保険については健康保険だけでなく生命保険や火災保険など誰もが関係があると思いますが、馴染みのないものが補償制度かもしれません。
補償制度で検索すると、労災補償制度をはじめ公害健康被害補償制度、交通事故の免責補償制度、美術品補償制度などたくさんあります。
保険と補償の違いは何かと検索してみたのですが、よくわかりませんでした。
水害や竜巻などで農作物が一晩でダメになってしまう状況をニュースで見るたびに心が痛むのですが、この場合には農業災害補償制度があるようです。
国の農業被害対策として実施している公的な保険制度です。農業者の方が出し合った共済掛け金を原資として、自然災害により被害に遭われた農業者の方に、被害程度に応じた共済金が支払われます。
長年、共済掛け金を出資しながらも、一生こうした補償を受ける事がなく無事に過ごされる方々がおそらく大半なのではないかと思うのですが、その確率はどれくらいなのでしょう。
「万が一」に備えて、というあたりかもしれません。
<医療の中の補償制度>
医療の中にもさまざまな救済制度がありますが、実際にはほとんどその救済制度を使う状況には遭遇しない医療従事者が大半なのかもしれません。
医療関係の補償制度には詳しくないのですが、やはり予防接種健康被害救済制度は日頃意識している制度です。
予防接種の副反応による健康被害はきわめてまれですが、不可避に生ずるものですので、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種と健康被害との因果関係が認定された方を迅速に救済するものです。
この救済制度は、1948(昭和23)年の予防接種法によるものですので、日本の医療はかなり早い時期からこうした救済制度を取り入れていたようです。
この半世紀で医薬品や医療機器はものすごい勢いで開発されていきました。そのおかげで多くの方が健康を取り戻したり長く生きる事ができるようになった反面、副作用による健康被害が起こりえます。
それに対して2002(平成14)年にできた医薬品副作用被害救済制度があります。
医薬品は何度も動物実験や治験が繰り返され、十分安全性が確認されたうえで処方が認可されているものの、薬効の強弱や副作用の有無、種類などは人それぞれ異なる。
医薬品には必ず詳細な添付書がついていますが、0.何パーセント以下のような確率で起こる副作用まで書かれています。
それでも添付書に書かれていなかったことが稀に起こります。
私が勤務した病院でもある薬剤の添付書には書かれていなかった副作用が起こり、患者さんの大事には至りませんでしたが、翌年からは添付書に副作用として追加されたことがありました。
この医薬品副作用救済制度を担当している独立行政法人医薬品医療機器総合機構のHPを見ると、1979(昭和54)年にはこの救済制度の前身が作られたようです。
<救済だけではなく再発防止の視点>
これらの医療救済制度の原資はどこからくるのかそしてどれくらいの額なのか、経済に疎いのでよくわかりませんでした。
「小金」とは言えないとは思いますが、どこからかこの医療の予期せぬ被害(医療の不確実性)に対応するためのお金が集められて救済制度がつくられてきたことは、前回の記事の保険と同じように、そこには資金があり信頼関係があるといえるのではないかと思います。
そして医療の救済制度の場合「被害者の迅速な救済」がもちろん第一ですが、もうひとつ再発防止のためのシステムが同時に機能しているということを、リンク先を読んであらためて認識しました。
たとえば予防接種の救済制度では以下のように書かれています。
あるいは医薬品救済制度には以下のように書かれています。
その医薬品による予期していなかった副作用や薬害の調査を行い、その症例を積み重ねることによってより安全な医薬品となっていく。
もちろん、被害に遭遇された方には納得できることではないと思います。
それでも、日本の医療には「予期しない」ことにも救済制度が整えられてきた歴史があることをあらかじめ知っておくだけでも、医療への信頼感は変わるのではないかと思います。
そして普段は目立たないけれども、「予期しない」「万が一」の状況にも社会全体で支える仕組みで私たちの生活は守られているのですね。
「小金がまわる」まとめはこちら。