2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

境界線のあれこれ 16 <まっすぐな国境>

アフリカの地図には独特の特徴があることを、昔地理の授業で聞いたような記憶があります。 それはまっすぐな国境があることでした。 いかにも定規で引きましたという線で、国と国が隔てられています。 そもそも、「国」という概念がなかった。 部族社会であ…

世界はひろいな 4 <カメルーンに行ってみた>

人工乳首の話の続きのはずが、いきなり全然違う話ですみません。 しばらく授乳関連の話題から離れるかもしれません。 先日、電車の中で降車駅がわからなくて困っている様子の外国の方を見かけました。まだ1歳にもなっていない小さな愛らしい女の子をベビー…

哺乳瓶のあれこれ 4 <1980年代、「ヌーク上陸」>

前回は日本で1949(昭和23)年に製造されて以降、比較的スタンダードだった形の乳首についてまで紹介しました。 今回からしばらくは、1980年から90年代以降、国内外で発売されたさまざまな形の哺乳瓶や人工乳首について、その特徴や宣伝された「効果」などを…

哺乳瓶のあれこれ 3 <人工乳首の形状の変化>

哺乳瓶そのものの形も変化してきてはいますが、何よりも人工乳首の形はさまざまなものが開発されてきました。 赤ちゃんの口や舌の動きを観察して、「舌で巻き込める」ような形と長さが試行錯誤されてきたのでしょう。 赤ちゃんの哺乳を「おっぱいを吸う」「…

哺乳瓶のあれこれ 2 <なぜ哺乳瓶が必要とされたか>

なぜ哺乳瓶が必要とされてきたのでしょうか。 こちらの記事に書いたように人は母乳だけで育てられたわけではなく、母乳以外に栄養や水分を補う必要がある場合もあります。 ミルクや哺乳瓶が当たり前のように手に入る時代になるまでは、なんとか栄養になるも…

哺乳瓶のあれこれ 1 <哺乳瓶の開発物語>(2013年11月28日追記あり)

「哺乳瓶のトリビア」では、日本でも1830年代の江戸時代末には、哺乳瓶の原型に近いものが使われていたことを紹介しました。 今回は、アメリカで現在の哺乳瓶の原型を作った人について書かれたものがありましたので紹介します。 「世紀転換期米国の乳児哺育…

境界線のあれこれ 15 <個人(Adult)と個人(Adult)>

小学生だった頃、すれ違う高校生を見るととても大人に見えました。 今、電車の中で高校生を見るとあの頃の感覚が本当に不思議です。 また自分が中学生になった時、少し大人になった気持ちがしました。 制服を着るようになったことや部活動があったこと、ある…

境界線のあれこれ 14 <大人とこども>

2人がようやく並んで歩けるほどの幅の歩道が、通勤途中に何ヶ所かあります。 このような道ですれ違うときの行動は、人それぞれですね。 ある人は少し手前の広いところで待って、私を先に行かせようとしてくれます。 ある人は、それぞれが歩きながらすれ違え…

医療介入とは 96  <「体感」と「データーによる客観化」>

年齢とともに、時間がたつのがとても早く感じます。 20代の頃は、休日というと朝寝坊というより気づいたらお昼近くまで眠っていたこともありましたが、その後に外出してもまだ時間はいくらでもあるという感じでした。 最近は朝早く4時半とか5時頃に(!…

本のご紹介「謎解き超科学」

「母乳についてのあれこれ」も1ヶ月近く書き続けていました。まだ不定期に続きますが、一旦、一休みです。 母乳育児についてはこれまで書いてきたように、1980年代から90年代ぐらいまでの「それまで言い伝えられてきた個人的な体験談」がベースの話を…

母乳のあれこれ 29 <母乳とミルクの成長曲線>

母乳はミルクにない利点があるのはわかっているのですが、あまり表立って表現されないのが「母乳よりもミルクの方が(身長が)大きく育つのではないか」というもやもやした疑問ではないかと思いますが、いかがでしょうか? このもやもや感は大きく分けて二つ…

母乳のあれこれ 28 <「不必要なミルク」とは>

母乳推進の動きの中で時々目にするのが、「不必要なミルクを与えないように」という一言です。 不必要な・・・というのはどういうことなのでしょうか? おそらく飢餓や脱水に陥るほどの危険性は、今の日本ではよほど何か事情(災害時や親側の育児の認識など…

境界線のあれこれ 13 <sophisticated・・・「洗練」と「こだわり」>

20代の初めに犬養道子氏の本に出会って、大きな影響を受けてきたことは今までのいつくかの記事に書きました。 同じ頃、もうひとり好きだったエッセイストがいます。 伊丹十三氏です。 書店で本棚を眺めるのが好きだったので、いつも棚を端から端まで見てまわ…

母乳のあれこれ 27 <母乳とフードファディズム>

「ヴェジタリアンをやめた訳」の中で、一時期、肉やエビを食べないようにしていたことを書きました。 その時は「背後カロリー」や途上国の環境破壊や経済格差がきっかけでしたが、もう少し私の人生を遡ると「肉やエビをあまり食べないこだわり」がありました…

母乳のあれこれ 26  <母乳と「和食」>

「母乳のためには和食が良い」という話は、1990年代以降の母乳育児関連の本でしばしば目にするようになったことをこちらの記事で書きました。 「和食」っていったいどのような食事でしょうか? そして具体的にその「和食」を摂った場合とそうでない場合の違…

母乳のあれこれ 25 <母乳と「安全な食べ物」>

「臨床助産婦必携 生命と文化をふまえた支援」(医学書院、1999年)の産褥期の栄養について、以下のように書かれていることを前々回の記事で紹介しました。 またレトルト食品などをとらないよう、授乳中は自然食品を多くとるように心がけさせる。 「安全な食…

母乳のあれこれ 24 <母乳とアレルギー>

前回の記事で、「臨床助産婦必携 生命と文化をふまえた支援」(医学書院、1999年)の中で、以下のように書かれている箇所があることを紹介しました。 とくにアレルギー体質の人は子どもにアレルギー素因をおこさせないために、牛乳・卵は加熱して摂取するよ…

母乳のあれこれ 23 <母乳と食事への不安>

出産直後にはほとんどにじむぐらいしか出ていなかった母乳が産後2〜3日もすると急に出始めると、お母さん達は本当に驚かれ、そして「自分の体から出ているもので赤ちゃんが育つことが信じられない」とおっしゃいます。 その気持ちは喜びであったり、不安で…

母乳のあれこれ 22 <血糖値の変化はどのように関係するのか>

乳腺炎予防のために、あるいは「よいおっぱい」のために甘いものや脂っこいもの、特に動物性食品を控えるようにというアドバイスが1980年代から育児関係の書籍で広がったのではないかということを書いてきました。 ただ、その中でそれらの食物摂取と血糖…

FINA競泳ワールドカップ2013

9日と10日の2日間、辰巳国際プールでFINA競泳ワールドカップ2013 アジアシリーズ東京大会が開催されました。 長水路(50m)ではなく短水路(25m)の大会で、数年ぐらい前から日本でこの時期にこの国際大会が開催されるようになりました。 10年ほど前に競…

母乳のあれこれ 21 <「後乳」は乳質の仮説のひとつ>

前回に引き続き、「母乳育児支援スタンダード」(日本ラクテーション・コンサルタント協会、医学書院、2008年)の「文献にみる『乳質』考察」から、「後乳」について考えてみようと思います。 この中で、1988年にWoolridge氏(参考文献からおそらくアメリカ…

母乳のあれこれ 20 <「乳質」についての変遷>

「母乳育児支援スタンダード」(日本ラクテーション・コンサルタント協会、医学書院、2008年)の中に、世界のあちこちでの「乳質」の考え方が紹介されています。 おおきく2つに分けて考えられるようです。 たとえば、フィリピンで「パパイヤの葉と茎で母親…

母乳のあれこれ 19 <ドロドロの母乳と後乳・・・どのように検証したのか>

「飲み初め、飲み終わりとでは成分と味がちがう」ということが母乳のすばらしさのひとつのような表現を目にすることが多くなったこと、そして特に「飲み終わり」の頃の母乳は脂肪分や脂溶性ビタミンが多く含まれる「後乳」と呼ばれていることを前回書きまし…

母乳のあれこれ 18 <「後乳」とは何か>

前回、食事と母乳中の脂肪分の関係について引用した「母乳育児支援スタンダード」(日本ラクテーション・コンサルタント、医学書院、2008年)には、「脂肪の組成の変化」の中で以下のように書かれています。 分泌し始めの母乳(前乳)に比べ、後半の母乳(後…

母乳のあれこれ 17 <乳腺炎に食事が関連しているのか>

前回の記事で「乳栓」について書きましたが、このような乳栓ができたり、あるいは明らかな乳栓はわからなくても硬くしこった乳腺からは濃縮したような母乳が出ることがあります。 母乳は産後1週間ぐらいで粘稠(ねんちゅう)性の高い初乳からさらっとした成…

母乳のあれこれ 16 <「乳腺の詰まり」とは何か>

乳腺炎というと、「乳腺が詰まった」という表現が使われることが多いと思います。 「乳腺が詰まる」 これはどういう状態を指しているのか、案外まだきちんと整理されていはいないのでしょうか? <「乳栓」とは何か> 乳腺を詰まらせる原因として実際に「乳…

母乳のあれこれ 15 <みつめのぼたもち「こわい」>

経産婦さんは産後2日目ぐらいから、初産婦さんでは産後3日目ぐらいから急激におっぱいが張り始めます。 経産婦さんの場合は、乳房うっ積というよりもすでに乳汁分泌量が増加したことによる乳汁うっ滞の状態が多いことは、こちらの記事で書きました。 見た…

境界線のあれこれ 12 <産褥乳腺炎>

これまで母乳と食事について1980年代ごろからの変遷を書いてきました。 なぜ、「乳質」とか「サラサラのおっぱい」などを求める助産師がいたかといえば、もしかしたら乳腺炎の対応に本当に苦慮してきたからではないかという気もするのです。 部分的に硬結が…

母乳のあれこれ 14 <乳腺炎予防のための「母乳によい食事」・・・1990年代以降>

1990年代に入ると世界中の母乳推進運動の影響を日本も受けて、産科病棟も母子同室・自律授乳へと大きくシフトしていきました。 そのような流れの中で、日本母乳の会が設立されました。 日本母乳の会は、「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」の認定機関でもあり…