広大なプランテーションが映し出されるCMに2~3ヶ月前に気づいたのですが、すぐに場所がわかりました。
1990年代に何度も何度も通った場所だからです。
そのプランテーションの広大な土地も国際空港の建設予定地も、現地の友人たちの少数民族が所有していた土地でした。
正確に言えば個人で所有しているのではなく、神から借りている土地です。
「以前は、私たち部族の土地だった」というところを、いくつもいくつも、友人が案内してくれました。
1960年代頃からのこの土地への移民政策のために、いつの間にか友人たちの部族の土地は島外から移り住んだ人たちのものになり、先進国向けのプランテーションがつくられていきました。
この時には「少数民族の友人」と書きましたが、正確には「モロ」の中の一部族で、Wikipedia「モロ紛争」「歴史」に書かれている時代の話です。
*「新植民地主義」の時代*
パイナップルだけでなく1960年代のバナナの輸入自由化でバナナプランテーションも拡大しました。現地の人は食べない日本人むけの品種です。
私がミンダナオ島で暮らした1990年代初頭は、日本向けのマグロのために日本の無償援助で漁港が造られたり日本向けのエビ養殖場が拡大していました。
かつては豊かな漁場だったのに根こそぎ獲る漁法が広がったり高級な魚は日本へいくようになり、漁師でも漁獲量が減り食べるものにも事欠く生活だというのに、新しく造られた漁港のそばの工場では日本のネコのための缶詰が生産され始めていました。
1990年代は日本の端境期を埋めるためのアスパラガス栽培が試み始められ、モロの人たちの土地を借りる形ですが栽培が失敗すれば借金と引き換えにその土地を失うとのことでした。また、内戦によって国内難民を生み出していた島ですから、生活の場から離れると土地はいつの間にかまたよその地域から貧困層の移住が進められてしまうと聞きました。
「神から借りたに過ぎない土地」もそして「海」も、よその国(日本)の胃袋を満たすための土地になっていくかのようでした。
*「商いの世界の家訓」が生き続けますように*
さて、冒頭のCMは商社に勤める青年が現地の人の中に溶け込んでいく様子をイメージしているようです。
伊藤忠商事のCM『商人は水であれ パイナップル畑の商人』篇は、フィリピンミンダナオ島(ジェネラル・サントス)にある「Dole(ドール)」の巨大なパイナップル畑を舞台としています。若手社員が現地で奮闘し、成長していく姿を通じて同社の柔軟な商人魂を描いています。
胸にはあの多国籍企業のロゴマークがついていましたが、2013年に世界最大の青果物メーカーである『Dole』は伊藤忠商事に買収されたようです。
近江商人と伊藤忠の歴史を少し知ることができましたから、今は多国籍企業や商社のロゴマークに強い感情を抱くことはありませんし、むしろ「商人は水であれ」も家訓から来たかもしれないと思いました。
そして、あの青年がミンダナオ島の「土地」や「開発」の歴史を深く知って、商いの家訓を大事にしてくれるといいなと思ったのでした。
まあ、フィクションのCMですけれどね。
でも、特に「近江商人は極力権力に依存して利益を得ることを潔しとはしませんでした」が思い出されますように。
*おまけ*
6月15日のニュースに「フィリピン火山地震研究所は、今回の地震で海岸が最大二メートル隆起したと明らかにしていて、生態系への影響も懸念されています」とありました。
生態系ももちろんですが、あの美しい海岸線に点在する小さな漁村がどうなっているでしょう。災害の被害も大変だけれど、それ以上にずっとずっと過酷な長い闘いの中で生きてこられた方達なので竹の節はまた強くなることでしょう。
今回の災害の混乱に乗じて、モロの人たちの土地が失われることがありませんように。
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