕地の整備を図りました。
更に、平成9年度からは、県営畑地帯総合整備事業(担い手育成型)により国営事業の官僚に合わせた既存の用水施設の再整備事業が行われています。
また、近年、用水の塩水化による農産物への被害が増加していることから国営九頭竜川下流農業水利事業により、水源を九頭龍川の鳴鹿大堰に転換し、水質の向上と用水の安定供給を図ることとしています。
(強調は引用者による)
鳴鹿(なるか)大堰からの九頭竜川の水が、左岸側は芝原用水だけでなく、直線距離でも20kmぐらいありそうなこの砂丘地帯まで運ばれていたようです。
*「国営九頭竜川下流農業水利事業」*
「水土の礎」にこの国営九頭竜川下流農業水利事業の説明がありました。
農林水産省北陸農政局では、平成11年より「国営九頭竜川下流農業水利事業」に取り組んでいます。これは新しくダムを造ったり、水路を引いたりするのではなく、「農業用水の再編」によって、水資源の合理化を図ろうという新しいタイプの事業です。いわば、越前平野の千年におよぶ水利資産の再構築。
幹線水路のパイプライン化によって生み出される余剰水を、塩害による被害を被っている九頭竜川左岸地区など3つの地区に水源転換します。またパイプライン化によって、水路への家庭ゴミ、都市排水の混入防止などが図られ、大幅な維持管理費の節減が可能となります。
4世紀末はまだ湖だった福井平野と海岸側の砂丘が、千数百年後には美しい田んぼと畑に変わっているとは、当時の人たちは夢にも思わないことでしょう。
そして2017年には、オリーブ250本が植樹されたそうです。
三里浜砂丘地の産地再生を行うため、生産者・JA・行政等で連携して農産物の生産実態に関する現状分析や生産体制の整備、販路拡大の取り組みを行う『三里浜地園芸産地進行協議会』が設立されました。ミディトマトや小カブなどの既存品目の生産・ブランド化の推進だけでなく、新たな地域ブランド品を産出するために、水はけが良い土壌を好み、防砂対策・休耕地の解消・景観の改善の効果ができ、美容・健康で注目されている『オリーブ』に着目し、地方創生推進事業の交付金を活用して試験的に250本の植樹を行いました。
(三里浜オリーブ カルメリーナ)
すごい場所を通ったのだと、これらの資料を読んで感慨深いものがありました。
そしてやはり「農は 人類生存の基をなす営み」という思いと、経済的な農業を営み、過酷な労働から農民を解放しようという努力が各地でされてきたからこその国土ですね。
地域や歴史は違っても、あちこちの田畑を散歩するたびに祖父母の田畑や水路の記憶が懐かしく重なり、農業は尊い仕事だという思いになるのでした。
「水のあれこれ」まとめはこちら。
工業地帯と田んぼの境界線のまとめはこちら。