2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

新生児のあれこれ 35 <「人生最初のうんち」の意味>

「新生児にとって哺乳行動とは何か 4」で、最初に出た胎便をお母さんに見せていることを書きました。 10ヶ月ほどの長い期間、少しずつ腸の中に胎便を作ってきたこと。 羊水の中ではできるだけ胎便は出さずに、世の中に出て活発に腸蠕動が始まってから出るこ…

産後のトラブルを考える 8 <昔はどんなトラブルがあったのかー産科フィスチュラ>*2014年1月4日訂正あり

今までの記事でも、昔の女性がひどい会陰裂傷のままだった話を紹介しました。 たとえば伊吹島の「出産の医療化」の中では次のような話がありました。 過去にトリアゲバーサンに取り上げてもらった経産婦の中にはひどい会陰裂傷が縫合されず、裂けたままにな…

医療介入とは 95 <導尿とWHOの59カ条>

20世紀後半は、日本だけでなく世界中で「出産の医療化」の時代に入りました。 それまで家庭で有資格者の介助もなく分娩が行われていた国々でも、助産師(婦)という有資格者による介助になりました。 さらに産科医や助産師・看護師という専門職の介助をでき…

医療介入とは 94  <導尿(どうにょう)>

成人女性であれば、おおよそ200mlぐらい尿が膀胱内に溜まるとトイレに行きたいという感覚が出始めます。 それ以上我慢するとどうなるでしょうか。 普通なら失禁してしまいます。 ところが妊娠・出産周辺では、尿閉といって排尿できない状況がよくみられます…

世界はひろいな 2 <読めない名前>

「読めない名前」の問題は、キラキラネームが出現するよりもはるか以前から日々感じていたはず、ということを思い出したのでした。 読めない、覚えられない名前がこの世にはたくさんあります。 日本だけでなく、世界中で。 <「名前の読み方」が違う> 海外…

産後のトラブルを考える 7 <産後の尿失禁についての最近の考え方>

1990年代終わり頃から、それまで以上に切迫した必要性から骨盤底筋群の体操を産後のお母さんたちに説明する機会が増えました。 骨盤底筋群の体操の具体的な方法は、日本コンチネンス協会のこちらに書かれています。 肛門のあたりをキュッとしめるだけなので…

産後のトラブルを考える 6 <産後の排尿障害にどのように対応してきたか>

こちらの記事で、産褥期の排尿についての最近の資料を紹介しました。 今回は、私が1980年代後半に助産師になって以降、産後の排尿トラブルへの考え方はどのように変わってきたのか、あるいは変わっていなかったかについて少し見ていこうと思います。 <1980…

産後のトラブルを考える 5 <高年初産と母乳育児>

産後の排泄障害について具体的な話に進める前に、先日来紹介している「周産期医学」2013年7月号(東京医学社)の「高年出産後の産後指導:健康管理、QOL次回妊娠の視点から」(中田真木氏、三井記念病院産婦人科)の中に書かれている、高年出産の母乳育児へ…

世界はひろいな 1 <名前のあれこれ>

Yosyan先生がキラキラネームの記事を書かれていたので、そこから名前についていろいろと思いが広がりました。 そういうわけで、今日は名前についての話です。 思わずコメントしてしまったほど、実は私は人の名前を覚えるのが苦手です。 苗字はまだ大丈夫なの…

産後のトラブルを考える 4 <高年妊娠・出産の特徴と産後のQOL(生活の質)>

高年妊娠・出産とは、初産・経産に関係なく35歳以上の妊娠・出産のことです。 QOL(quality of life)について、wikipediaでは以下のように説明されています。 ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指す。つまりある人がどれだけ人間…

産後のトラブルを考える 3  <出産年齢と排尿トラブルの関係>

1980年代後半から90年代にかけて私が助産師になって最初の10年ほどは、これまでも何度か書いてきたように出産する年代のほとんどが20代でした。 特に初産は10代後半から20代で、30代初産という方は珍しく「高年初産」としてリスクが高いという認識でした。 …

産後のトラブルを考える 2 <産褥期の排尿トラブルはなぜ起こるのか>

私が助産師になって二十数年間の手元にある資料をざっと読み返しても、産後の排尿トラブルに関する記述はわずかなものです。 もちろんすでに産後の骨盤底筋群のトレーニングなども取り入れられていましたが、おそらく、退院後にまで長引く排尿トラブルはあま…

産後のトラブルを考える 1

前回の記事で私自身の年齢と筋力の変化を書いたのは、最近、産後の排泄のトラブルの続くお母さんたちからの相談が続いたので、それについて考えてみたいと思ったのでした。 無事にお産が終わって安堵し、喜びに満たされている時間というのは案外短くて、お母…

「お肌の曲がり角」よりも「筋肉の曲がり角」

25歳はお肌の曲がり角。 女性にしたらうれしくない宣告ですね。 私も20代の頃は、それまでぐんぐん女性として成長してきた矢先に、もう老いが忍び寄っていることを言われているようでいやーな気持ちにさせる一言でした。 そうだ、化粧品会社の陰謀だ!と(笑…

災害時の分娩施設での対応を考える 20 <現実的対応とデマの阻止>

前回の記事で私が教訓として得たものの3つのうち、「現実的な対応とは何か」と「デマを阻止する」は深くつながりあっていると思いますので、今回はこの2つを合わせて考えてみようと思います。 <現実的な対応とは何か考える> こちらの記事で、「災害時の…

災害時の分娩施設での対応を考える 19 <私自身の得た教訓のようなものー全体像をとらえる>

こちらの記事で、災害時にまでフリースタイル分娩や院内助産という表現が用いられていることに疑問を感じたことが発端で、災害時の分娩施設での対応を考え始めました。 東日本大震災と原子力発電所事故という、私自身は直接の被害は少なかったけれども、それ…

災害時の分娩施設での対応を考える 18 <「災害看護」とは>

看護師あるいは看護職といえば、多くの方は病院に勤務している看護職を思い浮かべるでしょうし、もし身近に介護している家族がいる方は訪問看護を知っているかもしれません。 こちらの記事で書いたように、日本に看護師養成のための教育が始まったのが1880年…

災害時の分娩施設での対応を考える 17 <原発事故への「現実的対応」>

今回の原発事故の経緯を振り返ってみて、妊娠中・授乳中の女性そして胎児・新生児・乳児という被曝の影響を最小限にする必要のある人たちを対象にして働いている周産期医療従事者として、原発事故あるいは放射線被曝を受けるような事故直後の「現実的な対応…

災害時の分娩施設での対応を考える 16 <ヨウ素剤予防投与について>

2011年3月11日の福島原子力発電所の事故直後から、放射線被曝に対するヨウ素の予防投与に関するさまざまな情報が流れました。 正直なところ、私自身も放射線被曝に対してヨウ素剤を予防投与するという漠然とした記憶がある程度だったので、どのレベルの被曝…

災害時の分娩施設での対応を考える 15 <原発事故後に出された周産期関係の見解>

少し間があきましたが、前回までの災害時の分娩施設での対応を考えるをもう少し続けます。 2011年3月11日の東日本大震災が起きるまでは、私の居住地と勤務先がある地域で「防災」といえば、実質は火災と地震への対策の二つでした。 地域によっては、水害や雪…

世界水泳バルセロナ2013  あれこれその2

水泳競技の国内放送は、日本選手権や国体あるいはオリンピックはNHK、世界水泳や日本選手権短水路(25m)あるいはワールドカップ東京大会などの国際大会はテレビ朝日と大きく分かれているようです。 競泳の会場運営も、実際に会場にいるとNHKの時とテレビ…

世界水泳バルセロナ2013  あれこれその1

世界水泳も終わってしまいました。 あ、日曜日(8月4日)が最終日だったのでだいぶ時間もたって今頃という感じですが。 「世界水泳中は更新が滞るかも」といいつつ、書き溜めていたものもあったので結局毎日ブログは更新できました。 それと録画でどんどんス…

「子どもを守るために」−ダイオキシンと放射線被ばくー

1996年のダイオキシン問題と2011年以降の放射線被ばく問題は、それぞれ「子どもを守るために」という点が前面に出された健康問題でした。 ちょうど15年の年月が経っていますが、ダイオキシンの頃と現在を比べてもいくつかの点で違いがあったように思います。…

「子どもを守るために」ーダイオキシン問題の記憶ー

福島第一原子力発電所の事後後、半年ぐらいした頃だったと思います。 勤務先のクリニックで出産したお母さんに、偶然出会いました。 その方は、「放射線のことが不安で、関西の実家に行きました」と話されました。 言葉に表される以外のボディランゲージなど…

放射線被ばくへの不安とニセ科学の議論

東日本大震災直後の混乱状態の時期に、出産を迎えた方々の不安はどれほどだったのだろうと思います。 しばらく強い余震が続く中、勤務中は余震がおきるとすぐに入院中のお母さんと赤ちゃんを訪室し気持ちをやわらげてもらえるように対応しました。 まぁ、こ…

災害とデマ

今までも大きな災害が起きると、関東大震災の朝鮮人暴動に関する流言と朝鮮人事件が頭によぎりました。 いつ、どのように、その関東大震災のデマが引き起こした悲劇について教訓として知りえたのか記憶にありませんが、いつも思い出します。 どうして人は、…

災害時の分娩施設での対応を考える 14 <医学会の情報共有システムがない>

現代医療というのは、医師が医療体系の中心にいます。 そして私たち医療従事者というのは、医療法や関連法規の中で「医師の指示のもとに」働くことが規定されています。 これは「医師が偉い」とか「看護職は貶められている」という感情の問題ではなく、「医…

災害時の分娩施設での対応を考える 13 <放射性物質の水道水混入時の情報>

2011年3月22日午前9時、東京都金町浄水場で水道水に210Bq/kgの放射性ヨウ素が検出されたことが発表されました。 大震災後の日常生活用品の流通の滞りでペットボトルやウォーターサーバーの水が手に入りにくくなった上に、水道水も安全でなくなる可能性が出て…

災害時の分娩施設での対応を考える 12 <災害時にどのように情報を得るか>

東日本大震災の翌日2011年3月12日、少しずつ運転再開している列車情報を頼りに出勤しました。 どこも節電のために薄暗く、歩く人もまばらでしかも声も音もないような駅の中は、昨日までは世界でも有数のターミナル駅だったことが信じられないものでした。 電…

災害時の分娩施設での対応を考える 11  <放射性物質の不安と対応についての記憶>

2011年3月11日の東日本大震災、そしてそれに続く翌12日の福島第一原子力発電所の水素爆発のあとは、自分自身が現実に直面しているはずなのに現実感を感じられないようなおかしな感覚がしばらく続きました。 巨大地震のあとの大きな余震による大きな被害の可…