「哺乳瓶のあれこれ」
としてしばらく書いてきました。
哺乳瓶の必要性があるからこそ開発されてきたのに、哺乳瓶の弊害が強調されたり、乳頭混乱や過飲症候群のような医学的コンセンサスのない医学用語のようなものが広がってしまうのはなぜでしょうか?
お母さんたちが本当に必要としているのはそういう情報ではなく、できるかぎり良い方法でミルクを飲ませてあげるということはどういうことなのか、ということではないかと思います。
ミルクをどのように飲ませたらよいか。
お母さんたちが悩むところではないかと思います。
ここ2十数年ほどの間に、母乳に関しては「自律授乳」という言葉が定着しました。
自律授乳というのは、WHOの母乳育児成功のための10か条に書かれていることが基本にあるものです。
8.赤ちゃんが欲しがる時に、欲しがるままに授乳をすすめること
そしてミルクの授乳に関しては、「母乳と同じように自律授乳でよい」という考え方もあれば、「母乳と違って消化に時間がかかるから3時間はあける」「飲みすぎるので3時間はあける」などの考え方もいまだに根強くあります。
たとえば、「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル」(『周産期医学』編集委員会編、2009年、東京医学社)の「257.ミルクは一日どれくらい飲めばよいのですか?」の回答モデルを紹介します。
実際の回答モデル
人工乳でも赤ちゃんが欲しがる時にあげるのが基本です。量のはっきりした決まりや目安はありませんが、1日7〜8回授乳させるとして、2.5kgのお子さんであれば、1回60〜70ml、3kgのお子さんであれば、1回70〜80ml飲めていれば十分です。また、混合栄養の場合でも、オッパイを吸ってもらう刺激が一番大切ですから、まずオッパイから始めましょう。
人工乳の缶などに記載してある目安の量は標準体重の場合で、しかも量が少し多めのようです。乳児期に急に体重が増えると、その後のメタボリックシンドロームの危険性が高まるといわれていますので、飲ませすぎには気をつけましょう。 おなかがすいていないはずなのに、泣いた時に哺乳びんから飲ませると飲むからといって、追加することも量が多すぎることになります。ほかの原因がないかどうか、みてみてください。あやし方や抱っこの仕方だけでも落ち着くことがあります。よくわからない時は、健診の際などに聞いたり教えてもらいましょう。
人工乳でも「欲しがるときにあげてよい」が「泣いたからといってあげるとあげすぎになる」、「ほかに原因があるか」あやしたり抱っこしたりしてみる。
わからなかったら相談を。
おそらく相談しても、「よくわからないからあやして、ミルクを飲ませすぎないように」というアドバイスで、肩を落としながら家に帰るお母さん達の姿が目に浮かぶようです。
哺乳瓶でミルクを飲ませる場合の「自律授乳」とは、どのようなものなのでしょうか。
来年は、そのあたりから考えてみようと思います。